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半世紀前の火災が今も燃え続ける…ゴーストタウンが伝える「教え」
ロンドンで起きた高層住宅の火災では、消火が追いつかず逃げ遅れた人が多数、取り残される惨事になりました。一方、アメリカには半世紀以上、燃え続けている火事があります。1962年に出火してから、ずっと燃えています。ペンシルベニア州のセントラリア。かつては炭鉱の町として栄えましたが、現在の住民は8人。いったい、何があったのでしょうか? 現地の地質学者に聞きました。
話を聞いたのは、「ペンシルベニア州廃坑再生機構環境保護局」の専門地質学者、ティモシー・オルタレス(Timothy Altares)さんです。
オルタレスさんは長年、専門家としてセントラリアの問題に関わってきました。
セントラリアはペンシルベニア州コロンビア郡の町で、19世紀後半から良質な無煙炭の産地として栄えました。面積は約0.6平方キロメートルで、最盛期には2700人が住んでいました。
ところが、1962年5月に町の様子を一変させる出来事が起きます。
セントラリアのゴミ集積所で、清掃員がゴミに火を付けたところ火災が発生。このゴミ集積所は、閉鎖された炭鉱を埋め立てた上に作られたものだったため、火は地下まで燃え広がり、やがて鎮火が不可能になりました。
メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)の直前のことでした。
出火してからしばらくは人が住み続けていましたが、1980年代、環境汚染や健康への影響を考え、連邦政府による退去勧告が出されました。そして、連邦政府は4200万ドルをかけて、地元の土地や建物を買収しました。
それでも少数の住民は移住をせず、2010年のアメリカの国勢調査では、10人の住民が確認されています。
オルタレスさんによると、2017年現在も5世帯8人が生活しているそうです。
住民が生きているかぎり、土地や建物の使用権を持ち続けるという合意書を、州政府と町は結んでいるそうです。ただし、120日間、町にいなければ、その権利は失効します。
町内には、5世帯が生活している家のほかに、町のシンボルである庁舎の建物も保存されているそうです。
オルタレスさんによると、現在、住んでいる住民は職があり、自分たちで生計を立てているそうです。
「かつては、建設業や政府の仕事をしていましたが、今では、定年になった住民もいます」
2002年には、セントラリアの郵便番号も抹消されました。2マイル(約3キロ)離れたアシュランド(Ashland)という町には郵便局があり、そこで関連サービスは利用できるそうです。
一度の火事によって住民が町を放棄せざるを得なくなったセントラリア。ロンドンの高層住宅の火災でも、安全なはずの家が突然、火に包まれ、犠牲者まで出てしまいました。
「われわれは過去から多くの経験と教訓を学びました」と話すオルタレスさん。「一度、火がついたら、それが偶然であれ、わざとであれ、大きな災難をもたらします」。
現在では、石炭くずにも細心の注意を払い、速やかな消火活動ができるよう備えているそうです。ペンシルベニア州では、セントラリアの火災の後、露天炭鉱を放置すること、そして、炭鉱の跡地をゴミ捨て場として使うことを法律で禁止しています。
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