話題
「糞便弾」飛び交うベネズエラ 国民がうんこ使ってまで怒る理由
南米のベネズエラでうんこが飛び交っています。大統領の圧政に反対する市民が、反政府デモの「武器」として使っているからです。なぜ糞便が使われるのかにも、ちゃんとした理由がありました。
ロイター通信によると、「糞便弾」はプラスチック製の容器に人間や動物のうんこを詰めたもの。作り方がスマホのアプリ「WhatsApp」(日本で言うLINE)を通じて広まったそうです。
ベネズエラの反政府デモは今年4月から激しさを増しています。政府は装甲車を出し、催涙ガスや放水で追い払っていますが、40人近い死者も出ています。銃撃されたり、装甲車にひかれたりしているようです。
「彼らが武器を使うなら、民衆は自分の持っているものを使うだけさ」。国会議員の1人はロイター通信に話しています。
火焰瓶を「モロトフ・カクテル」と呼ぶのになぞらえ、「プープートフ・カクテル」と呼ばれているそうです。(プープーは「うんこ」を意味する赤ちゃん言葉)
なぜ糞便なのか。報道によると、まず一つには、簡単に手に入るから。
また、治安部隊にけがを負わせず、屈辱を与えることができるから。石や火焰瓶を投げ込むデモ隊もいますが、こちらはあえてガラス瓶ではなく、プラスチックの容器を使うように呼びかけているそうです。
そして、もう一つ理由があります。
ベネズエラは産油国。地中に埋まっている石油の量はサウジアラビアより多く、世界最大です。もともとは南米でも豊かな国でした。
ところが、ここ数年で石油の値段が半分ほどに下がり、政府が有効な手立てをうたなかったため、急速に経済が悪化。
国民は食べ物や医薬品にも事欠き、飢え死にや病死が相次いでいます。
糞便弾がまき散らされれば、衛生状態は悪くなります。「だけど俺たちにはそれを洗うせっけんすらない」。そんなメッセージが込められているというのです。
マドゥロ大統領は、国民の不満を力で押さえ込もうとしています。
今年3月、ベネズエラの最高裁判所は、国会から立法権を奪う命令を出しました。立法権とは法律をつくる権利のことで、民主主義の根幹です。
ベネズエラの国会はマドゥロ氏に批判的な野党勢力が多数を占めています。最高裁判所はマドゥロ氏と親密だと言われています。
さすがに国際的な批判が集まり、この命令は後に取り消されました。ところが、マドゥロ氏は次に、新しい憲法をつくると言い出しました。中身はまだわかっていませんが、自分が権力を握り続けられるようにするつもりだと考えられています。
混乱はまだまだ続きそうです。
ちなみに、ロイター通信は糞便弾がはっきり見える写真も公開していて、中にはつくっている様子もありました。ビニール製の手袋をした人が、漬けものをつくるような大きいバケツから材料を取り出し、透明なプラスチック製のコップに詰めています。
掲載はやめておきます。
1/10枚