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開けば驚く「だまし絵」ノート! 作者は19歳 完成までの経緯を聞く
目の錯覚を利用した「だまし絵」が描かれたノートが、ネット上で注目を集めています。
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目の錯覚を利用した「だまし絵」が描かれたノートが、ネット上で注目を集めています。
線の途中が浮き上がったあみだくじに、四角い形にえぐられたページの一部……。目の錯覚を利用した「だまし絵」が描かれたノートが、ネット上で注目を集めています。「ミラクル エッシャー展」の会場で販売されているこのノート。公式グッズかと思いきや、19歳の日本人が制作したものでした。
今月7日にツイッター投稿された画像。写っているのは立体的なあみだくじや、めくれた付箋など4枚です。
実はすべてが平面に描かれたイラストで、目の錯覚を利用したトリックアートなのです。
いずれのイラストも、上野の森美術館で開催されている「ミラクル エッシャー展」(7月29日まで)の会場で販売されているトリックアートノート「NOUTO」に収録されているそうです。
この投稿に対して、「これは買っちゃうわ」「デッサン完璧すぎでしょ」といったコメントが寄せられています。
「だまし絵」で知られる版画家、マウリッツ・コルネリス・エッシャー。
その作品152点を集めた展覧会の会場で販売しているノートということで、主催者が企画して制作したものかと思いきや、そうではありませんでした。
主催会社のひとつ、フジテレビのシニアプロデューサー・神田比呂志さんは、こう話します。
「作者は19歳のMozuさんです。展覧会へのメッセージをお願いしたことが縁で、すでに制作されていたノートを会場で販売することになったんです」
ツイッターで話題になった翌日には、税抜き1200円のこのノートが完売。
追加で発注したところ、週末には1日で200冊以上売れた日もあり、ノートを目当てに展覧会を訪れた人もいるそうです。
このノートを企画・販売しているのが株式会社ノウトです。
開発の経緯について、代表の高木芳紀さんはこう話します。
「私がMozu君のお父さんと知り合いで、ノートに書かれたものをFacebookで見て『欲しい』と思ったのが、きっかけでした」
資金調達のためにクラウドファンディングに挑戦。目標金額を50万円に設定したところ、1111人から309万5280円が集まりました。
「大変だったのはネタ探しと、印刷をめぐるやりとりでした」と高木さん。
最終的に30作品が掲載されていますが、クラウドファンディング開始当初は10作品ほどしかなかったそうです。
印刷については、当初は2色印刷で見積もりを取っていました。
ところが、印刷会社に作品をスキャンしてもらったところ、こう言われたそうです。
「原画を忠実に再現するには、4色印刷でないと無理。リアルさを追求するなら、罫線も特色で別引きするべきです」
コストがかかる5色印刷。「作品をショボく表現してしまうのは耐えられない」と考えた高木さんは5色にすることを決断。
その結果、制作する上での制約が少なくなり、Mozuさんが一番お気に入りだという、立体的に見える虹も誕生したそうです。
6月1日からは一般発売も開始。東急ハンズ(一部店舗を除く)などでも取り扱っています。
「ミラクル エッシャー展」での取り扱いは、高木さんが主催者に売り込んだ結果です。
話題になったことについて、高木さんはこう話します。
「驚いているのが一番です。このノートは肉眼でなく、カメラで特定の角度から撮影することでより立体的に見えます。手にとっていただいた方が参加することで完成し、楽しめる仕掛けです。Mozuくんにはぜひ、現代のエッシャーになってほしいと思います」
コマ撮りアニメ、ジオラマ、トリックアートの3つの分野で活躍しているMozuさん。展覧会のホームページに、こんなコメントを寄せています。
ノートが話題になったことについて尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「毎日 #mozu_nouto がついたツイートが増えていて、自分が楽しんで作ったものを、みなさんが楽しんでくれているのが伝わってきて、うれしいです」
スマホやツイッターといったツールがあるからこそ拡散しているし、そうしたツールと自分の作品の相性の良さも感じているといいます。
「今回のノートの元は、中2のときに描いた落書きです。それを発展させたことで、新しいジャンルを開拓できたと思っています」
今後については、こう話します。
「ジオラマとトリックアートについては、けっこう知ってもらえたので、コマ撮りアニメに力を入れたいと思っています。目指すはアカデミー賞です」
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生誕120年 イスラエル博物館所蔵「ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」は東京にある上野の森美術館で7月29日まで開催中です。詳しくは公式ホームページで。
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