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連載

#5 平成B面史

よゐこ有野が語った「クソゲー愛」攻略本読んでも解けない理不尽さ

よゐこ・有野晋哉さんが語った「クソゲー文化」とは……?=デザイン・田中和
よゐこ・有野晋哉さんが語った「クソゲー文化」とは……?=デザイン・田中和

目次

 平成を振り返る時、外せないのがゲームですが、みなさん覚えてますよね? 「こんなの誰がやるの?」と思わせるような「クソゲー」もたくさんあったことを。そして、文句を言いながらカセット型のソフトを「フーフー」して本体に刺し、なぜかやり続けませんでしたか? そんなクソゲーについて、バラエティー番組「ゲームセンターCX」(フジテレビONE)で「有野課長」に扮して10年以上プレーし続けるお笑い芸人の有野晋哉(よゐこ)さん(46)に聞きました。「クソゲーの魅力って何だったのでしょうか……?」(朝日新聞記者・前川浩之=1977年・昭和52年生まれ)

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「理不尽で解けないというのがクソゲー」

 ――昭和の終わりごろ、1983(昭和58)年に登場した任天堂の家庭用TVゲーム機「ファミリーコンピュータ」は、国内外で6千万台以上売れた伝説のゲーム機です。そんなファミコン世代ど真ん中で、自宅にはゲーム機専用棚まで作ってしまった記者の私もクソゲーとは長い付き合いをしてきました。まず、クソゲーの定義とは何でしょう?

 

有野

「一般的には、理不尽で解けないというのがクソゲーやと思うんですよね。それ以上に大事なのはみんなが知ってるって事。『たけしの挑戦状』みたいなのですね。今はソフトが出るサイクルとハードが多すぎて、共通してしゃべれる、『あった、あった』というクソゲーは出にくい。最近のゲームはクレームが出ないように色んな部署が確認して確認して、全員が納得して制作が動き出すから。容量も大きいから要素も多くて文句は出づらい」
【記者のつぶやき】「たけしの挑戦状」(タイトー、1986年)は、ビートたけしが監修した伝説のゲームで、100万本以上売れたヒット作でした。普通のサラリーマンが宝の地図を見つけて……というストーリーでしたが、ファミコンについていたマイクでカラオケを歌って「うるせー」と言われないと次に進めなかったり、いきなり始まるシューティングゲームが難しかったり。難易度が高すぎて、記者もクリアした覚えはありません。「クソゲー」の代表格でしょう。
「クソゲー」について語る有野晋哉さん
「クソゲー」について語る有野晋哉さん

攻略本読んでも「全然解けへんやないかい」

 ――「たけしの挑戦状」を有野課長が番組でクリアするのを見て、感動さえ覚えました。これ、実際にクリアできるんだ、と。有野さんは、番組のロケで、「たけしの挑戦状」の攻略本を出版した出版社に出かけたそうですね。

 

有野

「太田出版で当時の事聞いたら、1冊出したら、苦情の電話がたくさん来て、『本見ても全然解けない!』って。で、2冊目も出したけど、まだ苦情が来るんで『担当は死にました』って電話に答えてたと(笑)面白い時代ですね」

 ――それぐらい、真剣に解こうとプレーした人たちがいたゲームでした。当時はゲームの作り手が今より少なく、たけしさんが「やりたい」と思ったことを全部つぎ込んだらこうなった、というのが有野さんの解説です。クソゲーに欠かせない要素、「理不尽さ」は、レトロゲームに多い特徴なのでしょうか?

 

有野

「『たけしの挑戦状』は別格としても、例えば、『ソロモンの鍵』ってパズルゲームだから買ったのに、面が進むと『アクションゲームやん』となりだすのはクソゲーやと思うんですよね。1画面しかないのに。パズルの難易度を上げるのに『早めに解け』っていうことになるから、(早いボタン操作を要求するアクション要素という)時間制限になるんですが、子どもとしては関係ないですからね。じっくり考えるパズルゲームがそれは酷い」
有野さんが言及したクソゲーのうち、記者が所有する「たけしの挑戦状」(左下)、「パリ・ダカール・ラリー・スペシャル」(中)、「ソロモンの鍵」(右)など。奥の「魔界村」はその後のシリーズ作を一枚に収めたソニーのプレイステーション版
有野さんが言及したクソゲーのうち、記者が所有する「たけしの挑戦状」(左下)、「パリ・ダカール・ラリー・スペシャル」(中)、「ソロモンの鍵」(右)など。奥の「魔界村」はその後のシリーズ作を一枚に収めたソニーのプレイステーション版

「レースゲームやと思ったらアクションゲーム」

 ――その文脈での「クソゲー」は他にもありそうですね。

 

有野

「『魔界村』も難しいけど、ボスやっつけた! エンディングやと見てたら、実は夢だったと言われ、もう一周最初の面から行けと言われる。制作者は『せっかく作ったんだから2周はやって欲しい』と。それは知らんがな! そこはもう理不尽」

 

有野

「『パリ・ダカール・ラリー・スペシャル』も、レースゲームやと思ったら、スポンサーを探すところから始まる。アドベンチャーゲーム。そんなリアルはいらんねん。と、クソゲーやと思う。でも、このソフトは知ってる人も少ないから中身はクソゲーやのに、そこまで昇華してない。本当のクソゲー」
【記者のつぶやき】鍵を探して妖精を解放していく「ソロモンの鍵」(テクモ、1986年)、主人公アーサーがさらわれた姫を助けに行く「魔界村」(カプコン、1986年)、最高峰レースで優勝を目指す「パリ・ダカール・ラリー・スペシャル」(CBSソニー、1988年)は、いずれも人気を博したゲームで、良くできた名作と呼ぶ人もいるかもしれません。でも、ゲーム内の説明が不足していたり、急に難しくなったりして、今の「ユーザーフレンドリー」な商品とは違う面もありました。
懐かしいゲーム名をどんどん出してくる有野晋哉さん
懐かしいゲーム名をどんどん出してくる有野晋哉さん

今のゲーム、スタートまでが「もう眠たい」

 ――「クソゲー」の、この、ちょっと足りない、ちょっと理不尽なところが、「かわいい」魅力なんでしょうか?

