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自販機のラベル、よく見たら全部手描きだ! きっかけは東日本大震災
一見すると何の変哲もない自動販売機。しかし、見本品のラベルをよく見ると、すべて手描きだった――。
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一見すると何の変哲もない自動販売機。しかし、見本品のラベルをよく見ると、すべて手描きだった――。
一見すると何の変哲もない自動販売機。しかし、見本品のラベルをよく見ると、すべて手描きだった――。そんな自販機が、ネット上で注目を集めています。設置されているのは茨城県北茨城市の旅館です。仕事の合間にスタッフが手描きで作っているこのラベル。きっかけは2011年の東日本大震災でした。
今月5日にツイッター投稿された画像。写っているのは普通の自販機のように見えますが、よく見ると見本品のラベルがすべて手描きなのがわかります。
「ポカリスエット」の水色は本物よりも淡い色合いに。「スーパードライ」は書かれている英語のメッセージ部分が人の名前になっています。しかし、どれもパッと見ただけではわかりません。
この投稿に対して、「クオリティー高っ」「見本もらえるはずだけど、なぜわざわざ?」といったコメントが寄せられ、リツイートは5万、いいねは18万を超えています。
この自販機が設置されているのは、茨城県北茨城市にある「あんこうの宿 まるみつ旅館」です。
旅館の名物は「あんこう鍋」。昨年12月に開催された、全国のご当地鍋の人気を競う「鍋-1グランプリ」でも優勝しています。
「手描きのラベルにして6年ほどになりますが、こんなに話題になったのは初めてです」
そう話すのは常務取締役の小野智さん(38)です。
手描きするようになったきっかけは、2011年3月の東日本大震災。
沿岸部にある旅館ですが、やや高台だったため、津波の被害は免れました。
しかし、建物には大きな亀裂が入り、縦に割れたような状態に。改修・補強が終わるまでの間、休業を余儀なくされました。
震災が起こって客足も減り、旅館スタッフたちも手持ちぶさたに。こんな時だからこそ何かやろう、と考えたのが「手作り感のある旅館づくり」でした。
「パッとわからなくてもいい。気づいた方が喜んで、他にも何かないかな?と楽しんでいただけるような、ちょっとした仕掛けをやろうと考えました」と小野さん。
自販機だけでなく、館内のあちこちに黒板を設置。メッセージやイラストを手描きし、定期的に変えています。
現在これらを描いているのが、スタッフの佐藤美和さん。2年ほど前、前任者が退職したのを受けて2代目に任命されました。
「フロントに立ちながら、手が空いた時にこつこつ描いています。自販機に新商品を入れる際や、ラベルデザインが変更になるたび、コピー用紙を取り出して描くんです」
実物を横に置きながら、軽く鉛筆で下書きして色をつけているという佐藤さん。一番のお気に入りと、苦労したラベルを尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「お気に入りはサントリーの烏龍茶です。理由は私が好きな飲み物だから。苦労したのは缶コーヒーのBOSS。あの男性の顔がなかなかうまく描けなくて」
スーパードライに書かれている数々の名前は誰なのか?
「あれは当時の旅館スタッフの名前です。前任者が描いたもので『遊び心でやってみた』と言ってました」
ネット上で話題になっていることを知らなかったという佐藤さん。
「取材の連絡を受けて、19歳の息子に検索してもらったら、『ママ、すごいことになってるよ』と言われてビックリしました。地味にこっそり続けていきたいと思います」
長年の取り組みが評価されたことについて、小野さんはこう話します。
「ちょっとした仕掛けのつもりが、こんなに話題になって驚いています。何かの縁でこちらの宿にいらっしゃった際は、他にも何かないか探していただけるとうれしいです」
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