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親友に流産打ち明けられたら…励ましが逆効果に 知っておくべきこと
「この前、妊娠したって報告したけど、実は流産になっちゃって…」。もし親友から、そう打ち明けられたら、どう声をかけますか。なんとか言葉を探し、慰めようとしても、かえって本人の悲しみを深めることがあります。そのような「傷ついた言葉」を経験者たちへのアンケートで探ってみました。周囲が声をかける前に「知っておくべきこと」とは――。
これらは相手を傷つけようという悪意はなく、気づかったつもりの言葉かもしれません。
しかし実際、こうした声かけで「傷ついた」という当事者がいます。
流産・死産のグリーフ(悲嘆)ケアグループ「WAKOMO会」が東京都内で開いた講演会で、朝日新聞は、周囲から言われて傷ついた言葉について、アンケートを配りました。参加者のうち47人に配り、郵送やメールで男性4人、女性12人が回答。合わせて31個の「傷ついた言葉」が寄せられました。
声をかけた相手は、友達や同僚だけでなく、親や医師、助産師といったケースもありました。
アンケートに答えてくれた東京都内の女性(36)に話を聞きました。
女性は2年前、妊娠10週で流産と診断され、医師からある言葉をかけられました。
「じゃあ何で私が、ハズレくじを引いたの」と女性は納得できませんでしたが、その場では「そうですか」としか言い返せませんでした。帰宅して、泣き続けました。
その医師の言葉は「よくあること」という意味だったように感じたといいます。「医師だから、流産した人をこれまで何人も見てきたのかもしれない。でも「『よくあることだから、大したことはない』と言われた印象を受けて傷ついた」と話します。
胎児を外へ出す搔爬(そうは)手術をうけた約3カ月後、女性は親しい友人に流産したことを打ち明けると、こう言われました。
女性は友人が元気づけようとしている様子はわかりました。しかし、「流産が普通のことと捉えられているようなさみしさを感じました」と振り返ります。その場では、友人に気をつかわせたくないため、「そうなんだよね」と返事をしました。
女性はその後、初期の流産を2回経験。2度目の時も同じ友人に打ち明けましたが、
と言われました。
「たぶん友達も何と言ったらいいのかわからなかったのだと思う。でも、『よくあること』と聞くと、落ち込んではいけないのかも、と思うようになった。感情にフタをするきっかけになった言葉です」。
その友人には、3度目の報告はしていないといいます。
昨年、30代の夫婦は2度の後期流産を経験しました。
1度目は妊娠21週で女の子、2度目は妊娠20週で男女の双子でした。赤ちゃんは3人とも病院で経膣分娩し、火葬して見送りました。
2度目の流産の後、それぞれの親から、こう言われました。
夫婦は「高齢の親を亡くした人に『よくあること』とは言わないはず。生まれてから亡くなった人への悲嘆は理解されるのに、流産や死産の悲しみは表に出してはいけないものと思われているようで、さみしい」と話します。
「流産や死産であっても、親しい家族を亡くしたことと同じだと思う。想像すれば、人を亡くした時の気持ちはわかるはず」
流産や死産の経験を打ち明けられたとき、周囲の人たちが知っておくべきことについて、経験者のカウンセリングに取り組んでいる生殖心理カウンセラーの石井慶子さん(60)に聞きました。
――流産や死産の経験を打ち明けられたとき、多くの人はどう声をかけたらいいか、戸惑うと思います。
私も「どう言葉をかけていいかわからない」と、友人やご家族のかたから相談を受けたことがあります。
まずコミュニケーションをとる以前に、知っておいてほしいことがあります。
それは、流産や死産は、生まれて成長して亡くなった人との死別となんら変わりないかもしれないこと。
そして、どんなに慰められても和らぐことがない悲しみの中にいる時間が経験者にはありうる、ということです。
――周囲の人は、どのように接すればいいのでしょう。
こうすれば正解、というものはありませんが、体験を打ち明けられたら、まずは当事者の話に耳を傾けることです。
当事者は「この人になら話せる」というように、自分にとって大事な友人に限定して、やっとのことで経験を伝える場合もあります。
励ましの言葉や感想を伝えるよりも、当事者から出てきた言葉を否定せずに、うなずいて聞くほうが、相手を傷つける可能性は少ないと思います。
当事者からメールやLINEで報告を受けることもあると思います。返信は長い文章である必要はないと思います。やわらかい言葉でお悔やみの気持ちを伝えたり、相手の体調をいたわる言葉を送ったりする人もいます。
――親友に流産について報告しても、その時は詳しい経緯までは話せない、話さない当事者もいると思います。
当事者は自分の経験を友人に伝えることについて、何度も悩んだり、相手に気をつかわせてしまうのではないかと深く考え込んだりすることで、多大なエネルギーを使っていることが多いです。詳しいことは話さない人もいます。時期が経つにつれて、話すようになる場合もあります。
周囲の人たちは、当事者の気持ちを支援したいと思うのであれば、「もし話したいことがあれば、いつでも聞くよ」、「今でなくてもいいから、話したい時に言ってね」といったスタンスで、当事者が気兼ねなく話せる状況を保ちながら、連絡を取ることが大事だと思います。
そして時間が経っても、当事者にとって大事な命が存在したこと、流産や死産という経験があったことをできるだけ長く覚えておいてほしいと思います。
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