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2本脚の犬「すみれ」逝く 事故で切断から3年半、看取った女性の思い
事故で脚2本を切断した犬・すみれ。ボランティアの女性のもとで3年半を過ごし、今月2日に息を引き取りました。
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事故で脚2本を切断した犬・すみれ。ボランティアの女性のもとで3年半を過ごし、今月2日に息を引き取りました。
事故で脚2本を切断した犬・すみれ。ボランティアの女性のもとで3年半を過ごし、今月2日に息を引き取りました。何度も飼い主に裏切られながら、最後は人を信じる気持ちを取り戻したすみれの生涯について取材しました。
すみれが最初に保護されたのは2015年12月。群馬県高崎市の河川敷で動物愛護センター職員が見つけました。
首輪や迷子札は着けていませんでしたが、人に従順で、誰かに飼われていたような様子だったそうです。
翌年2月、センターの譲渡会を経て新たな飼い主のもとへ。
ところが4月9日、群馬県前橋市内の線路内で大ケガをしているところを警察官に保護されました。
左前脚と左後脚の一部が失われた状態で、電車にひかれたとみられます。
飼い主はすみれがいなくなったことを警察署に届け出ていましたが、身元の特定には至らず。
また、保護した警察署が動物保護を担当する前橋市に連絡したものの、土曜日だったため保健所へ話が伝わらず、治療を受けることができませんでした。
その後、飼い主のもとに戻りましたが、手術を受けさせることができない事情があるとのことで、譲渡会で引き渡しに立ち会っていたNPO法人「群馬わんにゃんネットワーク」で引き取ることに。
14日に3時間近くの手術を受け、脚2本と尻尾のほとんどを切断。
獣医師からは「安楽死させるか、それとも脚を切断して介護生活を送るか」と言われて、手術に臨んでいました。
術後は自力で排泄もできるようになり、1カ月半後には特注の車いすで散歩できるまでになりました。
新しい飼い主を探しながら、その間は「預かりボランティア」の星野ちづるさんのもとで暮らすことに。結果的に息を引き取るまでの3年半、星野さんと暮らしました。
「すみれを迎え入れたいという申し出はいくつもありました。でも、定期的にリハビリに通ったり、慣れない場所だと興奮したりといったこともあって、お断りしたんです」と星野さん。
食欲も旺盛で、朝夕の散歩の決まったルートでは、すみれにおやつをあげるために待ってくれている家もあり、人間との信頼関係も徐々に取り戻していきました。
「最初のうちは頭の上から手を出すと怖がっていました。むかし虐待されていたときの影響だと思います。でも、いろんな人と関わっていくうちに『ここは大丈夫なんだ』とわかってくれたのか、次第にほぐれていきました」
そんなすみれの容体が急変したのが先月11日。雷が鳴って星野さんの家が停電した日です。
花火や雷が苦手だったすみれが、雷鳴を聞いて下の方に隠れていたときに電気が消え、復旧までに1時間半ほどかかりました。
「電気がついた後に見たら、これまで見たことのない顔をしていました。そして翌日からごはんも、大好きだったおやつも食べなくなったんです」
動物病院に何度も通い、膵炎や甲状腺の病気を疑って治療したものの改善せず。
29日の病院帰りの車内で、変な泣き声をあげて呼吸が荒くなり、入院することになりました。
10月1日に星野さん宅に戻ったすみれ。翌2日、これまですみれに関わってきた群馬わんにゃんネットワークのメンバーたちに見守られながら旅立ちました。
「原因がわからないまま、あっという間に逝ってしまいました。何か兆候があったんじゃないか、どうしてわかってあげられなかったのか、という思いが消えません」と星野さん。
一緒に過ごした3年半で、すみれは多くの思い出を残してくれたといいます。
「2本脚であんなに元気に走り回ったり、テレビ撮影の前にハアハア言いながら緊張していたのが、カメラが回ったとたんにビシッとなったり。幼い頃から犬と一緒に暮らしてきた私ですが、びっくりすることばかりでした」
多くの人と関わる中ですみれの表情も変わり、関わった人も変わっていくのを実感したそうです。
「きっと今ごろ空の上で、痛いところもなく苦しむこともなく、走り回っていると思います。次は最後まで大事にしてくれる家族とめぐり合ってほしい。そして、それが私だったら、もっとうれしい。いつか会いたいです」
◇ ◇ ◇
群馬わんにゃんネットワークのメンバーが中心となって、すみれのことを本にまとめています。タイトルは「二本あしのワンコ すみれちゃん、生きる」(セブン&アイ出版)。
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