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YEN TOWN BAND、20年ぶり新作 Charaを動かした小林武史の「言葉」
Charaが歌う「YEN TOWN BAND」が7月20日、20年ぶりの新作アルバムを出します。復活を決断したCharaの心を動かしたのは、小林武史が語った「ある言葉」でした。
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Charaが歌う「YEN TOWN BAND」が7月20日、20年ぶりの新作アルバムを出します。復活を決断したCharaの心を動かしたのは、小林武史が語った「ある言葉」でした。
岩井俊二監督の映画「スワロウテイル」から生まれた架空のバンド「YEN TOWN BAND」が7月20日、20年ぶりの新作アルバム「diverse journey」を出します。今月22日には先行シングル「my town」も発売。バンドの本格復活を決断したCharaさんの心を動かしたのは、プロデューサーの小林武史さんが語った「ある言葉」でした。ボーカルのCharaさんに、活動再開への思いを聞きました。
――YEN TOWN BANDは元々、「スワロウテイル」に登場するバンドで、Charaさんはボーカルのグリコという役どころでした。
シンガーを目指す娼婦の役で、グリコちゃんとの共通点は「職業が女」っていうところ。もしかしたら、私のために岩井監督が多少は考えてくれたのかな。愛を歌う、誰かのために歌うっていうのは、グリコも私も同じだから演じやすかった。
――撮影はお子さんが生まれたばかりの時期だったとか。
そう! ちょうど生まれたばかりで、私のヤセ待ちだったのよ。リラックスしてたら、ちょっと太っちゃって、これじゃグリコちゃんダメだからって言われて(笑)。だっこしながら、中国語のセリフを覚えてたな。あの時に7ヶ月ぐらいだった子が、いま20歳。もう20年経ってるんだね。
――主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」(1996年)は、85万枚以上売れるヒットになりました。
小林武史さんはあんなにヒットするとは思ってなかったみたいだけど、曲も良かったし、時代も良かったし、YEN TOWNに合ってたし。「あいのうた」が入ってる「MONTAGE」(1996年)も、すごくいいアルバム。「初期衝動」をテーマに、ニューヨークのウォーターフロントスタジオでアナログレコーディングしたんだよね。
小林さんはプロデューサーなんだけど、いちミュージシャンとして尊敬してる。鍵盤弾きとしていいし、お互いにないものを持ってるから。
――「あいのうた」は作曲が小林さんで、作詞が岩井さん・Charaさん・小林さんの連名になっていますが、どのようにして共作したのですか。
当時、私はグリコとしてリアルにYEN TOWNに住んでるような感覚だった。でも小林さんは撮影現場には来てないから、ちょっと温度差があって。だから私は、岩井さんと小林さんの間に入って、つなぐ役をしてたのね。
岩井さんからは「躊躇」と「空の青の青さに心細くなる」っていう二つの言葉を入れたいって言われて、「オッケー! いいね、いいね」って。それから、私が書いたのは「心に心に傷みがあるの」「ママのくつで」「私はうわの空で」みたいな女っぽいところ。
サビは小林さんが「僕らは~」にしたいって言ったんだけど、私が拒否ったの。グリコは娼婦だし、愛する人にも「僕」とは言ってない。だから、「私」がいいと思いますって意見を言って。否定や批判じゃなくて、やっぱり、映画に生きる音にしたかったから。
「信じるものすべて」とか「夏草揺れる線路を」とか、その辺は小林さん。私、普段人の歌詞はよっぽど良くないと歌わないんだけど、小林さんはアメリカ文学的なすごくいい歌詞を書くの。
――昨年9月に新潟で開かれた「大地の芸術祭」で、YEN TOWN BANDとしては12年ぶりの復活ライブを行いました。
カゲロウがめっちゃ明かりに集まってきて、すごく幻想的な場所だった。羽が透けててお花みたいに綺麗なんだけど、虫ちゃんだからすごいのよ。小林さんもカゲロウを潰しながらキーボードを弾くような感じ。岩井監督やアゲハ役の伊藤歩ちゃんも、久しぶりに見に来てくれて。
――そこから、アルバム制作も含めて本格的に活動を再開することになった経緯は。
私もウルサイ女だからさ、小林さんにちゃんと聞いたのよ。「なんでやるの?」って。前回は映画があっての活動だったけど、今回は映画ないから。「前の時に売れたから」みたいな理由だったら全然やる必要ないし。
