連載
#39 ○○の世論
アベノマスクは役に立った? 世論調査で「8割」が下したジャッジ
配る前は3人に1人が「評価」だったのに……結果が一変した理由
「アベノマスク届いたよ!」「うちはまだ」。政府が全世帯に配った布マスクをめぐり、こんなやりとりをした人も多いのではないでしょうか。お店に長蛇の列ができていた4月に、この政策は決定され、6月にようやく配布完了が発表されました。布マスクに期待していた人、結局役に立たなかった人、どのくらいいるのか、世論調査でのぞいてみます。(朝日新聞記者・植木映子)
新型コロナウイルスの感染拡大によるマスク不足は深刻でした。3月14、15日に行った朝日新聞社の世論調査では、マスク不足に対する政府の取り組みは「十分だ」21%、「十分ではない」67%。不満が募っていたことがうかがえます。
4月1日、それは突然の発表でした。布製のマスクを全世帯のポストに2枚ずつ――。マスク需要に対応するために、布マスク配布は「極めて有効だ」と安倍晋三首相は胸を張りました。
事前の検討プロセスがきちんと知らされない中での発表に、自民党の中堅議員からは「アピールでしかない」という声も。また、郵送費も含め計466億円の予算が計上されており、「業者の選定が不透明だ」という指摘もありました。
マスクを待ち望む人からは、「一世帯に2枚では足りない」「今すぐほしいのに届かない」という意見が相次ぎました。
そしていつしか、布マスクは「アベノマスク」と呼ばれるようになります。
この布マスクを世の中全体としては、どう受け止めていたのか。
布マスクを配り始めた段階の4月18、19日に、朝日新聞社の世論調査で、布マスク配布の評価について尋ねました。あわせて、政府の新型コロナ対応を「評価する」と答えた全体の33%の人たち(以下「政府対応評価層」)が、どう評価するかも見てみます。
全体で「評価しない」が63%なので、不評の方が目立ちますが、3人に1人は「評価」していたとも言えます。また、政府の新型コロナ対応を評価する人たちに絞ってみると、半分以上が評価しています。
まだまだマスクが手に入りにくかった4月、「とにかく早くマスクを」と期待する人も、一定数いたのでしょう。
その後、手作りマスクが広がり、閣僚や知事の会見でも個性的なマスクが話題になりました。
不足していた不織布のマスクは、新型コロナ流行以前の価格よりは高いものの、5月の大型連休以降は徐々に都内の店頭でも見かけるようになります。様々なメーカーからのマスク作り参入も相次ぎました。
6月中旬には布マスクの配布が「完了した」と、菅義偉官房長官が発表しました。
発表から2カ月以上かけて、全世帯に行きわたった布マスクは役に立ったのでしょうか。6月20、21日に行った朝日新聞社の世論調査の結果を見てみましょう。
8割以上が「役に立たなかった」と答えました。政府の新型コロナ対応を評価すると答えた全体の38%の人の中で見ても、7割近くが「役に立たなかった」。
4月の調査で布マスク配布を「評価する」と答えた人は32%いたのに、マスクが届いた6月の段階では、「役に立った」と答えた人は15%にとどまりました。
質問が異なるので、単純に比較はできませんが、布マスク配布に時間がかかったことも、結局役に立たなかったなあ、という感想が増えた一つの要因かも知れません。
菅官房長官は、「様々な批判は承知している」「次の流行に備えて保有して」としています。
筆者自身は、なけなしの不織布のマスクと、実家の母に作ってもらった「ハハノマスク」を併用しながら日々をしのいでおり、「アベノマスク」は封を開けずに保管しています。これが役に立つ日がこないことを祈るばかりです。
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