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スパイダーマン「2」が開いた「等身大路線」 続編のジンクス超える
大ヒット映画の宿命が「2」の試練です。1作目の人気を受けて作った続編は、ファンの期待に応えるハードルの高い戦いになります。数ある「2」の中でも「スパイダーマン2」は、日本におけるアメコミ映画の潮目を変えた作品だと言えます。その後の「身近なヒーロー」路線を切り開いた作品を、映画コラム「アトリエむむむ」が振り返ります。
続編映画に求められるのは前作以上のロマンス、前作以上のスペクタクル、前作以上の興行収入…とハードルがガンガン上がっていきます。
そんな中、たくさんの『2』が製作されては消え、時にヒットを飛ばし、時に伝説になっていきます。
日本で興行収入75億円を上げたマーベルの『スパイダーマン』(2002)が公開されるまで、ヒットしたアメコミ映画は少なく、また「日本でアメコミはヒットしない」と言われていたほどでした。
ではなぜ『スパイダーマン』は大ヒットしたのか。
一つの大きな要因は、「観客との距離感が近い主人公」という設定です。
いじめられっ子の主人公ピーター・パーカーが、勉強や恋に悩みながら、学校が終わったらスーパーヒーローとなって悪いやつを倒しに街へ繰り出す。
さながらスーパーヒーロー部!子供の頃にみんなが妄想するやつですよこれ。
いきなり世界を守るわけではなく、膨大な資産があるわけでもなく、日常と非日常のちょうど良いバランスにいるヒーロー像が、女性ファンだけでなく世の妄想男子たち(おじさんも含めて)の自意識をくすぐりまくったのでしょう。
それまでのアメコミ映画では、2000年からはじまる『X-MEN』シリーズがあったとはいえ、DCコミックス作品『スーパーマン』『バットマン』に比べると、そのヒーロー像がぐっと身近になったことも大ヒットの要因につながったはずです。
そして「エースの4番からベンチ外」の危機。
そんな『スパイダーマン』のヒットを受け製作されたのが『スパイダーマン2』(2004)。
ピーターの恋愛の行方や、VFXでも評価された躍動的で迫力のあるアクションシーン(電車の戦いは一見の価値あり)で、またもや大ヒットします。ちなみに『1』はアカデミー賞視覚効果賞ノミネート、『2』は見事、受賞を果たしています。
この映画ではピーターに最大の試練が訪れます。
相変わらず放課後に部活動(スーパーヒーロー)にいそしんでいるピーターですが、様々な悩みが重なり、ある日手からクモの糸が出なくなってしまいます。
突然戦力外通告を受けたスパイディの絶望たるや!
上げておいてとことん落とす。これぞ物語の鉄則。(そういえばジブリの『魔女の宅急便』もキキが空を飛べなくなってしまう場面が出てきましたね)。
スパイダーマンはどうやって再びエースの4番に返り咲くのか……。
そこに、一人の若者としての悩み、一概に悪とはいいきれない敵、そしてスーパーヒーローという大役への葛藤……。
神様はつらい……もとい「スーパーヒーローはつらい!」
この「スーパーヒーローの苦悩」は、アメコミ映画の真骨頂とも言える要素です。
例えば『アイアンマン』の主人公トニー・スタークは、ひょうひょうとしてお気楽なキャラクターですが、重要なシーンで彼を突き動かすのは「彼の苦悩=武器商人としての罪悪感」です。
アイアンマンも人の子!女の子をとっかえひっかえして遊んでいるだけじゃなかった!
これらの日本人にもおなじみとなったヒーローを多く輩出したマーベル作品は、アメリカのみならず世界中でヒットする結果になりました。現代的スーパーヒーロー像を模索した作品としても、『スパイダーマン2』はとても偉大な映画なのです。
そんなスパイダーマンシリーズですが、7月にはリブートの『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も公開予定です。ちなみに現在は、アメコミ原作のアニメである『スパイダーマン:スパイダーバース』が公開中です。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』はアベンジャーズに本格参戦した『スパーダーマン・ホームカミング』の続編です。予告編の「夏休みを支配される……」というセリフから、少年らしい日常がうかがえます。
今回は彼のどんな成長が見られるのか……今から楽しみです!
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