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津波「その時」何を検索? 福島沖地震のデータで見えた“心理”
東日本大震災を経験した被災地では、実際に津波警報が出された時、どのような行動を取ったのか。11月22日の福島沖地震後、宮城県内で検索された語句をインターネット検索大手ヤフーが分析したところ、津波注意報と津波警報とで検索内容に大きな違いが出ていた。4月の熊本地震や、12月28日の茨城での震度6弱など、大地震の多かった2016年。「今後の警報のあり方に大いに参考になる」と専門家が注目する「その時」の動きを振り返る。(KHB東日本放送・佐藤岳史)
地震は11月22日午前5時59分に起きた。
宮城県には6時2分に津波注意報が発表されたが、その2時間後、仙台港で1.4mの津波が観測されると、気象庁は津波警報に引き上げた。
このとき、「津波」という単語の検索数は午前8時9分の津波警報を機に7倍以上に跳ね上がった。そして「警報前」と「警報後」で検索する単語にも変化が見られた。
警報後に上位に入ってきた特徴的なキーワードが「避難」そして「エリア」だ。この二つの単語は一緒に検索されることも多く、どこに避難するのか、人々が具体的な行動を意識し始めた様子が浮かぶ。
この警報と注意報での意識の違いは、現地で取材したKHB東日本放送クルーの取材でも見て取れた。
午前8時半ごろ、KHBは仙台市の指定避難所である岡田小学校を取材。防災無線が津波警報を告げる中、続々と住民が避難してきた。「警報が鳴ったから、ご飯をそのままにして来た」と話す人もいた。
一方で、9時46分に津波警報が解除され、注意報に切り替わると約160人いた住民はほとんどが帰宅した。
津波注意報と津波警報の違いは、予想される津波の高さの違いだ。津波注意報は「1m以下」、津波警報は「1~3m」、「3mより高い」と予想されると大津波警報が発表される。
しかし、実際の津波の高さが予想より高かった、という事例は珍しくない。今回の福島沖地震でも、宮城県内は当初は注意報だったが、実際に津波が来てから警報に“修正”した。東日本大震災でも、当初の予想よりはるかに高い津波が沿岸を襲った。
東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授は、「津波警報や注意報は人々の安全を守るための情報。今回の分析でわかった警報と注意報での反応の違いは、今後の警報のあり方に大いに参考になる」と話す。
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KHBは、東日本大震災の教訓は生かされたのか、という視点でもビッグデータを検証。特集は「スーパーJチャンネルみやぎ2016」(30日午後3時56~、宮城ローカル)で放送する。
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