お金と仕事
15歳で起業した学生社長が就活を見て思うこと 「差別化できてる?」
三上洋一郎さん(18)は、15歳で起業、現在もベンチャーを率いる筋金入りの学生起業家です。たぶん普通に就職しない三上さんですが、まわりの大学生の就活をどう見ているのでしょうか? 「大事なのは、自分がどの会社にとって有益かを見定めること」。大学に入ったばかりの三上さんに、大学時代やっておくべきことを「あえて」聞いてみました。
「新卒一括採用が必ずしも悪いと思っていません」
三上さんは、批判の多い日本特有の「新卒信仰」に、一定の理解を示します。ただ、その理由はいたって経営者目線です。
「今すぐ通年採用制を取り入れることは難しく、現状の制度を活かす方法を検討するべきではないでしょうか。その前提で考えると、企業にとって採用のシーズンが決まっているのは効率的な面もあります。社内で人材育成をするので、10年20年のスパンで考えると強い組織ができる」と言います。
一方で学生としては課題も。「就職のタイミングが新卒か第二新卒しかない。海外で視野を広げるような活動は許容されにくいですね」
三上さんは、15歳で会社をたちあげ、現在、ITベンチャー「GNEX」の社長をつとめます。社長業と並行して今春、大学にも入学。経営と学問、両方の世界を掛け持ちしています。
「たぶん普通に就活して就職はしないと思います…」。そう、ぶっちゃける三上さんですが、現在の就活はどのように見えているのでしょうか?
「自分は他の人に比べて差別化できる点は何か。それを考えるべきだと思います」
会社が利益を追求する組織であることを身をもって体験してきた三上さん。採用に際して「その会社にとって本当に有益かどうか。それを考えるのは当たり前なんじゃないでしょうか」と言います。
学生時代に何をするべきか。ここでも三上さんは独自のクールな分析をします。
「お金と知識と時間、この3つが人間の財産です。18歳の私は、30歳の人にくらべると12年、約4400日のアドバンテージがある。大学生にとって、最大のリソースである時間をどう最適に配分するかが、重要だと思います」
三上さんは「その中で特に必要なのは『自分のもっているものは何か』を考えること」だと強調します。
「大学のせい、社会のせいにして思考停止しちゃダメです」
その上で、社会に出た先輩の話を聞くOBOG訪問が重要だと説きます。
「だって、どういう人材を求めているかリサーチしなければ何も始まらないでしょう。自分が持っているもの、先方が求めているもの。両方を整理する中で、答えが出てくるんじゃないでしょうか」
ちなみに、三上さん。なぜ、わざわざ大学に入ったのでしょう?
「10年で使えなくなる知識ではなく、普遍的な知識を求めて大学に通っています」
例えば、小学生からプログラミングを教えようとする流れには「反対」の立場です。
「趣味でプログラミングを学ぶ人は増えてほしい。でも、学校には十分な指導者がいるとは言えず、今の環境でプログラミングを学ぶのは問題があります。そもそも、学校での実学教育なんて、5年後はすたれちゃいます。それより、100年くらい普遍的な歴史とか教養とかを学ぶべきだと思います」
その考えは経営者としての手腕にもいきているそうです。三上さんが、今、手がけているのは、ウェブサイトからプッシュ通知を出せるサービス「Push7」です。
「スマホ時代はアプリが主役に思われていますが、これからはウェブの時代がまたやってくる。数カ月、数千万円かけてアプリ作る必要がなくなる時代を見据えて、開発を進めてきました」
その発想の根底にあるのが「長期的に意思決定できる土台となる知識」だそうです。
「教育は人類の文明、歴史を詰め込む場。それを元に、今の時代にフィットするアプローチを考えることが大事なんだと思います」
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三上洋一郎(みかみ・よういちろう) ITベンチャー「GNEX(ジーネックス)」の社長。小学3年生でプログラミングを始め、株式投信も経験。「利ざや目的ではなく、何億人も幸せにできるようなお金の使い方ができる投資家になりたい」
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