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#22 ネットの話題フカボリ

家畜ならぬ「社畜文化」にもの申す!ニワトリ社員たちの生き様に共感

「ブラック労働」にあらがうニワトリ社員たちのストーリーです
「ブラック労働」にあらがうニワトリ社員たちのストーリーです 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

目次

 近年社会問題になっている、上司によるパワハラや、終電近くまでの残業。そんな「会社員あるある」にもの申す漫画が、ネット上で共感を集めています。主人公は、まさかのニワトリ社員。仲間とともに、不条理に立ち向かい成長する物語です。家畜ならぬ「社畜」の生き様は、「勇気をもらえる」と読者の心をつかんでいます。かつてIT企業に勤めていたという作者の男性に、作品への思いを聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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もがいて生きるトリたち

 話題の漫画は「毎日でぶどり」です。インスタグラム(everyday_debudori)で、今年の元旦から公開が始まり、現在は平日のみ更新されています。

主人公たちが勤めるブラック企業での様子を描いた回
主人公たちが勤めるブラック企業での様子を描いた回 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 ぽっちゃり体形なニワトリの主人公「でぶどり」は、ブラック企業に勤務する会社員です。毎日深夜まで働き、一番の楽しみは週末の休み。定時で帰ろうとすると、「できることを探して残業しろ!」と怒鳴る上司のハゲタカにうんざりしつつ、日々を過ごしています。

主人公のでぶどり(左)
主人公のでぶどり(左) 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 何とか日常を変えたいと、でぶどりは思いつきで行動を起こします。副業を考えたり、ブログを開設したり。しかし、どれも形だけで長続きしません。

軽はずみな考えが、結果に結びつくことはありません
軽はずみな考えが、結果に結びつくことはありません 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 そんな中、会社の後輩でヒヨコの「ひよ」が退職。努力家で優秀なひよは、でぶどりの家に居候しながら転職活動に打ち込み、無事内定を得ます。

でぶどりの会社の後輩、ひよ
でぶどりの会社の後輩、ひよ 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 本心では会社を辞めたいでぶどり。「職場に迷惑かけちゃうし」「親にもなんて言われるか」。踏ん切りがつかない様子を見て、ひよは語りかけます。

ひよから生き方を諭されるでぶどり
ひよから生き方を諭されるでぶどり 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 「他人じゃなくて、先輩はどうなんですか」「他人の目を気にしたまま生きるんですか」。でぶどりはこの言葉で奮起。ひよと同じ会社に転職し、新たなキャリアを歩み始めるのです。

 ゆるい絵柄とは裏腹な、もがいて生きるトリたちのリアルな姿に、多くの読者が自らを重ね合わせています。「ひよの言葉には耳が痛い」「癒やされるし胸に刺さる」。アカウントのフォロワーは5万人を超え、来年には単行本も発売される予定です。

大切なのは「共感」と「発見」

 作者の橋本ナオキさんは、IT企業の元システムエンジニア(SE)です。現在は漫画家として、ツイッターの個人アカウント(@Abhachi_Graphic)でも、作品の関連情報や日々の出来事について発信しています。

 独特な作風は、どのようにして生まれたのでしょうか?取材しました。

 ――なぜキャラクターをトリにしたのでしょう

 実は熊や恐竜といった候補もあったのですが、その中で一番描くのが簡単だったんです。当初は毎日漫画を更新していたので、作業の手間を減らし、話の展開やセリフを練るのに時間を割きたかったという理由もあります。

 ――それぞれの性格などの設定は、どう考えていますか

 SNSに漫画を公開する上では、「共感」と「発見」 が大切になると思っています。「分かる!」という前者をでぶどりに、「よく言ってくれた!」「知らなかった!」という後者をひよに当てはめました。

 それ以外のキャラについては「ホワイト企業に勤務する、見た目が真っ黒なカラス」など、ギャップを大事にしています。可愛いだけでは印象に残らないので、興味を持ってもらえるよう工夫しています。

でぶどりの友人で、優良企業に勤めるカラス
でぶどりの友人で、優良企業に勤めるカラス 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)
でぶどりたちの同僚で、空を飛ぶ夢を持つペンギン「ピノさん」
でぶどりたちの同僚で、空を飛ぶ夢を持つペンギン「ピノさん」 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 ――作品には「会社員あるある」なエピソードが多く登場しますね

 僕自身、SEとして東京の会社に勤めていた時期がありました。ブラック企業ではなかったのですが、友人の中には、意に反する働き方に苦しんでいる人がいたんです。

 ネット上で、企業の悪質経営に関するニュースに触れる機会もあり、物語化したいと思い立ちました。

小さな行動が大きな変化に

 ――重たいテーマを読者に楽しんでもらうため、何を意識されていますか

 キャラがあまりに追い詰められるような描写は、控えるようにしています。ゆるい作風を通じ、多くの人が働き方について考えるきっかけをつくりたい、というのが理由です。

 僕自身、就職活動をして社会人になりました。その中で、世間一般に「当たり前」とされている価値観を疑うことは無かったんです。同じような境遇にある人にも、作品に込めたメッセージを届けたいと考えています。

 ――「社畜」という言葉があるように、現状の働き方について、不満を持つ人はまだまだ多いようです

 「毎日でぶどり」は、「大きな変化が欲しいなら、自分で小さな行動を起こすしかない」というのが大きなテーマになっています。

 作中でも「労働環境が良くなるのを待つのではなく、会社を辞めて時間を確保する」というエピソードを描きました。転職や副業など、状況を改善する第一歩は様々だと思います。

ブラック企業の上司と衝突し、不満を爆発させるでぶどり
ブラック企業の上司と衝突し、不満を爆発させるでぶどり 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

 ――ファンからは「働く上で参考になる」といった声が寄せられています

 いつもありがとうございます。公開を始めてから、反響が無い時期が長かったので、本当に励みになっています。

 僕の伝えたいことが、万人にとって正しいわけではありません。でも「あのヒヨコは何て言っていたかな、何て言いそうかな」と、漫画が人生における、一つの選択基準になればうれしいですね。

夢のために努力するピノさんを見守るでぶどりたち
夢のために努力するピノさんを見守るでぶどりたち 出典: 「毎日でぶどり」のインスタグラムアカウント(everyday_debudori)

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