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中国の「厚切りジェイソン」その正体は? 痛烈な突っ込み、逆に人気

ネイティブレベルの中国語と、中国社会への鋭い突っ込みで人気の「阿福Thomas」=阿福さん提供
ネイティブレベルの中国語と、中国社会への鋭い突っ込みで人気の「阿福Thomas」=阿福さん提供

目次

 中国版ツイッターの微博で、ずけずけと中国批判をするアカウント「阿福Thomas」があります。実は「中の人」はドイツ人。辛口だけど的確な突っ込みは、まるで「厚切りジェイソン」です。いったい、どんな人が何のために発信しているのか。「中の人」に直撃してみました。

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名門「復旦大学」に留学、そのまま結婚

 「阿福Thomas」はドイツ人です。上海の名門大学「復旦大学」に留学し、そのまま上海の女性と結婚。現在も上海に住んでいます。

 阿福さんは「人気が上昇したのは2016年の3月でした」と振り返ります。

 「上海で結婚するまでのストーリーを動画にしてアップロードしたところ、自分の中国語が評判になったんです」

 動画では中国人の義父と義母を演じています。その時に話した中国語の標準語と上海の方言のうまさに、ネットユーザーが「演技がすごい」「上海方言満点など」と絶賛。動画の再生回数は数百万回を超え、フォロワーも37万人を超えています。

復旦大学の校門=ロイター
復旦大学の校門=ロイター

中国社会への辛口な突っ込み

 阿福さんの売りは語学だけはありません。

 中国の伝統文化や社会現象などへの辛口な突っ込みも人気です。その突っ込みは、中国人にとっても思い当たることが多いのです。

 最近公開したのは、高すぎる中国の不動産価格について。

「上海の不動産価格は、ロケットのように急上昇はしますが、なかなか落ちませんね……」
「不動産価格は超高いけど、義理の母は『いつマンションを買うの?』と目を光らせます」
「この前下見した物件は1平方メートル14万元(約230万円)!これじゃ、トイレも買えないよ!」
「知り合いには、都心のマンションが高いので地方から高速鉄道(新幹線)で通勤する人がいます。このままだったら、飛行機で通勤する人も現れるね!」

 これらの動画は微博だけでなく、youtubeやfacebookでも拡散し人気を集めました。

上海で建設中のマンション=2017年2月、ロイター
上海で建設中のマンション=2017年2月、ロイター

最後にぐっとくるメッセージ

 辛口の指摘が多い阿福さんですが「突っ込まれて落ち込む人を励ますために、明るい話も入れています」と明かします。

 不動産価格のネタの最後には、次のようなメッセージを入れました。

「今は『家=house』という単語を聞くと、マンションの価格や、ローンのことで、悩む人が少なくありません。でも、『家=home』は、もともと安心できる場所。愛する家族がそばにいて、好きな仕事があれば、人生は幸せのはず。『house』は人生の唯一の目標ではありません。家の本当の意義『home』を忘れないでほしい」

 そんな阿福さんのメッセージには「その通りです。共感した」「中国人より中国への突っ込みがうまい」などの反応が寄せられました。

新年に投稿された動画=阿福さん提供
新年に投稿された動画=阿福さん提供

「きつい職業」の人に花をプレゼント

 「ぐっとくる」メッセージは他にもあります。

他人と競い合って豪華にしがちな中国の結婚式について……

 

阿福さん

「賑やかでいいですが、結婚式は比べられるものではありません。自分が納得できる結婚式のほうが、もっといいですよー」

爆買いについて…

 

阿福さん

「中国製の製品にもいいものが増えたのに……そんなにいっぱい買わなくいいのでは?」

親からのプレッシャーに悩む受験者に対して……

 

阿福さん

「自分なりに頑張ればいいんだよ」

仕事がきついとされる職業(清掃員、配達員、レストランの従業員)に対して……

 

阿福さん

「人はみんな平等です(その後、清掃員と配達員にお花をプレゼント)」

正しすぎる文化論

 動画の構成も工夫されています。

 だいたい3分半くらいの長さの中で、最初の3分間はコミカルな突っ込みがメインです。そして、最後に30秒ぐらいにまじめな「メッセージ」が入ります。

 「メッセージ」では、わりと正しい意見を述べます。

 阿福さんは「ネガティブな情報より、ポジティブに生きていけるようなメッセージを発したい。そして、できるだけ周りの人々に幸せをもたらしたいです」と語ります。

 「完璧な国は存在しません。中国も完璧ではないですが、ドイツだってたくさんの問題を抱えています」と語る阿福さん。大事にしているのは、現地の人との交流です。

 「自分の国とは違うと思われている国でも、現地の人と話をして、その文化を理解したら、想像していたほど違いはないかもしれません。偏見で前進の足を止めないでほしい。世界は広い。自分の足で行ってみましょう」

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