最終的になんで再開するのか、YEN TOWN BANDは何なのかってなった時に、「愛だよ、愛」って小林さんが言ったの。それがカッコイイなあと思って。「やりますよ」「もちろん、愛ならやるわ」って。
――「愛」ということで言うと、アルバムには昨年12月に発売された「アイノネ」という曲も入っていますね。
カタカナだから、いろんな意味を想像できるよね。(作詞作曲した)小林さんいわく、愛の値とか、愛の根とか…。愛の音もあるだろうし。久々の再活動の曲ということで、人と人をつなぐようなイメージもあったのかな。
新曲の「my town」は東京メトロのCMのために小林さんが書き下ろしたんだけど、そこにも通じる気がして。なんか地下鉄みたいじゃん、根っこって。隠れたところにたくさんの人が生きているような感覚。
――「my town」では、ドラゴンアッシュのKjさんとコラボしています。
Kjは前からよく知ってて、すごくかわいい子なの。カッコイイし。Charaちゃんっていうのよ、私のことを。Charaさんっていう人が多いから、ちゃん付けしてくれてうれしいわ。なんか、アメちゃんみたいな(笑)。
実はYEN TOWN世代で、映画もリアルタイムで見てたみたい。コラボの話が出たから、私はKjを推して。リリックのところは自由に書いて、自由に羽ばたいてもらったの。「自由にやって」って言われて、本当に自由に自分らしくやってくれるから。
――アルバム収録曲の「EL」は、冒頭から「あいのうた」のを彷彿とさせる雰囲気があって、YEN TOWNらしい名曲だと思いました。
そうそう! YEN TOWNぽいでしょ? 未発表だけど、ライブでやってきたの。
――作詞は小林さんとCharaさんの共作ですね。
大体わかるよ。私が書いたところと小林さんが書いたところは。違うから、それが混ざるから面白い。歌っぽいなって思うの。私らしい女性的な感覚と、小林さんの男性的だけど繊細なところと。両方の違う繊細さが出て、両方のジェンダーがあるような感じになって。それがYEN TOWNの良さでもあると思うし。
――ずっとラブソングを歌ってこられて、今回の復活のテーマも「愛」。Charaさんにとってラブソングとは。
愛にすごく惹かれて、愛ってなんだ?って思いながら、でもよくわからないから歌ってる。まだ生きている途中だから。
普通の人はすべて掘って、掘って、掘ったら病気になっちゃうじゃん、精神的に。でも、私たちは心を掘って、掘って、詩と愛のメロディーを届けるのが仕事だからさ。代わりに掘るから、それを聴いて、元気出したり泣いたりして、リセットしてねっていう仕事。
そうやって人に勇気や原動力を与える側になったわけだから、自分を絞り出したい。そういう思いはあるよね。
――ラブソングで歌う「愛」の中身は、経験や年齢を重ねながら変化していくものですか。
もちろん、もちろん。やっぱり、子どもができて変わった。若い頃はみんなが使っている言葉なんてって思ってたけど、大人になって子どもを持ってからは、シンプルで強い言葉ってなんて素晴らしいんだろうって。
だから大人になっていくにつれて、使える言葉が増えた。逆に、いまの自分にリアリティーがない言葉は減ったかな。暴力的なこととかは、あまり好きじゃないかもしれない。昔はそういう表現も多少あったけど。
つらい時、リアルタイムで失恋している時は、自分の曲歌うのも大変。もう誰よりも「せつなMAX」になって、泣いて歌えないこともよくあった。Charaあるあるだね。でもいまは、ちょっと強くなった部分もあるし。歌いながら成長させてもらいました、私。ふふふ。
――YEN TOWNがありつつ、ソロとしても25周年を迎えます。今後の抱負は。
淡々と続けていきたい。一生懸命、淡々と続けていれば、出会いがあったりするものだから。結構いい感じで熟年になってきて、毎回いいアルバムつくってるし…。Chara、オススメです(笑)。
9月にはアルバム「Junior Sweet」(1997年)のリマスター盤を出して、そのツアーもする予定。YEN TOWNを聴いてた人は、これも聴いてた人が多いんじゃないかな。Charaのアルバムのなかでは一番いいのよ。
それから幸せになることかな~。歌い始めたのも失恋がきっかけで、幸せになりたいと思って始めたので。子供2人も元気で育ってくれてるし、あとはママの恋かな(笑)。
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