連載
#3 夜廻り猫
心配いらんから…公衆電話でついたうそ「泣ける猫マンガ」が描く貧困
「心配いらんから それじゃ」。夜の電話ボックスでうつむきながら受話器を置く男性。深刻な「ワーキングプア」について、マンガ家の深谷かほるさんが公衆電話を舞台に描きました。
見かけることの少なくなった公衆電話ボックス。
ひとりのサラリーマンが、ふるさとの母に電話をかけています。
「紹介したい人?そんなんまだだよ うんうん頑張る 心配いらんから それじゃ」
こんなに働き疲れているのに、スマホも持っていない。
それでも、母に心配かけさせまいと、最後の100円を使って電話をかけ、うそをつきます。
深谷かほるさんは、働いても働いても、困窮してしまう若者を創作で描きました。
この「ワーキングプア」の問題は、大きく広がっています。
それでも若者は、公衆電話でふるさとの母親にうそをつきます。
深谷さんは「人が長く使ってきた古いものには、魂が宿るような気がします。特に公衆電話は、人の切実な思いを、並の人間よりたくさん聞いてきただろうな」と話します。
「公衆電話で、人は、本当のことを言ったり嘘を言ったりしながら生きているな、と。黙って人の話を聞き、お呼びがかからなくなっても〝いつでもここにいる〟というたたずまいに、しみじみするのです」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かほる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。昨年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始め、6月30日に単行本を発売。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。
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