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「金曜ロードショー」の未来 「カメ止め」で「バルス」は起きるか?

オープニングのタイトルは『バケモノの子』などで知られる細田守監督が手がけている=日本テレビ提供
オープニングのタイトルは『バケモノの子』などで知られる細田守監督が手がけている=日本テレビ提供

目次

映画は今や最新作でも、パソコンやタブレット、スマホで時間も場所も選ばず見ることができます。それでも、テレビではゴールデンタイムに映画を放送しています。中でも「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ)は、前身の「金曜ロードショー」からこれまで1500本以上の作品を放送してきました。「正直、視聴率は年々厳しくなっている」。それでも、テレビで映画を放送する意義はあると言います。その理由とは?

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1985年から続く枠

番組は「金曜ロードショー」から「金曜ロードSHOW!」に名前が変わり、今では映画以外も放送していますが、それでもメインは名作を含めた映画です。

映画の第一号は1985年10月の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」。そして「金曜ロード」で有名なのは「バルス現象」です。

2010年代にSNSの浸透とともに生まれました。「天空の城ラピュタ」の放送時、ツイッターで一斉に決めゼリフをつぶやく楽しみ方は、テレビで映画を見る新たな面白さを発掘しました。

「テレビは出会いの場」

とはいえ、民放各社で映画の枠は減っています。

「金曜ロード」を担当する日本テレビの北條伸樹さんは「ネットの動画が浸透し、特に若い人の間で長い時間、じっと見てもらうことが難しくなった」と言います。

そんな状況に対して「SNSで短い秒数の告知動画を流すなど、テレビで映画を見たことがない人向けの工夫はしてきました」と言う北條さん。

「映画館は見たい人が出かける場所だとするなら、テレビは出会いの場。見はじめたら意外と面白い、そんなきっかけを提供したいです」と語ります。

「金曜ロードSHOW!」を担当する日本テレビの北條伸樹さん
「金曜ロードSHOW!」を担当する日本テレビの北條伸樹さん

初放送作品ではSNSを控える理由

Netflix(ネットフリックス)やHulu、アマゾンプライムなど、ストリーミングの動画サービスが人気です。

その一方で、「バルス現象」のような楽しみ方ができるのは、テレビの映画ならではです。北條さんはその魅力について「リアルタイムで一緒に見る楽しみが現れている」と見ています。

「金曜ロード」にとってジブリ作品は定番のコンテンツです。10回以上、放送するものも少なくありません。

最近では、見ていないとわからないクイズをデータ放送で用意するなど、参加感を大事にした取り組みをしているそうです。

一方、初めて放送する作品は、SNSを使った取り組みは控えています。

その理由について北條さんは「やっぱり、映画そのものを楽しんでほしい。作品の力で見てもらうことを大事にしています」と説明します。

便利さだけを考えればストリーミングサービスの手軽さにはかないません。

それでも、地上波で放送する意義について北條さんは「気軽さ」を挙げます。

「お金を払わず映画を楽しめるのが魅力。家にいることが多い主婦の方や若い人を意識した作品を選んでいます」

アニメ「天空の城ラピュタ」の放映にあわせたネット実況中継では、出演者らもセリフに合わせて「バルス」と叫んだ。ネットでは「バルス」一色に=2013年8月2日、東京都中央区のドワンゴ本社
アニメ「天空の城ラピュタ」の放映にあわせたネット実況中継では、出演者らもセリフに合わせて「バルス」と叫んだ。ネットでは「バルス」一色に=2013年8月2日、東京都中央区のドワンゴ本社 出典: 朝日新聞

コミュニケーションツールとしての価値

今後、テレビの映画枠はどうなっていくのでしょう?

北條さんは「同じ時間帯に同じ体験ができる一体感」の価値はなくならないと考えています。

「放送後、学校などで話題になる。そんなコミュニケーションツールとして地上波の映画は有効だと思います」

その表れが「バルス現象」です。

「テレビをさかなに盛り上がり、ネットニュースにもなる。そんな共存関係がうまく作れたらいいですね」

「カメ止め」で「バルス現象」は?

3月8日、製作費300万円から大ヒットになった「カメラを止めるな!」が「金曜ロードSHOW!」で放送されます。

ツイッターでの盛り上がりが特徴的だった「カメ止め」ですが、新たな「バルス現象」は起きるのでしょうか?

北條さんは「結果的にそうなればいいですが……」と慎重に見ています。

「こっち主導でやろうとすると、冷めてしまうので」

実は過去に「天空の城ラピュタ」で、テレビ局側が「バルス現象」を盛り上げようとしたことがありました。

事前にプレスリリースも出し、数分前から「バルス」を予告するツイートを公式アカウントから発信したところ「思ったほどの効果が得られなかった」そうです。

今回も、番組告知やキャストによる解説企画などは準備するものの、ツイッターでの取り組みは、あえて静かに見守る方針です。

ユーザー主体が効果的なことはツイッター社の調査でも明らかになっています。

ツイッター社のシニア・リサーチマネージャーの佐藤建一郎さんは「ネタばれ厳禁」が比較的守られた「カメ止め」の事例から「ルールとして運営主体から呼びかけてしまうと、どうしても『上から目線』に見えてしまいます」と指摘。「ツイッターでのつながりは小規模なコミュニティや居場所に近いもので、
マナー的なものであれば、そこの雰囲気に委ねてもいいように思います」と説明します。



「ちゃんとしたものを続けていく」

2018年4月、日本アニメ界の巨匠、高畑勲監督が亡くなりました。

「金曜ロード」では、放送予定だった「名探偵コナン」の劇場版を、高畑監督の代表作「火垂るの墓」に変更しました。

高畑監督の悲報が公になってからわずか半日のスピード決断でした。

その理由について北條さんは「お世話になった証しとして代表作を選ばせてもらいました」と振り返ります。

いつもなら、8月に放送する作品ということもあり視聴率は抑えめのものでしたが「それでも意味はあった」と北條さん。

「ちゃんとしたものを続けていくことが大事だと考えています。それが、時間をかけて番組への期待感につながるはずなので」

「火垂るの墓」への変更について「お世話になった証しとして代表作を選ばせてもらいました」と語る北條さん
「火垂るの墓」への変更について「お世話になった証しとして代表作を選ばせてもらいました」と語る北條さん

「見なければならない」魅力

モノからコトに消費が移っていると言われる時代。同じ時間に「見なければならない」という制約は、逆にテレビの映画枠の魅力にもなりえます。

クイーンを描いた「ボヘミアン・ラプソディ」は、立ったり拍手をしたりしながら観覧できる応援上演が人気です。様々な要素を組み合わせて、楽しみ方を広げる可能性は、テレビの映画枠にも、まだまだ、たくさんありそうです。

ツイッター上で「カメ止め」はどこまで盛り上がれるか。その結果から、テレビの映画枠の可能性が見えてくるかもしれません。

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