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売り上げ1兆9千億円 「独身の日」仕掛けたアリババCEOの「焦り」
中国では「独身の日(11月11日)」が、ネットショッピングのセールの日として知られています。たった1日で1兆9千億円に迫る売り上げが生まれます。この「独身の日」を考えた男が、アリババグループCEOのダニエル・チャン(張勇)氏(45)です。来日したチャン氏に、化け物イベントとなった「独身の日」の誕生秘話を聞きました。
チャン氏は上海財経大学で金融学を学んだ後、大手会計事務所「アーサー・アンダーセン」や「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」に入ります。
PwCでシニアマネジャーにまでなった後、オンラインゲーム会社のCFO(最高財務責任者)に転身します。
ゲーム会社の経営陣として活躍していた2007年、香港でアリババグループの幹部と知り合い、創業者で現会長のジャック・マー氏と面識を得ます。
「マー氏とは、とても気が合い、転職を持ちかけられた」というチャン氏。当時のアリババは、今ほど大きくありませんでしたが「未来は明るいと思った。すでに30億ドルの会社を経験したので、300億ドルの会社も体験したかった」と、転職を決意します。
2007年8月に、アリババグループの電子商取引サービス「タオバオマーケットプレイス」のCFOに就任します。
チャン氏は「妻もタオバオのファンだったので、転職に賛成してくれました(笑)」と振り返ります。
アリババグループに移ったチャン氏が考案したのが「独身の日」です。
「1」ばかりが並ぶ11月11日の「独身の日」を、世界最大規模のオンライン・ショッピング・イベントに仕立て上げました。
当時のチャン氏のミッションは電子商取引サイト「Tmall(Tモール)」の知名度アップでした。
「何かイベントを作り出さなければいけないという緊迫感があった」
まず、チャン氏は11月という時期に注目します。
「国慶節(建国記念日)のある10月と、クリスマスがある12月に挟まれた11月は、売り上げが落ち込みやすかった」
つぎは祝日探しです。欧米ではすでに「ブラック・フライデー」(感謝祭の翌日の金曜日)というショッピングの日がありますが、チャン氏は感謝祭が中国に馴染みがないと考え、11月11日という若者の間に流行っている「独身の日」に着目し、ビジネスイベントに仕上げたのです。
「(独身の日に)寂しさを感じたら、Tモールでショッピング」というキャッチコピーをぶつけ、それが見事にはまりました。
ちなみに、チャン氏の誕生日は1972年1月11日。生まれたときから「1」という数字に縁があったようです。
それにしても、1兆9千億円もの売り上げをたたき出すほど、人々を熱狂させた理由は何だったのでしょう?
チャン氏は、「独身の日」には「インターネットの原理」が働いていていると分析します。
「インターネットはボーダーレスで、透明性があり、効率がいい。ネットの特徴を利用すれば、消費者のニーズを探し、集めることができます。同じように商品を売りたいメーカーも、ネット上には膨大な数を集められる。『巨大な供給と巨大な需要』をうまくマッチングさせて、その一日に爆発させたのです」
チャン氏が重視するのは、あくまでデータです。
「アリババのサービスはECだけではありません。いろいろなサービスを展開しているビッグデータの会社なのです。データを活用することで、物流、医療、教育、エンターテインメントなど、いろんなサービスの提供が可能になります」
今回、来日した目的の一つは、アリババの本格的な日本進出です。日本以外にも東南アジアにも足場を築いています。
グローバルなネットワークを作り上げつつあるアリババ。2017年4月時点で、アリババの時価総額は2800億ドル(30兆円)を超えています。
「アリババを通して日本の企業を、中国以外のマーケットに紹介していきたい」と語るチャン氏。
「インターネットの原理を理解する企業こそ、今後のビジネスを制するのです」
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