グルメ
麺王国ベトナムのカップ麺を食べ尽くし…各社の世界戦略を味わう
世界4位の即席麺需要を誇るベトナム。
世界ラーメン協会(World Instant Noodles Association)によると、2015年のベトナムの即席麺総需要は48億食でした。ベトナムの人口は約9170万人で、1人あたり年間50食以上食べた計算になります。1位は中国(香港を含む)で404億3千万食で、2位のインドネシアは132億食、3位は日本で55億4千万食でした。
そのベトナムでいま、日本を含む食品メーカーがカップ麺の売り込みを強化しています。
都市部のホーチミンやハノイで増えているコンビニエンスストアや、大型ショッピングセンターの食品売り場を訪ねると、確かに棚にはカップ麺がずらりと並んでいました。
商品のなかには、日清食品ホールディングスの「カップヌードル」など日本でもおなじみの商品もあります。
ただ、大半は「なんだこれ?」という商品でした。商品名も説明書きもベトナム語表記で、どんな味なのかさっぱりわかりません。
ベトナムのカップ麺、一体どんな味なんでしょうか。実際に食べてみることにしました。
首都ハノイの中心部、旅行者が集う旧市街のコンビニエンスストア。棚に並んだカップ麺や袋麺を、片っ端からカゴに放り込みました。
レジでは、女性従業員同士が「この日本人、正気?」とばかりに目を見合わせていました。
そうして集めた、カップ麺計14種類、袋麺計9種類。お土産用の袋に入れ、日本へと持ち帰りました。
まずは、現地メーカーが売り出しているカップ麺を食べてみることにしました。ひとつのシリーズに、複数の味がある商品が多いようです。カップの大きさは日本のカップヌードルなどとほぼ同じですが、ふたを開けるとびっくり。かやくや調味料とともに、折り畳み式のプラスチック製フォークが入っています。
商品の側面に記された「作り方」もベトナム語表記で、読みとれません。かろうじて数字の「3」だけはわかるので、とりあえずお湯を入れて3分待ってみることにしました。
できあがりは、日本の製品とほぼ変わりません。味は、酸味や辛みが効いた魚介風、牛や鶏のだし風など、商品によって様々です。どれも魚醬や香草の香りが効いており、ベトナムの屋台やレストランで食べた料理を思い出します。ラーメンだけでなく、米麺を使ったベトナムの国民食「フォー」のカップ麺もあります。
次に手にしたのは、韓国メーカーの商品。韓国の国旗風のマークをあしらい、「Kimchi」と書かれた真っ赤なパッケージで、一目で韓国のものだとわかります。この商品にも、折り畳み式のフォークが入っていました。ベトナムではこれがスタンダードなようです。
日本でもなじみ深い「辛ラーメン」のように、やはり辛いのでしょうか。麺をすすってみると、舌への刺激は想像したほどではありませんでした。牛だし風の味付けをベースに、キムチのような辛さがほんのり。ベトナム人の味覚にあわせたのでしょうか。
とはいえ、パッケージだけでなく、味も正真正銘の韓国風。東南アジアでもぶれない。現地には多くの韓国企業が進出しており、そこで働く韓国人駐在員をターゲットにしているのかもしれません。
日本メーカーの商品はどうなのでしょうか。ベトナムの即席麺市場でシェア5割強を誇るのが、大阪に本社を置くエースコックの現地法人「エースコックベトナム」です。エースコックベトナムは7月から、新たなカップ麺「ハンディハオハオ」を売り始めました。
この商品は、同社が2000年に発売し、「ベトナムでハオハオを知らない人はいない」と言われるほど爆発的に売れた袋麺「ハオハオ」を、カップ麺向けに進化させたものだといいます。ハンディハオハオの売りは、充実したかやくの量です。
ベトナムで売られている袋麺やカップ麺は、かやくがほとんど入っていなかったり、量がわずかだったりと、あまり重視されてきませんでした。そのため、ハンディハオハオはエビや肉などかやくを増やし、食べ応えを意識したそうです。価格は8千ドン(約36円)と、3500ドン(約16円)程度の袋麺より割高です。
実際に、袋麺とカップ麺とを食べ比べてみました。袋麺はまさに「ベトナム風」という印象で、魚醬の香りが強く、調味油が効いています。カップ麺も袋麺のハオハオのスタイルを踏襲し、味はベトナム家庭料理風ですが、比較的マイルドに感じられました。これは日本でも売れそうです。
エースコックベトナムは他にも、現地で様々な袋麺やカップ麺を売っています。ベトナムの国民食「フォー」のほか、和風の「うどん」もありました。エースコックベトナムは今後、袋麺と比べて単価の高いカップ麺を売り込むことで、売り上げを高める考えだそうです。
海外向けには、欧米を中心にヘルシーな印象を持たれている米麺を売り込むそうです。
日清食品ホールディングスは7月、「カップヌードル」をベトナムで売り始めました。店頭では、日本でもなじみ深い「シーフード」のほか、タイ料理「トムヤンクン」味を見つけました。
日清食品はインドなどの「BRICs」など、世界でカップヌードルの普及をめざしています。エースコックのように現地化はせず、「世界標準」で勝負するといいます。実際に食べてみました。確かに、味も具材の量も、日本のカップヌードルと変わりません。
ベトナムでは経済成長に伴い、中間層が増えています。従来の袋麺では満足できなくなったひとたちが、より便利で付加価値の高いカップ麺を求めているそうです。
かつて大ヒットした袋麺「ハオハオ」のように、この中からベトナムのカップ麺市場を変える商品が出てくるかもしれません。
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