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交通量調査って、何してるの? ベテラン調査員が語った「つらい時」

道路でカチカチやっている人、何をしているのか詳しく聞きました=サーベイリサーチセンター提供
道路でカチカチやっている人、何をしているのか詳しく聞きました=サーベイリサーチセンター提供

目次

 歩道に座って、道路を見つめながら、カチカチといくつものボタンを押している人たち。一度は見かけたことがありませんか。「交通量調査」や「通行量調査」と呼ぶそうです。「車を数えてるんだろうなあ」ということは何となくわかりますが、実際何をしているのかと聞かれると正確には答えられません。「もしかして、私のことチェックしてる?」と調査員の前を3往復したこともありますが、気づかれていたんでしょうか。聞いてきました。

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サーベイリサーチセンターの高野精久調査部長に教えていただきました
サーベイリサーチセンターの高野精久調査部長に教えていただきました

交通量調査「社会的意義ある仕事」

 取材に応えてくれたのは調査会社、サーベイリサーチセンター(本社・東京)の高野精久調査部長です。

 「車の交通量調査は国や自治体、道路会社などから依頼を受けることが多いです」

 道路を新たにつくる時には、つくる前と後で比較するために必要な資料です。あとは店舗出店の際にデータをとることもあります。「社会的意義のある仕事です」と高野さんは話します。

「カチカチ」の実物登場

押すと「カチッ」と気持ちいい音が鳴りました
押すと「カチッ」と気持ちいい音が鳴りました

 あの「カチカチ」の実物を見せていただきました。この6連カウンターと呼ばれるものを使います。

 紙が貼られ、「乗用車」「貨物車」「原付」「自動二輪車」と乗り物が4分類されています。一番多いのが4分類で、「乗用車」「バス」「小型貨物」「大型貨物」が一般的なパターン。乗用車をさらに細かくタクシーと分類したり、貨物も大型と小型で分けたり、7,8種類に分けることもあるそうです。

 まれに12分類することもあるそうなので、かなり車の分類に詳しくなりそう。

流入ではなく、流出を見る

 調査する時は道路の角に立ち、直進や右折、左折する車のそれぞれの交通量をカウントします。「流入ではなく、流出を見るんです」と高野さん。

 戸惑っていると図にしてくれました。交差点に入るところではなく、交差点を出る地点を見る、ということだそうです。

 B地点の調査員だと、(1)と(2)と(3)からくる車を数えます。(1)のカウンター、(2)のカウンター、(3)のカウンターと3個のカウンターを用意して、それぞれの交通量がわかるようにします。

慣れない言葉に混乱していると、高野さんが図に書いてくれました
慣れない言葉に混乱していると、高野さんが図に書いてくれました

ベテラン調査員にも聞きました

 ベテラン調査員の男性2人にも話を聞くと、調査員泣かせの交差点が東京にありました。

 調査員Aさん(55)は調査員歴約15年、Bさん(53)は約20年の大ベテランです。

――1日中座り続けるんですか?

 

調査員Aさん

2時間ごとに1時間休憩があります。拘束時間は12時間が多いですが、まれに24時間ということもあります。

――2時間その場を離れられないと、つらい時ないですか?

 

調査員Bさん

暑すぎる時と寒すぎる時はキツイですね。出来るだけ着込んだり、夏は帽子をかぶったりしてできる限りの対策はします。

腹痛になったら……

 

調査員Aさん

急にお腹が痛くなった時はつらいですね。

――そのまま2時間耐えるんですか!?

 

調査員Aさん

見回りをしている管理者がいるので、電話して代わってもらいます。交代するまではその場を離れられないので本当にピンチの時は「頼む来てくれ」という感じです。

――2時間カウントし続けるって集中力が必要じゃないですか?

 

調査員Aさん

いえ、ヒマな所の方が精神的にきついんですよ。

 

調査員Bさん

全然時間が経たないから、立って眠気と闘っています。

 

調査員Aさん

私は自分の個人的なことを考えて過ごします。

カウンターは「見ないで打つ」

――意外です。車が多いと焦ることはないんですか? カウンターを押している間に次の車が通り過ぎた、なんてことは。

 

調査員Bさん

カウンターは見ないでカチカチやるので。そうじゃないと間に合わないんですよ。最初は難しいですが、センスのいい人は2、3回でできるようになりますよ。

――見ないで打つってどうやるんですか?

 

調査員Aさん

私はこうやって3つを配置します。初めての人に教える時もこの配置にしますね。
Aさんのいつもの配置。手前に1台、奥に2台を置く。貼ってある分類はバラバラです
Aさんのいつもの配置。手前に1台、奥に2台を置く。貼ってある分類はバラバラです

 

調査員Bさん

どんな形でも打てますよ。前の人が置いていった配置でそのまま打ちますね。

調査員泣かせの交差点「右折が4車線」

――さすが経歴20年! そんなベテランでも、ここは難しかったという交差点はありますか?

 

調査員Aさん

交通量が多くて有名なのは日比谷交差点ですが、難しいのはそのすぐ近くにある祝田橋交差点。
日比谷交差点
日比谷交差点

 

調査員Bさん

普段泣き言を言わないAさんが、「大変だ」って。

――どんな交差点なんですか?

 

調査員Aさん

右折が4車線あって、重なって見えづらくて。その日は雨が降っていて傘をさしながら片手しか使えない。しかもタクシーとバスと乗用車とか分類も多くて、一番つらかった……。

 

調査員Bさん

あそこで打てるようになれば、もうこわいものないですよ。
祝田橋交差点手前の標識。右折レーンが4車線ある
祝田橋交差点手前の標識。右折レーンが4車線ある

人の通行量調査「行動が読めない時も」

――人の通行量をカウントする通行量調査で難しい点はどんなところですか?

 

調査員Bさん

目標物を通り過ぎた人をカウントするんですが、人って急に戻ることもあるじゃないですか。通り過ぎる、と思ったらUターン、ということも。読めないのが難しいですね。

 

調査員Aさん

年齢は瞬時に自分で判断しないといけないのですが、迷うこともあります。

――私のことカウントしてるのか確かめたくて同じ場所を3往復したことがあるのですが、バレてますか。

 

調査員Bさん

バレてますね。
そういう人はいますよ。

――心を乱してなかったでしょうか。

 

調査員Bさん

そういうの面白いんだろうなあ、と思いながら押しています。

 調査員の心を乱してはなかったようで安心しました。

 調査は9~11月が一年を通じて一番多いそうです。夏休みや正月などがなく、交通量が秋は平均的といわれていて、いまの時期は毎日のように調査があるそうなので、何を調査しているのか予想してみるのも面白いかもしれません。

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