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「私にとって、タトゥーは思い出」LiLiCoが身体に刻んだ人生
「人生のページをめくる度にタトゥーを入れる」という、タレントのLiLiCoさん。タトゥーの魅力や法規制への思いを聞きました。
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「人生のページをめくる度にタトゥーを入れる」という、タレントのLiLiCoさん。タトゥーの魅力や法規制への思いを聞きました。
ファッションや伝統文化として、世界中で親しまれている刺青・タトゥー。一方、日本では恐怖感や嫌悪感を抱く人も少なくありません。近年、医師以外がタトゥーを入れることを禁じた医師法による彫り師の摘発が相次ぎ、タトゥーをめぐる議論が活発化しています。タトゥーを愛好するタレントのLiLiCoさんに、思いを聞きました。
――最初にタトゥーを入れたのはいつですか。
28歳の頃、右手のハートを友達に入れてもらいました。その友達がド素人だったから、加減がわかってなくて、すごく痛かったですね(笑)。
――意外と遅いですね。
「若気の至り」みたいな感じで、勢いで入れちゃうのは嫌なんです。大人になって、ちゃんと考えてから入れたい。故郷のスウェーデンでは入れている人が結構多くて、子どもの頃からカッコイイなあと思ってました。
ちゃんと彫り師さんに入れてもらったのは、30歳ぐらいの時。手首と肩ですね。それからしばらくなかったんですけど、38歳から42歳にかけて結構入れました。いま、全身で13個ぐらい入ってます。
――タトゥーを入れるキッカケは。
2001年に「王様のブランチ」への出演が決まった時は、ここから羽ばたきたいと思って、希望の羽根を入れました。
太ももに入っているのは、写真家のレスリー・キーさんのサインをタトゥーにしたもの。いつか撮ってもらいたいと夢見続けて、初めて写真集に参加させていただいた時にサインしてくださったのがコレです。
逆に、嫌なことがあって入れることもありますね。恋人にフラれたり、思うように仕事が入ってこなかったり。物理的に痛い思いをすることで、心が癒やされる。頑張ろうか、と思えるんです。
――タトゥーで負の感情をリセットする?
そうですね。刻み込んで消すという感覚と、刻み込んで覚えおくという感覚と…。恋人にフラれて、チョコをたくさん食べる人もいれば、髪の毛を切る人もいるでしょ。私のなかでは、それがタトゥーなだけ。泣いて、泣いて、ガリガリッと入れてもらって。そこからもう、その男のことは忘れてますね。でも、(胸に手を当てて)ここにはある、っていう。
――たとえるなら、肉体記憶のような。
そう、肉体記憶! あったあった、あんなこと…みたいな。過去の男の人も、まさか私の身体にハートのタトゥーとして現れているとは知るよしもないでしょうけど(笑)。そうそう、この腰の翼は離婚した時に入れたんです。もう、やったー!と思って。「自由の羽根」ですよ。
――どんなところにタトゥーの魅力を感じますか。
タトゥーってすごい芸術。陰の入れ方だったり、色のグラデーションだったり…。スウェーデンのタトゥー・コンベンションに行った時、親子連れが大勢いました。親がたくさんタトゥーを入れていて、子どももタトゥー・シールをしてるんですね。
タトゥーに関して、「親からもらった身体に何をするんだ!」という人もいるけど、私は親からもらった身体をきれいに飾りたい。自分の身体は自分のものですから。
――日本では、タトゥー・刺青に対して悪いイメージを抱いている人も多いです。
ヤクザが入れるという文化があったから、そういうイメージになったんでしょうけど、今はもう時代が違います。タトゥーを入れている=悪い人、クスリをやっている人、というわけではありません。
ジョニー・デップやアンジェリーナ・ジョリーもタトゥーを入れているけど、誰も何も言いませんよね。サッカーのネイマールやベッカムもそう。海外のヒーローの人たちはいいけど、日本人だとダメというのは少し変ではないでしょうか。
――タトゥーとTPOについてはどう考えますか。
TPOは大事です。特にテレビは誰がみているかわかりませんから、ファンデーションを塗ったり、時計をつけたりして隠しています。イヤな思いをされる方がいるといけないので。テレビ以外でも、目上の方とお食事する時には、ジャケットを着て隠すようにしてますね。
――医師法では医師資格を持たずにタトゥーを入れることが禁じられており、彫り師の摘発が相次いでいます。
それは非常に残念です。なぜなら日本の彫り師は一番うまいんですよ。スウェーデンや米国のタトゥーも見てきましたけど、日本の彫り師は絵のセンスや技術力がすごい。なぜ、摘発されてしまうのでしょうか。
――警察は感染症などの健康被害を懸念していますね。針の使いまわしだとか、インクの成分の影響だとか。
警察もそこまで本気でやる気はないんじゃないかな。もしそうだとしたら、みんないっぺんに逮捕されちゃいますよ。
――彫り師の側は、医師とは別に単独のライセンス制度を創設するよう求めています。
いいんじゃないですか。お医者さんと彫り師は、まったく別物ですよね。これからオリンピックに向けて外国人の観光客も増えていきますし、警察やお医者さんではなく、タトゥー・アーティスト自身が、何が必要なのかを考えていかないと。
「難しい問題」で片付けず、彫り師みんなで話し合う。針を使うことが問題だというのであれば、「こういうルールでいかがですか」というアイデアを具体的にまとめる。「何とかしなきゃって」って言ってるだけじゃなくて、国会議員に会ってみるとか。コミュニケーションが大切だと思います。
――これからタトゥーを入れようか、迷っている人に言えることは。
悩んでいるなら、入れない方がいい。やっぱり一生モノですから。仮に法律が変わってタトゥー・アーティストという職業が認められたとしても、人の心は簡単に変わりません。目指す職業によっては、見えないところに入れた方がいいかもしれない。
それから、アーティストの作品をちゃんと見ること。ポートフォリオ(過去作の写真資料)がない人はちょっと怖いですよね。きちんとしたタトゥー・アーティストは必ず撮りますから。そう言えばこの前、米国でものすごくヘタなドナルドダックのタトゥーを見かけました(笑)。入れた人も「ウソでしょ?」って思ったんじゃないかな。
あと、英語のスペルが間違っていると一番カッコ悪いです。漢字のタトゥーでも、「永遠」のつもりが「水道」にしか見えないとかね。海外の方で「愛情」「友情」ってある横に「温泉」って入れている人もいましたけど(笑)。
――改めて、LiLiCoさんにとってタトゥーとは。
私にとって、タトゥーは思い出。人生の瞬間、瞬間を切り取っているような感じなんです。節目節目、人生のページをめくる度にタトゥーを入れる。ホームレス時代とか、母親との不仲とか、大変なこともありましたけど、そういうことがあっての私なので。いいも悪いもひっくるめて、LiLiCoという人生なんだと思ってます。
LiLiCo(リリコ) 1970年生まれ。映画コメンテーター、俳優、プロレスラーなど幅広く活躍。夏木マリ、華原朋美、土屋アンナ、シシド・カフカと結成した「and ROSEs」 として、シングル「紅のプロローグ」を発売。北欧雑貨の通販サイト「LiLiCoCo」では、自身がセレクトした商品を販売している。
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