 

有野

「そうですね。共通の話題になるってのも魅力。マリオなんかでも、草むらと雲は同じ形で、容量が少ないから色変えるだけ、とか。(スムーズな画像ではない)ドット画の方が想像できて面白いんですよ。これはこうなのかな、この人の仕事はなんだ、とか言いながら(笑)」

 ――そうそう、想像力で補っていました。画面に説明が出てきたり、「チュートリアル」という練習モードがあったりする最近のゲームとはわけが違う。最近は、容量が大幅に増えてリアルな描写が可能になり、主人公を自分好みに細かく設定することができるゲームも多いので、隔世の感があります。

 

有野

「今はキャラクターが全部作れるじゃないですか、自分で。背の高さとか、太いか細いとかのスタイルとか。そうなると、ゲーム始まるまでに凄い時間がかかる。やっと始まったと思ったら、オープニングムービーが長い(笑)。できるぞと思ったらもう眠たい(笑)」

 

有野

「でも、自分で作れたら、マリオみたいなキャラクターできないと思うんですよね。ひげでキャスケットでオーバーオールって、絶対選ばない。あんなに愛されるキャラクターには(ならなかった)。キノコ食べたらデカなんねや、って全員が覚えるっていう(笑)。制作が今回の主人公はコレ!って自信持って出して欲しい。それを文句言いたいんです」
記者の自宅リビングにあるゲームソフト類を収めた引き出し。「ファミコン」や「PCエンジン」用など古いものばかりで、お気に入りです
記者の自宅リビングにあるゲームソフト類を収めた引き出し。「ファミコン」や「PCエンジン」用など古いものばかりで、お気に入りです

「ゲームに余白をいっぱい作ってる」

 ――最新ゲームは、オンラインで自分のキャラクターを動かして他のプレーヤーと協力するゲームも多く、そぎ落とされたシンプルさに面白さを見つけていくという、昔のゲームにあった「ストイックさ」は感じられませんよね。

 

有野

「クソゲーは勝負している感じ。我々が思い描くゲームの面白いのはここなんです。それでもプレイヤーはなんか変な形やな、と思いつつもやるやないですか(笑)。『誰やねんこれ』って言いながらやるのが楽しいんですよね。ゲームに余白をいっぱい作ってる」

 

有野

「やることは主人公がラスボスをやっつける事なんですけど、今のゲームは余白がどんどん広くなっていく。のりつけるの、ちょびっとでええはずなのに、ミニゲーム要素やら余白が多い。それはそれで面白かったり、でものりしろばっかりになっていくから、結果、主人公が全然ラスボスに会えない」
【記者のつぶやき】余白の多さは、クソゲーの牧歌的とも言える面白さを指摘していると思います。ゲームとぶつぶつ対話しながらプレーする愛らしさ。そんな有野さんは、最新ゲームももちろんチェックするそうですが、任天堂の最新機種「ニンテンドー・スイッチ」でも、100人単位のスタッフが関わる大作ではなく、10人未満で作るようなゲーム、比較的安価に買える独立系ゲーム「インディーゲーム」が好きで、可能性を感じているそうです。

 ――「ニンテンドー・スイッチ」の「ヒューマンフォールフラット」は、説明が少なく不親切ですが、寄り道したりうろうろしたりしながらゴールが目指せるお気に入りのゲームだとか……

 

有野

「むにょむにょ動いて操作が難しい。全然教えてくんない。当時出てきたら、『クソゲーや』と言いますね。でも、クリア出来たから安心して次のゲームに行ける」

 

有野

「最近のゲームって、食べ物でいうと、フードファイター狙い。たくさんの要素を早くたくさん食べないと次にいけない。んで、更に配信されて次にいけない」

 

有野

「僕はゲームはゆっくりでも全部食べたいんです。だから、おいしく食べる。マグロの目玉まで食べる感じです。『えー目玉食べるんですか』って驚かれたいんです」

 

有野

「だからクソゲーでしょって言うんじゃなくって、ゲームは食ってから文句を言って欲しいなあ。『目玉どんな味なんですか?』って聞かれて、めちゃくちゃ不味いでって言えるまでが、クソゲーなのかな。」

 「クソゲー」精神ここにあり。わいわいやって、文句を言って楽しむ。幸いにも、今のゲームにもクソゲー要素は残っているようです。

※「ソロモンの鍵」のメーカーは「タイトー、1991年」とあったのは「テクモ、1986年」でした。修正しています。

 

withnewsでは、平成が終わりを迎えるにあたって、平成を象徴しているのに普段は忘れられがちなアイテムや出来事を「平成B面史」と名付けました。みなさんの中で「そういえば……」とひらめいたものをハッシュタグ「#平成B面」をつけてツイートしてくれませんか? 編集部が保存に向けた取材にかかります。

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