話題
過労自殺「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 漫画作者に聞く
電通の女性新入社員(当時24)が過労自殺し労災認定された問題を受け、ある女性イラストレーターが漫画を描きました。
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電通の女性新入社員(当時24)が過労自殺し労災認定された問題を受け、ある女性イラストレーターが漫画を描きました。
電通の女性新入社員(当時24)が過労自殺し労災認定された問題を受け、ある女性イラストレーターが漫画を描きました。「死ぬくらいなら辞めれば」というネット上の声に対し、自らの経験をもとに意見する内容で、多くの共感を呼んでいます。漫画に込めた思いを作者に聞きました。
話題になっているのは、25日にツイッター投稿された漫画。2回に分けて4ページずつ投稿されていて、いずれもリツイートは12万を超えています。
広告制作会社でデザイナーとして働いていた当時、100時間近い残業続きで、毎晩終電で帰っていた彼女。死にたいと思ったことはなかったのに、ホームに電車が近づく中、ふと「いま一歩踏み出せば、明日は会社に行かなくていい」と思った瞬間、足が前に出たそうです。
踏みとどまって電車に乗った後、「私、いま何考えたんだろう」と正気に戻り、転職したという内容です。
漫画の中では、過労死に至る過程も描かれています。
両側を崖に挟まれた細い道。そこにはいくつもの分かれ道があり、「転職」「退職」「サボる」「寝る」などの行き先が見えます。
そんな中で「親に心配かけたくない」「先輩や同僚はもっとがんばっている」という思いで、分かれ道を次々に塗りつぶしていきます。
長時間労働で思考力がなくなり、上司らからのハラスメントが傷に。視界の先には、傾斜の急な上り坂しか見えません。
何も見えず、何も聞こえず、痛みだけを感じる中、「進まなきゃ」と前を向いた瞬間、よろめいて崖から転落するという描写です。
漫画では、追い詰められる前の対処法も描かれており、最後は「世界は本当は広いのです 忘れないでください」と結ばれています。
描いたのはフリーのイラストレーター・汐街コナさん。かつて広告制作会社でデザイナーをしていたころの経験をもとに描いたそうです。執筆に至った経緯をコナさんに聞きました。
――描こうと思ったきっかけは
「過労死や過労自殺のニュースが出ると、『死ぬくらいなら辞めればいいのに』という意見が必ず出ます。『それが不可能な状況になった人が死ぬ』ということを伝えたいと思っていました。電通で起こった件があまりに悲しくて……。早く描かないといけないと思いました」
――ご自身の経験が反映されているのですか
「電車のエピソードは自分の体験そのままです。その後の展開については、私は漫画のような状態にはなりませんでしたが、視界が狭まり、暗くなり、思考力がなくなっていくところまでは体験しました。それで、自死も含めて過労死にいたる人というのは、あのような状況ではないかと想定して描きました」
――当時の仕事は
「中小の広告制作会社でデザイナーをしていました。『100時間程度の残業は残業に入らない』という業界で、承知の上で入ったのですが、思ったより耐えられませんでした。転職後は事務職になり、家庭の事情で退職。今は主婦兼フリーランスのイラストレーターとして少しずつ仕事をしている状態です」
――崖や道などの表現だけでなく、セリフにも現実感があります
「描きたいことを一番わかりやすくできるようにした結果です」
――描く上で心がけた点は
「あまり長くなりすぎないように心がけました。ツイッターで一度に添付できる画像が4枚までだったと思うので、投稿2回分の8枚におさまるようにしました」
――最も伝えたかったメッセージは
「過労死への道は、途中からは本人の意思とは関係なくつながってしまう、ということです。だから、早い段階での対処が必要です。本人も周囲も、この点は知っておいたほうが良いと思いました」
――多くの反響が寄せられています
「反響の量にも驚きましたが、『同じ状況を経験した・経験している』という反応が、思ったよりずっと多かったです。正直、『こんなことになる人がいるの?』というような感想が多いと思っていました。みんな、頑張り過ぎています」
――この漫画を読んだ人や、これから読んでみたいという人に向けてメッセージを
「こういうこともあるんだと、どこか片隅にでも記憶してもらえたらと思います」
◇ ◇ ◇
書籍などを中心にイラスト関係の仕事しているコナさん。ホームページでは、今回とは違った雰囲気の作品が掲載されています。
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