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「こんなことで何も変わらない」フジロックでの質問に、奥田さんは…
「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さんが参加したことで注目を集めた今年の「フジロック」。当日、トークセッションに登場した奥田さんに、観客の1人が激しい口調で質問を投げつけました。「こんなことやっても何も変わらない」。不穏な空気が漂う中「今は電力会社も選べる時代。日常の中でもできることがある」と答えた奥田さん。当日の様子を振り返ります。
奥田さんは、7月23日にあった音楽フェス「フジロック」のイベントの一つ「アトミック・カフェ」に登場しました。イベント前、安全保障関連法に反対する活動をしてきた奥田さんの参加が発表されると、ネット上で「音楽に政治を持ち込むな」などの意見が出て注目されました。
「アトミック・カフェ」は、反核のメッセージを発信する取り組みとして、東京電力福島第一原発事故のあった2011年から、フジロック内で開催されてきました。
この日は、奥田さんのほか、ジャーナリストの津田大介さんと国際環境NGO「FoE Japan」の吉田明子さんらが登壇しました。
冒頭、奥田さんは「別に政治を持ち込みに来たわけではないですけれどね。『ここでしゃべって』と頼まれて、気がついたらネットで炎上していた」とあいさつ。東日本大震災を機に東北でボランティアをしたことや、国会前でのデモなどについて振り返りました。
参院選の結果については、野党連合が1人区で11議席を取った成果を評価。その一方で「野党は政策の中身を具体的にアピールできていなかった。議論の過程が全然見えない、説明する気があんまり無さそう」と指摘しました。
その後、ステージの下にいた男性が厳しい口調で問いかけました。
「原発がやばい(と思っている)なら、原発の前で1人で立って、命がけでやらないと(いけない)。なぜ立候補しないのか。この国は原発をOKにしちゃっている。こんなことやっても何も変わらない。俺は絶対に(選挙に)行かない」
それに対し奥田さんは、沖縄県東村の米軍北部訓練場のヘリパッドの移設工事を挙げて答えました。
「ヘリパットの前で今も叫んでいる人がいる。立候補して声を上げるのも大事。でも、今、困っている人がいて、その人の声を聞くことも大事」
奥田さんが強調したのが、選挙以外にも、政治について考えるきっかけはあるということ。
「フジロックってごみの分別、めっちゃやっているじゃないですか。これだけでも、何か変化はあるわけです。自分たちがどんな電力を買えるかも、今、選べる時代だし。日常の中でもできること、あるんじゃないかと」
また、結果的に場の空気を変えてしまった男性の質問を受けて、民主主義の「面倒くささ」についても言及しました。
「政治のことが面倒臭いのは、自分と違う意見の人と話すのが面倒臭いから。だけど、この面倒臭いものを越えないといけない。今、ここにいる人たち、名前は知らないけれど、この社会をどうやって一緒に生きていくかというのが、政治だから。さっきあの人(質問した男性)は、選挙に行かなくたっていいと言ったけれど、みんなが無関心になっちゃった社会は、けっこうやばいと思う」
イベント終盤、津田さんから「ちょっと熱めで」メッセージを求められた奥田さん。
「俺はぶっちゃけ、この先の社会があんまり良くなると思っていない。でも、だから、だから面倒臭くても政治のこと、考えないといけない」と訴えました。
開催前から注目された今回のイベント。奥田さんは「ここに来たら叩かれるんだろうなとか、いろんな人にいろんなこと言われるんだろうなって思った」と胸の内を明かしました。
その上で「ほんの少しの勇気」の大切さについて語りました。
「それでも、俺はここで、立って話しました。ほんの少しの勇気っすよ。2、3年前だったら俺もそこ(観客席)で座って聞いていた。だから、ちょっとの勇気なんで、周りの人や友達でいいんで、社会のことについて、真剣にしゃべりませんか?」
最後、津田さんは次のようにまとめました。
「さっきあの人(質問した男性)がいて、(イベントが)盛り上がってよかった。あの人もたぶん、飲んだら面白い人なんだよね。確かに、この国の政治、なんでこんな変わらないのって思います。そういうのを含めて、皆さんに持ち帰っていただければと思います」
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