話題
「ちゃんと泣けるのは強さです」 山手線のあの中吊り、教会に聞く
山手線車内の中吊り広告に掲載された教会からのメッセージ。気になったことはありませんか?
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山手線車内の中吊り広告に掲載された教会からのメッセージ。気になったことはありませんか?
「立ち止まってこそ見えるもの、があるのです」「ちゃんと泣けるのは、強さです」「自分で自分の恋を難しくしていませんか」――。これらは山手線車内の中吊り広告に掲載されたメッセージです。新しいものが出ると、「涙が出そうになった」「胸に響いた」といった声が上がります。制作している、長野県軽井沢町にある教会に話を聞きました。
中吊り広告の制作主は「軽井沢高原教会」です。教会は1921年に開かれた「芸術自由教育講習会」を原点として誕生。この会には思想・宗教の区別なく人々が集まり、北原白秋や島崎藤村ら当時の文化人も参加したそうです。
「信者を募る場ではなく心の交流の場」として歴史を重ね、現在ではこの教会で結婚式を挙げる人も多くいます。
山手線にメッセージを出し始めたのは2010年。それからは年3~4本ほどのペースで発表しています。これらは、教会の専属牧師とスタッフを中心に考えているそうで、結婚式の理想や憧れではなく、恋や夢などをテーマにしているそうです。
これまで発表されたメッセージには以下のようなものがあります。
【立ち止まってこそ見えるもの、があるのです。】
空の鳥を見上げることも、野に咲く花を見下ろすことも、
立ち止まらなければできないことです。
失敗する人生に、価値なんてない。
いかに世の中を順調に、上手く生きていくかが大事。
そんな風に考えながら毎日を過ごしていませんか。
でも本当は、挑戦して、失敗して、
立ち止まったからこそ見えるものがあり、
回り道をしたからこそ気づくことがある。
そうやって見えてくるものには、
どんなに小さく些細なものでも
「美しさ」があり、「価値」があります。
そして、それを見出す力は、私たち一人ひとりに
ちゃんと備わっているのです。
【自分で自分の恋を難しくしていませんか。】
自分の恋なのに、誰かの恋と比べてしまう。
いい人を探しているはずが、
気がつくと欠点ばかり探してしまう。
この春、そんな後ろ向きな自分と
サヨナラしてみませんか。
新しい恋は、誰かが運んでくるのではなく、
新しいあなたが連れてくるもの。
自分を見つめ、気持ちを前に向かせることが
きっと、いい恋への近道になるはずです。
いい恋って、なんだろう。
新しいメッセージが発表されると、ネット上には「満員電車の中にいるのを忘れて思わず涙が出そうになった」「すごく良くて胸に響いた」「つい検索してしまった」といった声が上がります。
どのようにしてこのメッセージは作られているのか? 教会の広報担当者に話を聞きました。
――山手線にメッセージを出し始めたきっかけは
「思想・宗教の別なく人々が集った芸術自由教育講習会の歴史を継承し、多くの方の背中を押せるようなメッセージを届けたいという想いから始めました」
――最新のメッセージは、いつ出されたものでしょうか
「一番最近は2016年6月の『ちゃんと泣けるのは強さです』です。雨も多く、気が滅入(めい)りがちなこの季節に合わせたメッセージです」
――牧師の言葉をもとに作られているということですが
「教会には数人の専属牧師がいます。その牧師と教会のスタッフを中心に、現代に生きる人々がどんな悩みを抱えているかというところから、そっと背中を押せるようなメッセージを考えています」
――メッセージを考える上で心がけていることは
「『こうしなさい』『ああしなさい』と押し付けがましくならないよう気をつけています。『頑張っているあなた、悩んでいるあなた、ありのままのあなたを私たちは応援しています』という気持ちで考えています」
――テーマは恋に限定せず幅広くとられています
「恋、夢、親子、どのテーマであっても、根底にあるものは同じだと考えています。普段は忘れがちな、身の回りにある大切なもの。それは人かもしれないし、時間かもしれません。その大切なものに目を向けるだけで、きっと毎日が変わっていくと思っています」
――メッセージへの反響は
「『電車の中でメッセージを見つけて、元気付けられました』といったお手紙を頂くことがあり、その言葉に私たちこそ元気を頂いています。メッセージをきっかけに教会に遊びに来てくださって、結婚式を挙げた方は何組もいらっしゃいます」
――これまでのメッセージの中で最も反響があったものは
「『あなたはただあなたでいれば、それでいい。』は、年齢・性別を問わず、多くの方からお手紙を頂きました」
――今後については
「今後も私たちのメッセージを必要とする、ひとりでも多くの方に届けられたら嬉しく思います」
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