連載
#12 #カミサマに満ちたセカイ
「大仏建立アプリ」コロナウイルス後にユーザー激増、作者も驚く反響
「大仏信仰」令和の時代によみがえる?
コロナウイルスの流行が心配される昨今、とあるウェブアプリが、ツイッター上でひそかに人気を集めています。その名も「みんなで大仏建立ボタン」。選択肢のボタンをタップし、カウンターを回すだけのシンプルなデザインながら、「大仏」という存在が、不安な人々の心に刺さっているようです。古くて新しい試みの発案者に、話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
アプリの使い方は、至って簡単。「金を提供する」「たたらを踏む」など、大仏造りに関わる、26個のボタンをタップするだけ。無料で利用でき、複数のボタンを選ぶことも可能です。
一度押すと、ボタン右側にあるカウンターの数字が増えます。各項目の合計タップ数が、奈良の大仏の労働力と同じ260万に達すると、仏像が「完成」。イラストが表示される仕組みです。
サイトには、ユーザーが自由につぶやけるコーナー「休憩所」も。「土盛っといた」「取りあえず眺めとく」など、往年のチャットルームのような、ゆるいやり取りが続きます。
コロナウイルスの感染が広がりを見せた2月以降は、アプリに関するツイートが相次ぎました。「思わずポチった」「疫病退散!」。今もそんな書き込みが途切れません。
なぜ、このようなアプリが生まれたのか? 4月から大学生になるという、開発者のナモすけさん(@dnm_b)に聞いてみました。
きっかけとなったのは、2018年に相次いだ自然災害です。9月、台風19号による浸水被害などが全国的に深刻化し、北海道では最大震度7を記録する地震が発生。ツイッターのタイムラインには、悲痛な声があふれました。
「そんな中、『大仏建立をすべきだ』というツイートを見かけたんです。確かに、大仏なら災いを鎮めてくれるかもしれない。そこで、大仏を題材にしたアプリを作ろうと思いました」
ナモすけさんは北海道で地震が起きた9月6日、早速アプリを完成させます。意識したのは「不安な気持ちを和らげる」ことです。
たとえば、一つのことに熱中できるよう、ボタンは連打可能な設定に。他のユーザーが同時に遊んでいると、別のボタンのタップ数が増えていく機能もあり、「仲間」の気配を感じられる仕様になっています。
ボタンの文言を考える上では、奈良の大仏が位置する、東大寺(奈良市)のウェブサイトなどを参照。大仏を造る手順を、わかりやすい表現に落とし込みました。
一方で、「一握りの土で応援する」など、クスリと笑える選択肢も。「自分のようにひねくれた人もいるかな、と思ったんです(笑)」
自宅で大仏を建てる方法があるって本当ですか!?
— ナモすけ (@dnm_b) February 25, 2020
みんなで大仏建立ボタンhttps://t.co/sFv3f6so3O pic.twitter.com/qbO5qxAyMe
サービス開始から約1年半が経った3月5日時点で、大仏は2体できあがっています。
1体目の「ひときゅう」は、北海道の地震発生当日に「着工」。形になるまでに掛かったのは、1年2ヶ月ほどです。対して、3月2日に完成した2体目「ふたまる」の「工期」は、わずか4カ月でした。
「正直、こんなに速いスピードで完成へ向かうとは思っていませんでした。1人で何万人分も押していく『ガチ勢』もいらっしゃるようです。それだけ楽しんで下さる方が増えたのは、うれしく感じます」
今後、どのようにアプリで遊んで欲しいですか--。ナモすけさんに尋ねてみると、こう答えてくれました。
「一緒に作業する人は多いほど楽しい。ぜひ他の方にも、協力を仰いで頂けたら」
「260万人という目標は簡単なものではありませんが、実際に奈良の大仏が造られる際に参加した人数です。本物の大仏の大きさや、建造する上での大変さも感じて頂きたいですね」
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