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不倫の誘い「うれしくて、うれしくて…」実は新しい概念?その歴史
芸能界だけでなく政治を動かすまでに注目を浴びるようになった不倫。「源氏物語」を「国民文学」の一つとしてめでてきた日本人であれば、たいへん残念ながら、既婚者だからといってパートナー以外の人を好きにならない保証はない、ということは認めざるをえない事実です。不倫についての意見を募った新聞記事には、読者から50通を超える「熱い投稿」が相次ぎました。男性からの誘いに「うれしくて、うれしくて」と書いた既婚女性がいた一方、不倫報道を巡るメディアへの批判も。不倫の歴史、その受け止め方を、読者の投稿とともに探ります。(朝日新聞文化くらし報道部記者・太田匡彦)
意見を募集したのは9月25日付朝日新聞の記事「ひととき」です。「政治家の不倫が問題になりました。みなさんは、どう考えますか」と呼びかけました。
そもそも日本における一夫一婦制は、明治時代に制定された民法732条(配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない)によって確立されたとするのが一般的だとされています。
つまり既婚者が、配偶者以外の人と恋愛したり性交したりするという意味での「不倫」は、日本人にとって新しい概念と言えなくもないのです。
もちろん不倫を容認するものではありません。政治家の資質と関連づけるかどうかはさておき、不倫が家族をこわし、周囲の人たちを不幸にする行為であることは間違いありません。
ただ、政治家であろうがなかろうが、誰もが不倫に陥る可能性がゼロではないという一面には触れておきたいと思います。
「思うに結婚はくじ引きのようなものであろう」と67歳の主婦は達観した意見を投稿してくれました。
「お互いに当たりくじなら幸運。それが終生続けばめでたいが、人生経験を経るうちにズレが生ずる場合もある。また男女に限らず人の相性は理屈を超えたものだ」と続けました。
投稿のなかには、不倫願望を赤裸々につづったものもありました。夫との会話がなくなってしまったという45歳のパート女性は「不倫でもしたいと思うようになりました」と明かします。
最近になって、夫以外の男性から食事にさそわれたそうです。男性は、さそった理由を「魅力的だから」と説明しました。そのことを女性は「うれしくて、うれしくて」とつづります。
だが結局、さそいを断ったそうです。
「結婚をしているので、断るしかありませんでした。でも、行きたかったです。(不倫問題が)テレビで取り上げられているので、なんかこわくなりました」
メディアの報道も思わぬところで役に立ったわけですが、最後に、このメディアの問題に言及しなければいけません。
不倫報道に熱を上げるメディアへの批判は22件も寄せられました。批判は、政治家の資質と不倫を「関係ある」とした人、「関係ない」とした人の両方から寄せられました。
たとえば、「思うに結婚はくじ引きのようなもの」と書いた67歳の主婦の投稿はそもそも「メディアのレベルが問われる」というタイトルがつけられていました。
ほかにも「メディアの不倫ネタにはうんざりです」(主婦57歳)、「週刊誌の記者さんもご苦労なことですね。人のことを暴く商売だから致し方ないのかもと同情するけど」(主婦76歳)、「テレビはやりすぎですよ。政治家の私生活をあばいてどうするんですか」(主婦54歳)などと辛辣(しんらつ)な批判が相次ぎました。
政治家の不倫について意見を募った企画自体にも、厳しい意見がありました。
「こんな事象に『ご意見募集』とはあきれます」(無職75歳)とのこと……。ご批判は真摯(しんし)に受け止めます。
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