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中国で話題「1200人超巨大バス」 本気で実現? 開発者に聞いてみた
道路をまたぐような巨大な車体で1200人を運び、その下を一般車が走る。5月に北京であった国際見本市「北京科学技術博覧会」に登場した大型特殊バス「巴鉄」が注目を集めています。まるでロボットアニメの秘密兵器のようなビジュアル。本気で走らせる気なのか? 需要はあるのか? 発明者でバスを開発する会社のCEOでもある宋有洲さんに聞きました。
巴鉄は、中国語の「巴士」(バス)と「鉄道」を合わせた造語です。道路を走る地下鉄というコンセプトで、特別なレールに沿って移動する2階建てバスのような構造です。
バスと違って乗客が乗るのは2階の部分だけ。1階部分はトンネル状態になっており、普通の車が通行できます。
車体はとてつもなく巨大です。1つの車両は12mあり、それが4両連なります。連結部などを入れると、全長54mに達します。横幅は車道2つ分、7.8mあります。高さは4.5から4.7メートルあり、1200人から1400人の乗客を乗せることができます。
1階部分は2.1から2.2メートルあり、高さ2メートル以下の小型車両が通れる作りになっています。宋さんは「ゆったりした車内空間は、リビングのような感覚で地下鉄より遥かに快適ですよ」と話します。
2010年に、アメリカの雑誌TIMEに、「The Straddling Bus(またがるバス)」として世界のベスト発明50に選出されました。
発明のきっかけは何だったのでしょう?
「若い頃から発明が好きで、200ぐらいの発明をしてきました」と言う宋さん。ヒントを得たのは、深セン市で「華世泊車設備公司」という会社を経営し、駐車設備の開発・建設の事業に携わった時でした。
深セン市の立体交差橋の高さは4.5から5.5メートルで、また一般の自動車の高さは1.6メートル以下。つまり、2メートル以上、4.5メートル以下の空間が「余っていた」のです。
この空間の有効利用を考える中で生まれたのが「巴鉄」でした。
「巴鉄は、2010年くらいから知名度が上がって、フランスの交通大臣に説明したこともあります」と言う宋さん。現在、スペイン、メキシコ、ナイジェリア、ブラジル、インドネシア、アルゼンチンなどの国々と契約を進めているそうです。全世界で40万から50万台の需要があると見込んでいます。
巴鉄が実際に走る姿は、いつ見られるのでしょうか?宋さんによると、現在、車両は江蘇省・常州市で製造中で、8月には河北省の秦皇島市で1キロの実地テストをするそうです。テスト時には乗客も乗せる予定です。
安全性については、上海交通大学、同済大学など中国の名門大学にすでに検証してもらったそうです。
巴鉄の動画は日本でもインターネット上で話題になりました。
宋さんは「日本は新幹線を生み出したすばらしい技術を持つ国。日本で注目されることは、とてもうれしいです」と話しています。
中国だけでなく交通渋滞に悩む国は数多くあります。巴鉄は、1863年にイギリスで地下鉄が生まれて以来の発明になるのかもしれません。
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