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「舛添騒ぎ」猪瀬氏が思うこと 「徹底的に潰す…まるで人民裁判」
2012年の都知事選前に5千万円を借りたことが問題になり、1年あまりで都知事を辞めた猪瀬直樹さん。ここ最近、テレビで目にすることが増えました。「“舛添騒ぎ”がなければ、別に何も言うつもりはなかった」という猪瀬さんが、再び“あの出来事”について語る真意とは?
政治資金の使い方をめぐる公私混同で、舛添要一さんが東京都知事を辞めました。一連の問題を、新聞や週刊誌は大々的に取り上げ、中でもテレビのワイドショーは連日、多くの時間をさいて報じました。
猪瀬さんは、舛添さんが辞表を提出した翌16日、自身のブログに「舛添騒動とは何だったのか。僕の体験から。」と題して、こんな風につづっています。「確かに舛添さんのキャラクターは好きになれません。でも、こんな人民裁判のようなやり方はもうやめたほうがよいと思います」
辞書で「人民裁判」と引くと、「法律によらず、結束した人民がみずからの力と意志において行う裁判」とあります。
猪瀬さんはこう言います。「説明を尽くせば尽くすほど、結局それと関係ない形でのつるし上げみたいになる。だから人民裁判。テレビと週刊誌とネットが一気に炎上するっていう構造ができちゃってる」
この舛添さんの問題で、猪瀬さんは過去の不祥事をほじくり返される格好に。在任中に、都議会で札束を模した箱をカバンに押し込む姿や、大汗をかいている姿が、くり返し放送されました。
猪瀬さんは、2012年12月の選挙で当選し、都知事を1年ほど務めました。その選挙戦の直前、「選挙資金を念頭に」5千万円を借りたのに、選挙運動費用の収支報告書に書かなかったとして、14年3月に公職選挙法違反の罪で、罰金50万円と、5年間の公民権停止の略式命令を受けました。
カバンと格闘する映像は、猪瀬さんが辞職願を出す2日前、この問題が追及された都議会での一コマです。借りたお金を入れたというカバンに、猪瀬さんは公明党の都議が用意した5千万円の札束大の箱を入れようとしますが、チャックが閉まりませんでした。
「あれは発泡スチロールの塊だから、入るわけないんだよね。立方体がカバンに入るわけない。入れたところで意味もないわけだし、入らないものを用意してあるってこと自体が、真実の追求じゃなくて、彼ら(都議)の見せ場を作ってるだけ。つるし上げの道具だったわけよね、要はね」
猪瀬さんが大汗をかいている都議会の映像も、ワイドショーのお決まりになった感があります。
「汗が垂れてるのは、10時間もやって体力の限界だったから。立ちっぱなしで、人権蹂躙(じゅうりん)なんだよね。でも、テレビが『追い詰められて冷や汗をかいてる』っていうような映像にして、映しちゃう。テレビは映像を切り取るからね。切り取るから、違うって説明するしかない」
「僕が一生懸命に説明しても、説明を受け入れないっていう状況になっているわけで、出れば出るほど損する形になる。(マスコミは)それを取り上げて、おもしろおかしくやっちゃうから。そうすると出なくなるよね。僕は正面から説明した。舛添さんは弁護士を立てて説明した。いいか悪いかじゃなくて、どうやっても同じだってことがわかった。いずれにせよ、出れば出るほど損をするってことが」
舛添さんは退任会見を開かないまま、20日、わずか8人の職員に見送られて都庁を去りました。
猪瀬さんは元公人。とはいえ、過去の不祥事をほじくり返されるのは悔しいことに違いありません。
前科・前歴ならなおさら、誰にとっても知られたくないもの。だから、多くの報道機関は前科・前歴の報道には慎重です。また、ネットに目を移すと、そうした過去の事実を消し去る「忘れられる権利」の法制化は、世界的に議論されています。
「権利なんかないよ。自分の努力しかないね。こないだもテレビに出て、真相をしゃべった方がいいなと思ったからしゃべったわけよね。ニューズピックスやブログにも書いたし。それでみんな、僕の件ではやり過ぎたんだなってのが、少しわかり始めた。“舛添騒ぎ”がなければ、僕も別に何も言うつもりはなかったんだけど、今回も同じことやってるなって思ったから」
猪瀬さんはいまも選挙権・被選挙権が停止中とはいえ、罰金50万円はすでに払っています。
「ステレオタイプの映像が印象として残っていくって、レッテル貼りになるわけだよね。僕は略式起訴で50万円払って、一定のみそぎを済ませているわけだよ。たとえば、刑務所に入った人が刑期を終えて出てきたら、(周囲は)入ってたとか言っちゃいけないわけよね」
「舛添さんは公私混同があったけど、僕の場合は、選挙のときにお金を借りたから問題になったけど、都政はちゃんとやってたわけだから。それを『政治とカネ』ってカテゴリーでくくっちゃって『2代連続で知事が辞めた』っていう書き方をされちゃうと、それでいいのかってのはあるよ。全然違うじゃない。これからも、そういうことがあると説明していくしかないですよね」
記者会見の場で、「どうしたら知事を辞めてくれるのか」、そんな質問まで飛び出した舛添さんの問題。報道は、早くも後任候補のさや当てに向かっています。
今回の報道を、猪瀬さんはどう見たのでしょうか。
「ちょっとやり過ぎなんじゃないの? 舛添さんがセコイことはわかったよって感じはあるんだけど、そこを一気に攻めるよね。(元米大統領の)クリントンさんは昔、女性スキャンダルあったじゃない。アメリカの企業家もさ、失敗してもまた次にやる、セカンドチャンスってのが常にあるわけでしょ。日本は徹底的に潰して、セカンドチャンスがなくなるから、みんなリスクを取らなくなる。こんなことやってたら、都知事になる人がいなくなっちゃうよ」
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猪瀬直樹(いのせ・なおき)69歳。作家。
東京都副知事を経て、2012年12月~13年12月に都知事。
現在、大阪府・大阪市の特別顧問を務める。
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