連載
#13 夜廻り猫
朝のホーム「あの子が危ない…」 マンガ「夜廻り猫」が描く新学期
「あの子が、危ない……」。夏休み明け、朝の駅のホーム。下を向いている制服姿の女の子を、男の子が心配して見つめます。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが、「新学期」を描きました。
夏休みも終わり、いよいよ新学期。夜が明けた駅のホームで、「むっ。涙の匂い…!」。
夜廻り中だった猫の遠藤平蔵は、制服姿の男の子と1年ぶりに再会します。
男の子は「あの子が…」と視線を向けます。その先には、同じように制服姿で学生かばんを持って、じっとたたずむ女の子が。
遠藤は声をかけ、ホームのベンチに座って話を聴きます。
女の子は駅をあとにします。
それを見届けた男の子は「思いとどまった……」と、安心したように、すぅ…と消えていきました。
夏休み明けは、子どもが自ら命を絶つことが多いといわれます。
遠藤は「苦しむ子どもがいるのだ…」とつぶやくしかありませんでした。
国が2015年にまとめた「自殺対策白書」によると、過去約40年間で、18歳以下の自殺がもっとも多いのは9月1日でした。その日以外でも、学校の長い休みが明けた直後に増えています。
政府の自殺総合対策大綱にも、子どもの自殺が起きやすい場所での見守り活動や、SNSで自殺をほのめかす情報がないか確認するといった取り組みが盛り込まれています。
深谷さんは、「子どもは、自由にできる裁量が少ないですから、いじめに耐えながら絶望的な気持ちで学校に向かう子もいると思います」と心配しています。
「クラスや担任の固定をやめて、大学のように単位制にして、縛りを減らした方がいいのでは、と思います」
子どもたちが、悲しい気持ちで死ぬことを選ばないように――。
私たちにできることがないか、考えさせられます。
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。3月23日、講談社から単行本1、2を発売。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受けた。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。
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