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ワサビには「わさび」の文字が最適! 専用おろし金、その理由とは?
一見すると普通のおろし金ですが、おろし面をよく見ると「わさび」の文字が並んでいた――。
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一見すると普通のおろし金ですが、おろし面をよく見ると「わさび」の文字が並んでいた――。
一見すると普通のおろし金ですが、おろし面をよく見ると「わさび」の文字が並んでいた――。そんな商品がネット上で注目を集めています。どういった経緯で制作され、なぜ平仮名だったのか? 開発した会社の社長に話を聞きました。
話題になっているのは「本わさび専用おろし板 鋼鮫」。ワサビやワサビ漬けなどの販売を手がける山本食品(静岡県三島市)が昨年3月に発売した商品で、価格は税込み4320円です。
おろし面は縦7.7cm×横7.7cmの正方形で、よく見ると「わさび」の文字が無数に並んでいます。サイズ違いの「ミニ」「プロ」も同様の作りです。
ツイッターでこの商品が紹介されると、「笑いながらうなった」「ワサビ以外をおろすときすごく申し訳ない気持ちになりそう」といったコメントが寄せられています。
「せっかく高価な本ワサビをお買い上げ頂いたのに、『家ですりおろしたら全然辛くなかった』『思ったより風味が乏しかった』といったお客様の声が寄せられたのが、開発のきっかけでした」
そう話すのは社長の山本豊さんです。
山本さんによると、ワサビをおろすポイントは、力まず優しく空気を取り込みながら擦ること。ワサビの細胞が壊れて空気に触れることで辛み成分が生成され、粘りも出て辛味・風味が増すといいます。
「おろし方やコツを知らなくても、ワサビ本来の味を引き出せるおろし板を作ろう」と企画したそうです。
おろし面を「わさび」に決めるまでに試した形状は300種類ほど。
「丸、三角、四角、星形などさまざまなデザインを試しました。ただ、どれも納得がいかずに、半ばヤケになって『わさび』の文字で作りました。不思議なことに、この平仮名が最も優れており、『やはり、ワサビにはわさびの文字が最適なのか!』と、とても驚き、興奮したのを今でも忘れられません」
なぜ「わさび」の文字がよかったのか? この点については、こう分析します。
「『わ』『さ』『び』の文字の中には、それぞれ円が描かれています。すりおろされたワサビは、この円の中で回転しながら空気を含みます。空気を含んだワサビが『わ』の文字は下方向に、『さ』の文字は左右へ、『び』の文字は上へ、それぞれ押し出されることで、辛み成分と風味が増すんです」
また、形状だけでなく製造技法にも工夫があります。「エッチング」と呼ばれる金属を溶かす方法です。
金属を上から溶かすことによって、文字の断面が山のように斜面になるため、立体的な回転も組み合わさり、より空気を取り込みながら擦ることができるそうです。
文字のフォントや大きさ、行間、エッチングの回数などについては、「とにかく試作を作っては実際にワサビをおろして試す」の繰り返し。着手から1年かけて納得いくものが完成したといいます。
「試作、試し擦りの繰り返しでしたが、今考えると徐々に完成に近づいていく作業は本当に楽しくワクワクの連続でした」
実際に使っている料理人からは「ワサビの粘りに驚いた」「お客様にわさびの文字をみせると驚いて、とにかく盛り上がる」といった反応が寄せられているそうです。
話題になったことについては、こう話します。
「よくわかっていなくて、ビックリしました。忘年会の最中に『なんだからやたらと通知が来るな~』と思ったら、注文の連絡だったんですよ」
そして、この商品には、山本さんの遊び心も隠されているといいます。
「現在出荷している鋼鮫(ミニ、プロは除く)には、1カ所だけ『わさび』ではなく『わびさび』としている部分があります。ぜひ見つけてくださいね」
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