MENU CLOSE

エンタメ

「石原さとみの香り」を現実化! 4D映画、進化とこだわりの制作現場

映画館と同じいすに座り、のべ約200時間をかけて動きを調整する=ダイナモアミューズメント
映画館と同じいすに座り、のべ約200時間をかけて動きを調整する=ダイナモアミューズメント

目次

 大ヒット映画「シン・ゴジラ」をめぐり、ある噂がネットを駆け巡りました。座席が動いたり、水しぶきが飛んだりする体感型の「4D上映」を見ると石原さとみさんの登場シーンで「いい香りがする」というのです。実はこの噂がきっかけで、本当に「美女が出たらいい香り」を実現した映画がありました。広まりつつある4D上映の制作現場を取材しました。

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

同じ映画「100回は観る」

 オフィスの一室に、映画館と同じ4D上映用のいすが4つ並んでいました。背もたれには「MX4D(R)」の文字。

 目の前の大型ディスプレイに巨大ダコが現れ、潜水艦にからみついた瞬間、激しくいすが震えました。まるで自分が潜水艦の中にいるような臨場感です。

 見ると、一番奥の席に男性プログラマーが座り、パソコンを操作しています。「プログラマー自身が体感しながら、座席の動きを調整しています。2時間の映画なら、完成までに100回は観ますね」。ダイナモアミューズメントの小川直樹・企画営業部長が言います。

 4D映画は米企業が開発した「MX4D」と、韓国企業が開発した「4DX」の2方式が普及しています。ダイナモアミューズメントは、MX4Dの国内販売総代理店であるソニービジネスソリューションから、演出を委託された日本唯一の企業です。

 「シン・ゴジラ」や「ONE PIECE FILM GOLD」など邦画作品のMX4D版を演出してきました。

座席の上下左右の動きを、プログラマーが体感しながら調整する=ダイナモアミューズメント
座席の上下左右の動きを、プログラマーが体感しながら調整する=ダイナモアミューズメント

「シン・ゴジラ」はメリハリ重視

 同社は10年以上前から、遊園地向け体感シアターの演出を手がけてきました。ただ、体感シアターの上映は10分程度。座席を揺らし続けても観客は楽しめます。一方で映画は2時間ほどあり、演出には別のノウハウが必要でした。

 小川さんは「大事なのはメリハリ。それが最も生きたのがシン・ゴジラだった」と振り返ります。シン・ゴジラは、会議シーンと戦闘シーンが交互に登場します。そこで小川さんたちは配給会社の東宝に、4D上映でも「静と動」を生かすことを提案したといいます。

 「会議のシーンは何が起きても、ほぼ座席を動かしませんでした」。その代わり、ゴジラの登場シーンでは、攻撃に合わせ座席を激しく動かしました。ゴジラの周りを自衛隊のヘリが旋回するシーンでは、座席の向きを微妙に変えていくなど、映画のリアルさに負けないよう細部にもこだわりました。

座席の微妙な振動を調整するスペース。いすの上に振動する機材を置いている
座席の微妙な振動を調整するスペース。いすの上に振動する機材を置いている

「石原さとみの香り」がヒント

 MX4Dはほこりや土のような香りを出したり、ミスト、ストロボ、煙などを使うことも可能です。

 ただ、これらは印象に残る分、使いどころが難しいといいます。その中で新たな使い方を生んだのが「石原さとみの香り」の噂でした。

 実際には石原さとみのシーンで香りは流していません。しかし、小川さんは「そんなに求められているならと、その後の映画では女性キャラの登場シーンで良い香りを流すことを採用しました」と明かします。

 2016年秋に4D上映を始めた「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」では、人気キャラの「ブラック・マジシャン・ガール」が登場した瞬間にローズの香りを流しています。ツイッターなどで一気に情報が広がり、話題を呼びました。

 細かいノウハウも蓄積しています。集団の戦闘シーンでは、味方が攻撃されたときだけ座席を揺らします。「敵が攻撃を受けたときも揺らしてしまうと『主観』がぶれて、観客が感情移入できなくなることが分かってきました」。

 小川さんは「4D上映の演出は映画の内容をなぞるだけではありません。工夫のしがいがたくさんあるんです」と話します。

MX4Dの座席に入れる「香りの元」
MX4Dの座席に入れる「香りの元」

過去の名作に新たな魅力

 こうして地道に演出をつけるには、約1カ月半が必要です。しかし邦画は完成がギリギリの場合が多く、1カ月程度しか時間がないことも多いといいます。

 そこで、新たに期待されているのが過去の名作の4D上映です。時間が確保でき、作り込んだ激しい演出も可能。今月20日からは最初の作品として「ルパン三世 カリオストロの城」MX4D版の上映が始まります。

 新作映画が数カ月後には家庭で見られるようになった今、映画館は新たな魅力作りを迫られています。MX4Dを導入しているTOHOシネマズの担当者は「4D上映で、映画館でしか体験できない価値を提供していきたい」としています。

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます