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飼育員の事故、環境の変化… ゾウの「はな子」、波瀾万丈の69年

国内最高齢のゾウでした。

26日に死んだゾウの「はな子」=2013年3月、東京都武蔵野市
26日に死んだゾウの「はな子」=2013年3月、東京都武蔵野市 出典: 朝日新聞

目次

 東京・井の頭自然文化園で飼育されていたアジアゾウ「はな子」が死んだと東京都が発表しました。はな子は69歳。国内で飼育されたゾウでは最高齢でした。

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内蔵圧迫を避けるため、横になったはな子をロープで起こそうとする飼育職員ら=2016年5月26日午前11時ごろ、公益財団法人東京動物園協会提供
内蔵圧迫を避けるため、横になったはな子をロープで起こそうとする飼育職員ら=2016年5月26日午前11時ごろ、公益財団法人東京動物園協会提供 出典: 朝日新聞デジタル

3月から室内にこもっていた

 今年3月、はな子の環境にある変化がありました。飼育員の安全確保のために、ゾウ舎の運動場に安全柵を設置。柵を警戒したはな子は、室内にこもるようになりました。それでも、柵を撤去し、複数の飼育員がふれ合いながら餌をあげるようになると、5月中旬には体調も安定してきていました。

井の頭自然文化園(武蔵野市)にいる69歳のアジアゾウ「はな子」が室外に出なくなってから14日で2カ月がたった。飼育員たちは毎日1時間ずつ一般公開を中断してはな子とふれ合うようにし、体調は安定している。
2016年5月15日:「69歳「はな子」復調 飼育員とふれ合って 井の頭、部屋にこもり2カ月」:朝日新聞紙面から
飼育員が背中や足を熊手でかき、手で肌に触れると、はな子は鼻を揺らした=2016年5月12日、井の頭自然文化園
飼育員が背中や足を熊手でかき、手で肌に触れると、はな子は鼻を揺らした=2016年5月12日、井の頭自然文化園 出典: 朝日新聞

戦後の混乱期に来日、熱狂的な歓迎

 はな子がタイから日本に来たのは、まだ戦後の混乱期にあった1949年8月。名前は戦時中の猛獣処分で殺された上野動物園のゾウ「ワンリー(日本名・花子)」にちなんで名付けられました。殺処分のため餓死させられることになったゾウたちが、エサを求めて芸を披露する童話「かわいそうなぞう」にもなっています。悲惨な記憶に重ね合わせ、人々は2歳半の子ゾウを熱狂的に出迎えました。

1949年9月4日、上野動物園に着いたはな子(井の頭自然文化園提供)
1949年9月4日、上野動物園に着いたはな子(井の頭自然文化園提供) 出典: 朝日新聞

不幸な事故後も、支え続けた飼育員

 しかし、56年と60年、ゾウ舎に入り込んだ男性と、飼育員を死なせてしまう悲劇が起きます。殺処分は免れたものの、一時、ゾウ舎内で脚を鎖でつながれたはな子。不自由な暮らしから、食事を食べなくなり、体はやせ細った。そんなはな子を飼育員たちは支え続けました。

耳に触られても片脚をあげて、安心しきった表情のはな子=1988年撮影、井の頭自然文化園提供
耳に触られても片脚をあげて、安心しきった表情のはな子=1988年撮影、井の頭自然文化園提供 出典: 朝日新聞

飼育方法で議論も

 その飼育方法についても、半世紀以上の間にたびたび変わりました。飼育係とべったりだったり、遠ざけられたり、またかわいがられたり。2011年4月からは、飼育係がじかに接する直接飼育から柵越しに世話をする準間接飼育になっていました。元々は森林の中で集団生活をしているアジアゾウ。今春には「飼育環境が悪い」と指摘され、海外メディアも巻き込んだ議論も起きました。

2011年4月から、飼育係がじかに接する直接飼育から柵越しに世話をする準間接飼育に戻したためだ。(中略)ただ、それにしても、はな子の飼育方法はたびたび変わってきた。飼育係とべったりだったり、遠ざけられたり、またかわいがられたり。
2013年4月17日:「(最高齢のゾウ はな子:6)飼育方法、たびたび変化」:朝日新聞紙面から
はな子の飼育環境を巡り、海外メディアも巻き込んだ議論が起きている。今月上旬、ゾウの専門家を連れて訪れたフリーライターのカナダ人女性が、飼育環境が悪く、タイにあるゾウの聖地に移すべきだと主張した。
2016年3月19日:「誕生会前、ゾウの「はな子」引きこもり 運動場に設けた安全柵を警戒」:朝日新聞紙面から
運動場のはな子=2016年1月、井の頭自然文化園提供
運動場のはな子=2016年1月、井の頭自然文化園提供 出典: 朝日新聞

還暦には数百通のお祝いメッセージ

 井の頭自然文化園が2007年、還暦のお祝いメッセージを募集したところ、「父親や母親より長生きしていたのか……。どうせなら、あと40年頑張ってほしいもんだ」などといったメッセージが、全国から数百通が寄せられました。深いシワ。たるんだ首もと。うるんだ瞳。晩年のはな子には、その一つ一つに、人気者が歩んできた山あり谷ありの半生がにじみ出ていました。

ゾウ舎の前で披露された69歳をお祝いする特製ケーキ。イチゴで「69」をかたどった=武蔵野市の井の頭自然文化園
ゾウ舎の前で披露された69歳をお祝いする特製ケーキ。イチゴで「69」をかたどった=武蔵野市の井の頭自然文化園 出典: 朝日新聞
井の頭自然文化園が2007年、はな子の還暦のお祝いメッセージを募集したところ、全国から数百通が寄せられた。記念誌から一部を紹介する。
 「父親や母親より長生きしていたのか……。どうせなら、あと40年頑張ってほしいもんだ」「あなたとともに築いてきた平和! あなたとともに育ててきた勇気! 未来への希望として花を咲かせること、それは私たちの約束です!」
2013年4月16日:「(最高齢のゾウ はな子:5)本にドラマに、全国区」:朝日新聞紙面から

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