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九州の相撲ファンをうならせた…石浦って何者? 最軽量で敢闘賞
大相撲九州場所で新入幕ながら敢闘賞を受賞した幕内最軽量の石浦(宮城野部屋)。「立ち合いを強く」。不器用なまでに貫き通した信念で破竹の10連勝を成し遂げました。離乳食はちゃんこだったという子ども時代。名門日大相撲部に入るも挫折、一時、オーストラリアで過ごしたことも。九州の相撲ファンを魅了した石浦の素顔に迫ります。
九州場所11日目の23日、2日目から9連勝で迎えた石浦の相手は妙義龍でした。元関脇で、金星2つを挙げたこともある実力者です。
鳥取出身の石浦。この春まで鳥取に勤務していた私は、53年ぶりの郷土出身の関取となった石浦を2014年の春から取材し、ほぼ全ての取り組みを見てきました。
妙義龍相手に石浦は立ち合いで素早く回しをとると、一気に懐に入って寄り倒し。館内から大歓声を浴びる石浦を、私は信じられない思いで見つめていました。
「まさか実力者の妙義龍を倒す日がくるとは」と感慨にふけると同時に、かつて石浦が語ってくれた言葉を思い出しました。
石浦は高校相撲の強豪・鳥取城北高校出身です。父親は相撲部総監督の石浦外喜義さん。生まれた当時、自宅の隣は相撲部の寮で、離乳食はちゃんこという環境でした。
新十両に昇進してから3カ月たった昨年の6月に取材したときのこと。石浦は、父・外喜義さんの教えを思い出していました。
「最初から決めているやつが強い。おやじの言葉の意味が最近わかってきた」
相手の出方には惑わされず、決めたことを貫き通すことが大切――。そういう意味でした。
直後の昨夏の名古屋場所は6勝9敗と十両昇進後、初めて負け越し。9月の秋場所でも中盤まで苦戦しました。
当時、十両以上では最軽量の小兵だったため、相撲関係者からは「立ち合いから変化したり、斜めから攻めたりするべきだ」という声も上がりました。
ただ、石浦は大型力士と当たる恐怖と戦いながら、当たり続けました。そして父親の言葉を信じ、目先の勝負にこだわらず、不器用なまでにまっすぐ向かい続けました。
なぜ、そこまで立ち合いにこだわるのか。
「立ち合いが弱いと相手に様子を見られ、相手ペースになってしまう。立ち合いを強くすれば変化したり、もぐったりも決められる」
そして新入幕を果たした九州場所、磨いてきた立ち合いが光り、幕内力士を翻弄。妙義龍にも土をつけるなど、これまでの取り組みが花開きました。
快進撃だった九州場所について「手応えはあるけど、もう一歩足りない」と語る石浦。さらに立ち合いを強くすることを目標にかかげました。
「10連勝はたまたまです。ただ、やってきたことは間違ってなかった。立ち合いでまっすぐ当たって、そのまま持っていけるようにしたい」
石浦の快進撃に、郷土のファンも盛り上がっています。
平井伸治知事は「石浦関、敢闘賞おめでとう。鳥取県中部地震復興の鐘を鳴らしてくれてありがとう。小さくても勝てる鳥取魂を実証してくれた。更に上を目指す挑戦を県民みんなで応援していく」とのコメントを発表しました。
日大相撲部時代はレギュラーを奪われ、内臓の病気にもかかり、挫折を味わいました。卒業後は、すぐに入門せず、オーストラリアに語学留学のため飛びました。
異国の地で、インターネットの相撲中継を見て「やっぱり自分は相撲が好きだし、自分には相撲しかない」と悟ったといいます。帰国後、横綱白鵬のいる宮城野部屋に入門し、相撲を磨いてきました。
「オーストラリア時代は気持ちがふわふわしていた。あの時の決心から始まった」
取材では自分の弱さも率直に語る姿が印象的な石浦。どこまでもまっすぐな熱き小兵力士は、来場所以降も、これまでにない相撲の魅力を見せてくれそうです。
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