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IT・科学

「カメ止め」ツイッターから見えた「したたかさ」 公開前の仕込み

ゾンビに襲われる場面を振り返る上田慎一郎監督(左)と監督役の濱津隆之さん=水戸市渡里町
ゾンビに襲われる場面を振り返る上田慎一郎監督(左)と監督役の濱津隆之さん=水戸市渡里町 出典: 朝日新聞

目次

昨年、話題になった「カメラを止めるな!」は、制作費300万円にも関わらず、興行収入30億円を突破したことが話題になりました。ところがツイッターでの動きを見てみると、公開前からの準備が実を結んだ「したたかさ」も見えてきます。ツイッター社の調査から見えた「もう一つのカメ止め」を振り返ります。

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ついに地上波初登場

手作り感ある作品が大ヒットとなり、ついに日本テレビの「金曜ロードSHOW!」(3月8日放送予定)にも登場。

「カメ止め」は、そんなシンデレラストーリーとともに語られます。

ヒットのうねりはツイッターのツイート数からも見えてきます。

最新作の場合、公開前からタイトル名をハッシュタグにしてツイートされるのが一般的ですが、「#カメ止め」は6月から12月まで約90万ツイートされています。結果、2018年のツイッター「トレンド大賞」では19位に「カメラを止めるな!」がランクインしました。これは「金足農業」より多いツイート数です。

ツイッター社によると、過去のヒット作品の傾向から「ツイート量」が多ければ「鑑賞意欲」が高まることが多いそうです。

映画公開後、ツイッターの「検索」機能などを通じて好意的なツイートに触れることは影響力が大きいと言います。



盛り上がりに「三つの時期」

ツイッター社が「カメ止め」の盛り上がりについて調べたところ、(1)潜伏期、(2)感染期、(3)ポンデミック期の三つに分けられることがわかりました。ちなみにポンデミックは大流行(パンデミック)の「カメ止め」用語です。

(1)潜伏期は、一般公開1カ月前から始まります。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で話題になり、コアな映画ファンによる投稿が確認されます。

(2)感染期は、2018年6月の一般公開から1カ月にあたります。映画を見た一般の人に加え、タレントの感想も増えます。宇多丸さんがラジオでおすすめするなど、「見にいくべき作品」というムードが生まれてきます。

(3)ポンデミック期は、7月に日テレの情報番組に取り上げられ一気に広まります。上映館も増え「カメ止め現象」が決定的になります。

ツイッター社が分析した「三つの時期」=ツイッター社提供
ツイッター社が分析した「三つの時期」=ツイッター社提供

「潜伏期」にツイートされたもの

注目したいのは「(1)潜伏期」のツイートです。

一部のコアな映画ファンだけでなく、実は、監督や出演者が「カウントダウンツイート」をしています。

60日前から、ゾンビメイクをした真魚さんの映画では見せないシリアスな表情を投稿。公開まで5日のタイミングではが生ハムで作った「5」を秋山ゆずきさんが笑顔で紹介するなど、シュールなツイートを仕込んでいました。

もともと自主映画に近い形で始まった映画製作だけに、ツイートの中身は、かなり「内輪ネタ」です。おそらく、投稿時は関係者じゃないと反応しにくいものもあったかもしれません。

これら「(1)潜伏期」のツイートが、「(2)感染期」「(3)ポンデミック期」に再び注目され、ツイッター上の盛り上がりの「燃料」となりました。

ヒットした後には、キャスト陣をオーディションで選抜したことや、、ほとんどのシーンを8日間で撮影するなど、物語性が注目されました。それらマニアックな背景が、「(1)潜伏期」の「カウントダウンツイート」と結びついたのです。



SNSからテレビ、またSNSへ

テレビで取り上げられた後にも、特徴的な動きがありました。

作品そのものへの感想だけでなく、ヒットの背景を考察するようなツイートが増えました。

300万円という予算という点に注目した投稿など、社会問題とからめたものも少なくありませんでした。上田慎一郎監督の父親によるフェイスブックの投稿も話題になりました。

SNSから始まった盛り上がりが、テレビによって一気に拡大し、それが再びSNSにもどっていく動きが見て取れます。



「ネタバレ厳禁」守られた理由

今回、特徴的だったのは「ネタバレ」に気を配ったツイートが多かったことです。

ツイッター社シニア・リサーチマネージャーの佐藤建一郎さんは「まだ観ていない人のために、楽しみを取っておくという、普通の友人関係にあるような気配りやマナーが、ネット上での直接の知り合いではない人との関係でもきちんと働いた」と見ています。

佐藤さんは、自然発生的な広がりに注目します。

「映画で感じた感動をTwitter上で誰かにシェアすることを通じて、共感形成の場やコミュニティがつくられたのだと思います。そして、このコミュニティがうまく機能するために『ネタバレ厳禁』が暗黙の『掟』として自然発生的に広がり、これだけ多くの人が秘密を守り続けたのではないかと考えています」

盛り上がりの前提として、監督やキャスト、製作陣による土台作りがありました。

「大ヒット前から好意的な素地が作られていき、結果、爆発的な会話量を醸成することに成功したと思われます」

一連の「カメ止め」のツイートから見えるものは何か。

佐藤さんは感動を他の人にも体験してほしいという「共感形成のコミュニティ」がツイッター上で生まれたことが大きいと見ています。

「ツイッターでは『私を見て!(Look at Me)』といった情報よりも、自分が感動したり、発見したりした『今、こんなことが起きているよ!(Look at This)』といった情報の方が広がりやすい。その結果、大きな話題につながったのだと思います」

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