連載
「見た目問題」息子も…記者として、親として「心ない言葉」への葛藤
「見た目問題」って、知っていますか? 顔の変形やあざ、まひなど特徴的な外見のため、学校や恋愛、就職で困難に直面する問題のことを意味します。このテーマで取材を続けてきた私には、葛藤もあります。6歳の長男が当事者だからです。広く知ってもらいたいけど、当事者を傷つけるかもしれない……。悩みながら、発信しています。人は見た目が何%? 私たちは見た目に偏見を持たないと、自信を持って言えますか?
大学院生の男性(24)は、ほおやあごの骨が未発達のまま生まれました。トリーチャーコリンズ症候群と呼ばれる疾患で、垂れ下がった目が特徴です。
小学生のころ、「変な顔」「宇宙人」との言葉を浴びせられました。聴覚障害を併発し、コミュニケーションがうまくとれず、中学生の時は不登校に。
今も見知らぬ人にジロジロ見られたり、すれ違いざまにびっくりした表情をされたりすることがあるそうです。
「手術をすればよいのでは?」と思う人もいるかもしれません。男性も10回以上、手術を受けていますが、効果は限られているそうです。
男性は顔について「割り切っている」と語る一方、「悩みは死ぬまで続くだろう」と胸の内を明かしました。
話を聞きながら、私は胸が苦しくなりました。私の長男(6)が、当事者だからです。
長男は右顔の筋肉が未発達なまま生まれました。笑うと表情が左右非対称となり、右目はまばたきができません。
原因は、不明です。生まれた時には医師も症状を明確に説明できず、私は誰に相談すればいいかもわからず途方にくれました。
長男も自らの症状について意識し始めているようです。
長男と一緒に読んでいた本のストーリーの中で、江戸時代の「見せ物小屋」が出てきました。すると長男は「パパ、僕も将来、ここに行かないといけないの?」と聞いてきました。
私はどう答えるべきか戸惑い、「大丈夫だよ」とだけ返しました。公園で、知らない子から「変な顔で笑うなぁ」と言われたこともあります。
長男は今春、小学生になりました。もし周りから顔について何か言われたら、長男は何を思うだろうか。不安は尽きません。
今回取材した男性は「人々が思わず僕を見てしまうのは普通の反応だと思う。だからこそ僕が人混みの中を歩く意味がある。『世の中には、こんな人がいる』と知ってもらう機会になるから」と言います。
私は報道で発信することも、見た目問題を広く知ってもらう一助になると考えます。
一方、大きな葛藤もあります。報道によって、当事者を傷つける恐れがあるからです。実際、男性の記事について、ネット上に心ない言葉を書き込む人がいました。
当事者が生きやすい社会になるにはどうすればいいのか。記者として、親として、考え続けたいと思います。
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