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#28 夜廻り猫

我が子に「あっちにいってて」そしたら……夜廻り猫が描く親子

目次

 「お店に来ていいのは用事のある人だけ!」。お客さんや業者の対応に追われ、忙しい毎日。かまってほしくて声をかけてきた子どもにそう告げると……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「寂しい子ども」を描きました。

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お母さんにかまってほしくて 考えたのは「納品」

 ひとの心の涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、きょうも街を夜回り中、ひとりたたずむ女性を見かけます。

「おまいさん泣いておるな? 心で わけを話してみなさらんか」

 女性は昔、パンや駄菓子を売るお店を開いていました。お客さんや納品業者の対応に追われ、「おかあさん」と呼びかけてくる息子のことを構えない日々でした。

 「のうひんでーす」。ある日、息子がそう言いながら、手にあめ玉を一つ乗せてやってきました。

 お店に来る業者のまねをしながら、「お代は3ナデになります」。「なでればいいの?」となでてあげると、息子は満面の笑みを浮かべたのでした。

 息子も大きくなった今、女性は「相手してもらいたくて考えたのね」と振り返ります。

 「今も寂しい子どもがいるなら 話し相手になりたいわ」と話し、遠藤たちも笑ってこたえるのでした。

親のような「他人」 親子のそばにいてくれたら…

 日々の仕事に追われ、なかなかゆっくり子どもの相手ができないお母さんを描いたこの漫画。作者の深谷かほるさんは「子育て期の親は、仕事も忙しいものですよね」と心配します。

 「子どもが関わる人間はたくさんいた方がいいのでは、と思います。血のつながりに関わらず、親のような存在が2組以上いたら、親子ともに助かりそう」と話します。

 「子供の話をさえぎらずに聞いてくれて、ゆっくり付き合ってくれるお年寄りがいたらいいですよね」

【マンガ「夜廻り猫」】
 猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
 泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
 そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
 遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
 ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受けた。単行本4巻(講談社)が7月23日に発売された。

28日から三越日本橋本店で「夜廻り猫の展覧会」

 11月28日から12月17日まで、三越日本橋本店の本館7階はじまりのカフェで「夜廻り猫展~深谷かほる作品展2~」が開かれます。入場料は無料です。

 駄菓子や日用品などを売っていたむかし懐かしい「よろず屋」をイメージした展示になっています。原画の展示や、新作グッズ・コラボメニューの販売もあります。



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