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何やってもうまくいかない「平成元年生まれ」を救ったシンプルな答え
引きこもりから始まり、若はげ、ブラック職場、風俗狂い、借金、夜逃げまで。人生における六つの試練を、20代でコンプリートした平成元年生まれの男性がいます。自暴自棄になってもおかしくない中、助け舟となったのは好きなアニメ制作への情熱でした。新元号の時代が近づく今、彼は訴えます。「不器用にあがいていくしかないのです」(朝日新聞記者・高野真吾)
六つの試練をコンプリートしたのは、アニメーターの上野鷹秋さん(29)。
高校で引きこもりを経験。同時に若はげに悩みはじめ、初めての職場は「ブラック職場」でした。失恋をきっかけに風俗通いとなり借金まみれに。先輩宅に夜逃げをします。
上野さんは今、働いて借金を返しながらアニメ制作をしています。
職場になじめず、公私ともに苦労している上野さんの姿をずっと見てきた人がいます。
借金まみれの上野さんが、転がりこんだ大学時代の先輩の金子怜史さん(30)です。
「普通は大人になると他人とは割り切って付き合い、妥協しますよね。ところが、上野はずっといい顔ばかりするから、時に足元を見られてしまう。人の良さは魅力なのですが、生きるのに弱点になっています」(金子さん)
そんな上野さんに「生きづらさを抱えて生きる」ことについて聞きました。
――上野さんが生きづらいと感じる要因は何なのでしょうか?
「僕は仕事がしたくないのでなく、何かの役に立ちたいという思いはあります。仕事でつまずくことが多いのは、人との問題なのかな。合う人とは合うのですけど、合わない人に何かを言われると、すごくストレスを感じます。本音で話をできないし、抱え込んでしまう。職場の人には愚痴も言えません」
――人間関係以外の要因はありますか?
「自分にウソをつく、ため込むと生きづらいです。例えばワンマン社長に『黙れ!』と言いたいけど言えない。やりたくない仕事をしないといけない。自分の本心と違うことをし続けると苦しくなります」
「自分をだましていると自分が分からなくなるのです。僕は自分をだまし、生活費をかせぐために20代の前半はアルバイトばかりしました。その結果、自分を見失うことになってしましました」
――生きづらさから救ってくれたのは、好きなアニメ制作だったのでしょうか。
「そうです。アニメ制作は大学生の時に楽しかったし、絶対にあの経験はウソじゃないと思えました。迷っていたからこそ、好きなことをする原点に戻りました。あと、金子さんのような自分に寄り添ってくれる先輩、友人がいたのは大きいです」
――好きなことと友人がいれば、だいぶ生きやすくなるということですか。
「不安な時はありますが、よりどころがあると乗り切れます。生きづらいと思っている人は、自分に対してそれだけ真面目なのです。だから悲しく思わないで欲しい。求めれば助けてくれる人はいるはずです」
――上野さんも回り道をしながらも、少しずつ進んできました。
「前向きになれる考え方や行動の仕方を探し続けることです。自分の好きだったことはなんだろうと、内面を探るのです。糸口が見つかったら、行動してみて下さい。不器用にあがいていくしかないのです」
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