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震災後に検索増えた「閖上」 現地の語り部「ずっと思ってて欲しい」
東日本大震災からまもなく6年。ヤフーの検索データからは、毎年、3月11日のたびに「風化」が検索されている様子がわかる。風化への危機感の表れともいえる動きがある一方、震災以降も検索され続けている地名がある。宮城県名取市の「閖上」(ゆりあげ)地区。地元では、震災の記憶を伝えようとする活動が今も続けられている。(KHB東日本放送・佐藤岳史)
門構えに水、という珍しい字は仙台藩の4代藩主の伊達綱村がつけたとされる。辞書にもあまり載っていない。地元の人々が苦笑交じりに「『どう書くの?どう読むの?』とよく言われた」という閖上が注目されたのは、まずその被害の大きさだ。
閖上地区を含む名取市沿岸部は震災による津波で大きな被害を受けた。犠牲者は900人を超え、住宅の被害も約1万4千件、木造住宅はほぼ全てが流された。
閖上で語り部活動を続ける長沼俊幸さん(54)は「テレビのニュースで一番最初に津波がごうごうと丘に押し寄せてくる映像が閖上で、だから閖上に一度訪れてみたかった、という人が多いですね」と話す。
一方、閖上は、震災直後の被害状況だけでなく、慰霊碑や仮設市場の「閖上さいかい市場」、街づくり計画、そして語り部たちの活動などがニュースになってきた。
昨年1年間でKHBが放送した閖上のニュースは44本。およそ週に1度、閖上の復興状況を伝えていることになる。
「閖上」という言葉と一緒に検索された言葉をみても「津波」や慰霊碑近くにある「日和山」、震災後いち早く常設の朝市店舗として復活した「メイプル館」など、震災に関連したキーワードが並ぶ。
語り部の長沼さんは風化を防ぎたいとの思いで、3年前、阪神・淡路大震災の追悼式に出席した。そこで見たのは、1995年当時に生まれていなかった子どもたちが多く参加している姿だった。
「震災を知らない人々、特に子どもたちに伝えることがやっぱり大事。子どもたちに閖上に来てもらって、この閖上で何が起きたのか。そして元々どういうところだったのか、見て聞いてもらいたいなと思ってます」
閖上が注目され多く検索されていますが、と質問すると長沼さんはこう答えた。
「注目はうれしいけど複雑でもある。あの悲劇からということだから。でも、ずっとね、思ってて欲しい気持ちはありますよ。ずーっと何年も閖上って言葉をみんなで見守って欲しい」
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