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罰当たり?! 御朱印ネット転売、神社とお寺の悩みは?
数年前からブームになっている御朱印収集ですが最近、ネットで転売する人たちが増え、神社やお寺が悩んでいます。御朱印とは何か、何が悩みなのか。神職や僧侶に伺いました。
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数年前からブームになっている御朱印収集ですが最近、ネットで転売する人たちが増え、神社やお寺が悩んでいます。御朱印とは何か、何が悩みなのか。神職や僧侶に伺いました。
ここ数年、神社やお寺が参拝者に発行する「御朱印」の収集がブームになっています。朱色のハンコに神職や僧侶が筆を入れた御朱印は、ブームが過熱したためかインターネットで転売されるケースが相次ぎ、神職や僧侶が対応に苦慮しています。なんとなく罰当たりな感じがするネット転売。何がどう困るのか。神社やお寺にお話を伺いました。
「2度と同じものはいただけません」
Yahooのネットオークションサイトに出された御朱印の売り文句は、季節限定でもう同じものは発行されないと強調していました。
2月2日、「御朱印」で検索すると、約1200件の出品がヒット。過去120日間のオークション結果を検索すると、最高額は23種類の御朱印が押された冊子で、10万円で落札されていました。
祭り好きな江戸っ子の晴れの場、三社祭で有名な東京・浅草の浅草神社も、転売に悩む神社の一つです。1月末に訪ねると、平日にもかかわらず、御朱印を押してもらうための手帳、御朱印帳を手にした愛好家が次々とお参りに来ていました。
「最近では平日でも100~200人の方が御朱印をもらいに来られます。十数年前なら週末でも数人でしたが」と、浅草神社広報担当の高橋尚子さんが教えてくれました。
御朱印をもらう人が増えたのは5~6年前から。人気に応えようと、お正月や5月の三社祭には意匠をこらした期間限定の御朱印も発行するようになりました。
ところが2年ほど前、その期間限定の御朱印がネットオークションで売られていることに気づきました。
最初は「一過性のものかな」と静観していましたが、収まりません。そこで昨秋の新嘗祭では、1枚紙に押した期間限定御朱印の発行は1人1枚に限り、それ以上は御朱印帳に押してもらう形式に切り替え、転売禁止も紙に書いて張り出しました。
その直後、ネットを調べると、その限定御朱印を押した御朱印帳が2万円で転売されていたそうです。そこで今年の正月の期間限定御朱印からは更に条件を絞り、1枚紙での発行は取りやめに。その結果、御朱印帳を持っていなかった参拝者に、2時間も並んでもらったにもかかわらず御朱印を渡せない、という事態もあったそうです。
さて、ネット転売ですが、神社にとって何が困るのでしょう?
高橋さんによると、御朱印は「神様にご参拝された証しで、神様と参拝者の関係を示すもの」です。お金目当てで受け取り、転売するのは「神様の尊厳を守ることに背く行為です」と批判しました。
同じく東京の文京区にある牛天神北野神社も昨夏から、ネット転売対策のために1枚紙で発行する御朱印をやめました。
権禰宜の石寺光弘さんは「ご参拝の皆様に神様への崇敬の念を抱いて頂くよう心を込めてお書きしております。御朱印を転売される方がいらっしゃいますが、御朱印の意味を深くご理解いただきたいと思います」と話します。
転売に心を痛めるのはお寺も同じです。
京都市伏見区にあるお寺は、幕末の戦乱による戦没者供養のため、郵送での御朱印発行に応じてきました。発行料は慰霊碑を建てるなど、供養のために使っています。
ですが、ネット転売が発覚し、昨年9月からはホームページにネット転売した人には「申し込みがあってもお送りは一切しません」と明記しました。
実際に転売者が判明し、申し込みを断ったこともあります。このお寺の31歳の住職は「そういうことをするのは気が重いです。ですが、戦没者を弔った証しを売りに出されるのは悲しい。供養する気持ちを踏みにじられる思いです」と語りました。
全国の神社が参加する団体、神社本庁によると、御朱印は奈良・平安時代、神社仏閣に経典を納めた証文として始まったと考えられ、その後、参拝の記念として発行されるようになりました。ただ、神社ごとに御朱印の位置づけは違うそうです。
「御朱印は宗教側が広めたのではなく、お遍路の流行などを通じて、参拝者の側の求めから広がったという文化的なものだからです」と、教化広報センターの砥山洸一さんは言います。
現在、神社本庁は、ネット転売の対応を神社に要請はしていません。「まだ、そこまで状況は混乱していない」というのが理由ですが、「対応すべき状況になっても、御朱印の位置づけは神社それぞれなので、難しい作業になると思います」と砥山さんは話しています。
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