地元
はっぴで神社をハッピーに 熊本の忘れられた被害を買い物で支援
使わなくなった「はっぴ」をリメイクした小物を売って、熊本の神社を救う。そんなプロジェクトがあります。熊本地震に対する支援は、熊本県外では「もう終わったこと」と思われがちですが、熊本県内には、まだ傷ついたままの神社が数多く残されています。寺社仏閣は思わぬ支援の盲点もあるのだとか。現在進行形の被害を、知ってください。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)
2016年4月に発生した熊本地震では、多くの被害が出ました。
寺社仏閣も例外ではありません。
重要文化財である阿蘇神社(阿蘇市)の楼門がぺちゃんこになった映像は、地震直後、その威力のすさまじさを伝えるものとして、覚えている方も多いのではないでしょうか。
熊本県神社庁によると、熊本県内にある約1300社の神社のうち、約600社が被害を受けたそうです。ただ、調査にすら入れない状況の神社もあり、今後も数は増える見込みです。
そうした現状を支援するべく、熊本市のイベント会社「フラッグス」が現在、クラウドファンディングに挑戦しています。お祭りなどで使うはっぴをリメイクした小物を売り、収益の一部を神社の復興支援に使ってもらう、というもの。はっぴで神社をハッピーにする、名付けて「はっぴ&HAPPYプロジェクト」です。
地震後、全国の神社から寄付として寄せられたはっぴを活用し、バッグや名刺入れ、ポーチ、ヘアゴムなどにリメイクしています。支援をすれば、金額に応じて、こうしたリメイク品がもらえます。
目標金額は86万円で、達成すれば、リメイク商品のカタログやウェブサイトをつくり、販売体制を整えるとのことです。
フラッグスは、「全国ふりかけグランプリ」など、熊本の活性化のためのイベントを数多く仕掛けてきた会社です。地震後は、人気漫画「ONE PIECE」の作者・尾田栄一郎さんが熊本県出身ということもあり、「ONE PIECE熊本復興プロジェクト」も手がけました。
今回、はっぴに注目したのは、社長の松江慎太郎さん(40)。
仕事で東南アジアに行く際、イベントではっぴを着ると「ほしい」と言われることが多かったため、地震後、海外でチャリティー販売するために、熊本県神社庁を通して全国の神社にはっぴの寄付を募ったところ、数百枚が寄せられました。ただ、寄せられたものの中には子ども用のはっぴも多く、海外で販売するには不向きなものもありました。
そこで、大人用の状態の良いものは海外で販売し、子ども用など残ったはっぴは、日用品にリメイクして売ることにしたそうです。
松江さんは言います。
「神社は地域の人たちの心のよりどころ。でも、それぞれの神社を支える氏子さん自身も被災していて、なかなか寄付も集まらない。全国の方に息の長い支援をしてもらえる仕組みが必要」
裁縫は、個人で裁縫の仕事を請け負う「縫い子さん」たちが担います。もちろん、熊本県内の縫い子さんです。縫い子さんの仕事も増え、熊本の経済活性にも一役かえる「一石二鳥作戦」です。
クラウドファンディングのページにサンプル品が掲載されていますが、はっぴの柄や紋をいかし、明るく縁起の良い小物に仕上がっています。
地震発生から1年がたち、熊本県外では「さすがにもう支援は必要ないだろう」と思われがちですが、そんなことはありません。
寺社仏閣は、資金面で他の施設とは違う問題を抱えているようです。
県内の被害実態を調べている熊本県神社庁の担当者は、
「氏子さんも被災者ですから、自分たちの生活再建で精いっぱい。熊本県内で寄付を募ってもそれは同じで、なかなかみなさん寄付をする余裕はない。自治体の支援も、『政教分離』の原則があるので、神社には出にくい。全国の方々に支援を募っていただく機会はとてもありがたい」
と話します。
熊本県内の神社では、1年経った今でも「崩れた建物を再建できないので通常の神事ができない」「結婚式の依頼を受けることができない」といった状態が、続いているそうです。
フラッグスのクラウドファンディングは、7月13日午後11時まで。
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