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売り上げ1兆9千億円 「独身の日」仕掛けたアリババCEOの「焦り」

アリババ従業員の集合ウエディングに出席したCEOのダニエル・チャン氏=2017年5月10日、杭州
アリババ従業員の集合ウエディングに出席したCEOのダニエル・チャン氏=2017年5月10日、杭州 出典: ロイター

目次

 中国では「独身の日(11月11日)」が、ネットショッピングのセールの日として知られています。たった1日で1兆9千億円に迫る売り上げが生まれます。この「独身の日」を考えた男が、アリババグループCEOのダニエル・チャン(張勇)氏(45)です。来日したチャン氏に、化け物イベントとなった「独身の日」の誕生秘話を聞きました。

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単独インタビューを受けた際のダニエル・チャン氏
単独インタビューを受けた際のダニエル・チャン氏 出典: 永田篤史記者撮影

アリババに転職した理由 300億ドルの会社を体験したかった

 チャン氏は上海財経大学で金融学を学んだ後、大手会計事務所「アーサー・アンダーセン」や「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」に入ります。

 PwCでシニアマネジャーにまでなった後、オンラインゲーム会社のCFO(最高財務責任者)に転身します。

 ゲーム会社の経営陣として活躍していた2007年、香港でアリババグループの幹部と知り合い、創業者で現会長のジャック・マー氏と面識を得ます。

 「マー氏とは、とても気が合い、転職を持ちかけられた」というチャン氏。当時のアリババは、今ほど大きくありませんでしたが「未来は明るいと思った。すでに30億ドルの会社を経験したので、300億ドルの会社も体験したかった」と、転職を決意します。

 2007年8月に、アリババグループの電子商取引サービス「タオバオマーケットプレイス」のCFOに就任します。

 チャン氏は「妻もタオバオのファンだったので、転職に賛成してくれました(笑)」と振り返ります。

満面の笑みのジャック・マー氏(左)とダニエル・チャン氏=2015年11月11日、北京
満面の笑みのジャック・マー氏(左)とダニエル・チャン氏=2015年11月11日、北京 出典:ロイター

独身の日を考案 「寂しさを感じたら、ショッピングしなさい」

 アリババグループに移ったチャン氏が考案したのが「独身の日」です。

 「1」ばかりが並ぶ11月11日の「独身の日」を、世界最大規模のオンライン・ショッピング・イベントに仕立て上げました。

 当時のチャン氏のミッションは電子商取引サイト「Tmall(Tモール)」の知名度アップでした。

 「何かイベントを作り出さなければいけないという緊迫感があった」

11日午前0時から7分足らずで商戦の売上高が100億元(約1560億円)を超えたとスクリーンが伝えた=広東省深圳、2016年11月11日
11日午前0時から7分足らずで商戦の売上高が100億元(約1560億円)を超えたとスクリーンが伝えた=広東省深圳、2016年11月11日 出典: 朝日新聞社

 まず、チャン氏は11月という時期に注目します。

 「国慶節(建国記念日)のある10月と、クリスマスがある12月に挟まれた11月は、売り上げが落ち込みやすかった」

 つぎは祝日探しです。欧米ではすでに「ブラック・フライデー」(感謝祭の翌日の金曜日)というショッピングの日がありますが、チャン氏は感謝祭が中国に馴染みがないと考え、11月11日という若者の間に流行っている「独身の日」に着目し、ビジネスイベントに仕上げたのです。

 「(独身の日に)寂しさを感じたら、Tモールでショッピング」というキャッチコピーをぶつけ、それが見事にはまりました。

 ちなみに、チャン氏の誕生日は1972年1月11日。生まれたときから「1」という数字に縁があったようです。

たった1日で1207億元(約1兆9000万円)を売り上げた、中国「独身の日」。スクリーンの前に立つアリババCEOのダニエル・チャン氏=2016年11月12日、深セン
たった1日で1207億元(約1兆9000万円)を売り上げた、中国「独身の日」。スクリーンの前に立つアリババCEOのダニエル・チャン氏=2016年11月12日、深セン 出典: ロイター

「インターネットの原理」重視 アリババの本質はビッグデータ会社

 それにしても、1兆9千億円もの売り上げをたたき出すほど、人々を熱狂させた理由は何だったのでしょう?

 チャン氏は、「独身の日」には「インターネットの原理」が働いていていると分析します。

 「インターネットはボーダーレスで、透明性があり、効率がいい。ネットの特徴を利用すれば、消費者のニーズを探し、集めることができます。同じように商品を売りたいメーカーも、ネット上には膨大な数を集められる。『巨大な供給と巨大な需要』をうまくマッチングさせて、その一日に爆発させたのです」

グローバル・ショッピング・フェスティバルの発起記念イベントに参加するアリババの関係者たち=2016年5月10日、杭州
グローバル・ショッピング・フェスティバルの発起記念イベントに参加するアリババの関係者たち=2016年5月10日、杭州 出典:ロイター

 チャン氏が重視するのは、あくまでデータです。

 「アリババのサービスはECだけではありません。いろいろなサービスを展開しているビッグデータの会社なのです。データを活用することで、物流、医療、教育、エンターテインメントなど、いろんなサービスの提供が可能になります」

 今回、来日した目的の一つは、アリババの本格的な日本進出です。日本以外にも東南アジアにも足場を築いています。

 グローバルなネットワークを作り上げつつあるアリババ。2017年4月時点で、アリババの時価総額は2800億ドル(30兆円)を超えています。

 「アリババを通して日本の企業を、中国以外のマーケットに紹介していきたい」と語るチャン氏。

 「インターネットの原理を理解する企業こそ、今後のビジネスを制するのです」

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