連載
#4 コミチ漫画コラボ
「学校しんどい、わかるよ」 優しい言葉、今苦しい僕には届かない
いま苦しんでいる10代へ、聞き心地のいい言葉ばかりでは届かないーー。コルクBooksとwithnewsのコラボ企画「#学校がしんどい君へ」には、そんなメッセージが込められたマンガ「学校がしんどかったという君へ」も入賞しました。作者の男性は、「『逃げていいんだよ』とか、『弱くていいんだよ』というセリフは、中学時代の僕には効かなかったんです」と話します。
「学校ってしんどいよね」「わかる」
「君だけじゃないよ」「僕もしんどかったな」
男性が語りかけます。表情は明るく、いまは人生を楽しんでいるようです。そして、グイグイ寄ってきて言います。
「でも今だけさ!」「今を乗り越えれば」
「これから楽しいことが沢山あるんだ!」「大丈夫!」
場面は変わり、ズタボロの学生服を着た少年が現れます。メガネにはひび。ぐったりした様子でこちらに視線を移します。
「じゃあ代わってくんね?」「こっちは、」
「今戦(や)ってっから」
マンガを描くとき、当時の自分といまの自分を行ったり来たりしたといいます。
「僕対僕であれば、『お前は将来こういうマンガを描いていける』『乗り越えろ』って言えるけど、当時の僕には全く届かないと思ったんです。そんな未来は知らない。いまこの瞬間が嫌なだけ。『よし、もっと生きよう』とは1ミリも思いません」
マンガには、SNSを通じて多くの反応が集まりました。
「僕の考えは間違っていないというか、『昔の自分の目に似ている』という共感もあってうれしかったです」
つらいとき、ドラマや本で励ましや癒やしの言葉を目にしたことはありました。でも、それで頑張ろうと思ったことはありません。
「僕が癒やされたのはむしろ、主人公が強いものや恐竜が暴れる作品。この世界はやさしいよと言われても嫌なんですよ」
アメリカの俳優、ジェームス・ディーンに憧れていたというつのださん。映画「理由なき反抗」や「エデンの東」を見て、不良で孤独な姿に魅せられました。ジェームス・ディーンのようなかっこいい自分になりたいと思っていたそうです。
「かっこいい主人公のつもりで学校に行けば周りを倒せる、クールにいけば明日は変われると思って行くんですよ。結局、いつもの情けない自分がいる現実に打ちのめされるんですが。強い人になりたかったので、当時は自分が弱いことを認めるのが一番嫌でした」
中学の「ダサい」自分を知る人がいない高校に行きたいと、地元の高校の受験でマークシートをずらして書いて、わざと不合格になりました。自宅から1時間以上離れたところで高校生活を送ります。
「1回リセットして、今度こそジェームス・ディーンになりたいと思いました。このまま同じところに行ったら高校はしんどすぎるってアラートが鳴ったんです。リスタートを切る感じです。でも、長続きはしませんでした。結局、ジェームス・ディーンぶることが『ゆがみ』なんですよ」
「高校では映画の話ができる親友ができました。心を開いて楽しくやれて、いじめられることもなく、創作の道に行くきっかけもできました」
つのださんは、コルクBooksで中学・高校の話もマンガにしています。
【関連リンク】青春時代の物語を描いた「僕-boku-」(コルクBooks)
「マンガを描くことはエンタメです。スリリングとか、ページをめくりたくなるとか。いまは中学時代のことがおいしいネタになるんです。ギャグマンガに変える。描くことがセラピーみたいになっています。もっとひどいことはなかったかなって扉を開けてみる。一通り描ききると、いい人生だと思えるんですよ」
「主人公は自分しかいないので、いかに自分を主人公と認めて、そのエピソードも愛せるか。中学時代の僕は無理ですけど、いまだからいろいろ言えます」
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withnewsは7月、マンガのSNSを運営するコルクBooksとコラボし、「#学校がしんどい君へ」をテーマに生きづらさを抱える10代へ向けた作品を募集しました。のべ37作品が集まり、4作品を入賞に選びました。入賞者のみなさんは、どんな思いでマンガを描いたのでしょうか。みなさんの10代も振り返ってもらいました。
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