地元
古老たちのロマン、42年前のタイムカプセル探し 重機使って大捜索
「忍者の里」で知られる三重県伊賀市で、40年以上前に埋められたとみられるタイムカプセルを一目見ようと、地元のお年寄りたちが発掘作業を繰り返しています。2度挑戦して、見つかりませんでしたが、「生きているうちに見たい」として、この秋にも「三度目の正直」を狙います。(朝日新聞伊賀支局記者、燧(ひうち)正典)
事の始まりは、昨秋ごろでした。伊賀市中心部にある上野愛宕町の自治会の集まりで、複数の古老が「昔、近くの神社にタイムカプセルを埋めた」と話し、盛り上がりました。
ただ、当初は時期も経緯もはっきりせず、「50年前だ」、「竹下内閣がばらまいてくれた『ふるさと創生1億円』を使った30年ぐらい前」などと臆測が飛び交いました。
今年3月、神社で作業を行う直前、住民宅に記録が残っていることが分かります。それによると、昭和天皇の在位50年を記念して1976年に埋め、100年後に掘り出す想定でした。
住民が境内をシャベルで掘ると、すぐにシートが露出。「子供らの写真や人形を埋めた気がする」と目を輝かせる住民もいましたが、その後は作業が難航。カプセルと思われる直径1メートルほどの土管が出ましたが、木の真下にあり、掘り起こせませんでした。
それでも願いが通じたのか、別の住民宅で埋没状況の図面が見つかりました。地下約2メートルにコンクリート管を置き、その中に直径50センチ、高さ92センチのつぼを入れて埋めていたそうです。
4月、2度目の発掘作業では、造園会社の重機も投入して5時間にわたり格闘。コンクリート管の中に住民が入ると、埋没当時のものと見られる菓子袋やコーラ瓶、今は使わない「一級」の表記がある日本酒のカップなどが出土し、期待が高まりました。
しかし、約5時間にわたって人の背丈ほど掘っても、つぼは見つからず。結局、この日も作業を断念しました。
それでも、タイムカプセル探しを巡って交流を深めた住民からは、笑顔がこぼれていました。
一度は「100年後に掘り出す」という埋没当時の計画通り、今から58年後の2076年の後世に託そうという声が上がりました。
ただ、お年寄りらからは「やはり見たい」と要望が相次ぎました。記録では「地下約2メートルにコンクリート管を置き…」とあります。地表そばにあった管にはビニールシートが貼られていたので「出てきたのは防水用で、2メートルほど下にさらにもう一つ管があるかも」とみています。
さらに最近新たに見つかった文書によると、写真や寄せ書き、商店の売り出し広告などが埋められている模様で、「不開壺」との記述もあります。「開壺人は誰で、どんな気持ちでされるかはそれはわかりませんが、収納物が変質変化なく原姿のままで保存されることは確実です」などと記されていました。
自治会では神社の工事にあわせた今秋に「最終決着をつける」ことにしました。
自治会の幹部は「あるなしも含めて今度こそ白黒をはっきりさせる」と意気込み、重機のオペレーターなど協力者や作業に充てる寄付金も募っています。
まるで伊賀忍者の術のように、隠れ続けているタイムカプセルは有りや無しや。住民の思いがこもった埋蔵品は、果たして掘り起こされるのでしょうか。ロマンが尽きません。問い合わせは地元の銭湯「池澤湯」(0595・21・4606)へ。
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