MENU CLOSE

話題

テレビCM打たないビール? クチコミ重視、グランドキリンの戦略とは

キリンビールから発売されている「グランドキリン」を知っていますか? 「あえてテレビCMを打たない戦略」で認知度アップを図っています。

グランドキリン(右の2種類は現在発売していません)
グランドキリン(右の2種類は現在発売していません) 出典: キリン提供

目次

 「グランドキリン」というビールを知っていますか? コンビニ限定で販売されているクラフトビールで、「あえてテレビCMを打たない戦略」で認知度アップを図っています。ビール会社といえば屈指の広告主というイメージがありますが、なぜこのような戦略をとっているのか? キリンのデジタルマーケティング部・加藤美侑さん(32)に話を聞きました。

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」
キリン・デジタルマーケティング部の加藤美侑さん
キリン・デジタルマーケティング部の加藤美侑さん 出典: キリン提供

グランドキリンとは

 グランドキリンは、キリンビールが販売しているクラフトビールです。クラフトビールとは一般的に、小規模生産で作り手の顔が見え、素材や製法にこだわった手工芸品(Craft)のようなビールを指します。

 ビールの個性を左右するホップを、仕込み段階だけでなく醗酵の段階でも漬け込む「ディップホップ製法」がグランドキリンの特徴で、複雑な香味を引き出しているそうです。

 2012年にセブンイレブンで先行発売され、2015年から全国のコンビニに拡大。今年9月からはスーパーや量販店での販売も開始します。

 20代後半~30代の男性を主なターゲットとしており、2015年にはブランドの認知度を拡大するためにテレビCMも展開。しかし、この1回だけでやめて、それ以降はクチコミ重視の戦略に転換しています。

 ビールといえばテレビCMの印象が強いですが、あえてそれをやめた理由は何なのか? グランドキリンなどのデジタルコミュニケーションを担当している加藤さんに話を聞きました。

ビールの個性を左右するホップ
ビールの個性を左右するホップ 出典: キリン提供

担当者に聞きました


 ――テレビCMを打たない理由を教えて下さい

 「過去にテレビCMを打ったこともありますが、認知率などの効果が限定的だったため戦略を見直しました。カテゴリーやブランド特性に合わせたPRを考えたときに、他のナショナルブランドのように『認知→購買』という流れになりづらく、直接体験できる機会を設けたり、デジタル施策をしたりといった方が親和性が高いと考えました」

 ――日本のビール市場の現状と関係があるのでしょうか

 「ビールの出荷量は、ピークだった1994年に比べると約4分の3ほどになっています。減った要因はいくつかあると考えていますが、お客様のライフスタイルや嗜好の多様化などに対し、メーカーが『ビールの魅力』を提案できていなかった面もあります」

 「テレビCMを打たない戦略は、市場の現状よりも、クラフトビールの特性の方が関係があります。クラフトビールは、様々なビアスタイル、味の多様性など選ぶ楽しみがあり、これまで知らなかったビールの世界を広げることが出来ます。まずは商品を手に取っていただくために、体験を通じて知的好奇心をかきたてる施策の方が、テレビCMよりも効果的だと考えました」

グランドキリンファンのコミュニティー「びあのわ」のイベントの様子
グランドキリンファンのコミュニティー「びあのわ」のイベントの様子 出典: キリン提供

ファンを介して情報伝達


 ――テレビCMに代わる施策とは

「『グランドキリン』を通じて“多様なビールを選んで、多様な楽しみ方ができる”ということを伝えていきたいと思った時に、不特定多数のお客様に一方的に発信するマーケティング手法ではなく、ブランドへの愛情や想い、熱意を伝えるには共感いただけるお客様と直接接点を持つことのできる『イベント』という形態が最も伝わりやすいと考えました。そこで、熱狂的なグランドキリンファンのコミュニティーとして『びあのわ』を立ち上げました」

 ――「びあのわ」とは

 「『ビール愛を合言葉に、ビール好きが集い、語り合い、カンパイできる、ビールのいい時間を過ごすコミュニティー』という位置づけです。ビールが好きな方、ビールのある人生をもっと楽しみたい方が集まり、ビール好きにとっての「本当の良い時間」を過ごして、そこで新たな発見や体験をして頂きます。これまでに、オリジナルのビアマグを作ったり、都内で農業体験をしてセゾンビールの文化を学んで飲んだり、といったイベントを開催しました」

 ――イベント参加者を募集する際、「影響力の大きい・小さい」は重視しなかったそうですね

 「情報があふれていて多くの人がスルーする時代です。そんな中で人々の心を動かすのは、本当に商品を好きな方から語られる情報だと考えたので、『ファン度』を重視しました。情報を伝えたがっている人に向かってまず発信し、そのファンを介して情報を伝えようという考え方です」

グランドキリンファンのコミュニティー「びあのわ」のイベントの様子
グランドキリンファンのコミュニティー「びあのわ」のイベントの様子 出典: キリン提供

手応えと課題と


 ――これまでの戦略で手応えを感じる部分は

 「実際に我々もイベントに参加して、みなさまと一緒に深く濃い体験をする中で、ファンの方がどんな風に商品を飲んでいるのかといった点や、商品への想いを直接伺うことができました。お客様との絆を築いていきながら、情報を発信してきたいと思っています」

 ――課題は

 「イベントに参加した方や、びあのわ会員になっていただいた方と、密にコミュニケーションができる状態にはなっていません。今はメルマガやイベント告知のみとなっていますが、もっとグランドキリンについて語ることのできる場所や仕組みを作っていきたいです。全国でもっと多くの方々に参加いただけるような体験型セミナーも検討中です」

 ――これからについては

 「これからもっと多くの場所で、大小さまざまな『びあのわ』イベントの開催を予定しています。もっとたくさんのファンの方に参加していただき、深く濃い体験をご一緒できればと思っています」

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます