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鑑識課員のミニカー改造技術がプロ級 リアルな赤色灯 捜査でも活躍
市販のミニカーをパトカーや捜査車両に改造する趣味を持つ警察官が警視庁にいます。警視庁鑑識課の警部補、小沢伸行さん(46)。細部にこだわる完成度の高さは折り紙付きです。その腕前は、昨年7月に東京都調布市で起きた小型機墜落事故の際にも生かされました。(朝日新聞東京社会部・多田晃子)
白黒のパトカーに鑑識車両、機動隊の輸送車――。これらは警視庁で実際に使われている車両をモデルにしたミニカーの数々です。よく見ると、赤色灯やアンテナ、「警視庁8―15」というシールなど、本物そっくりに作りこまれています。
赤色灯を収める際のふたの部分は、カセットテープのツメを使うなど随所に工夫も。「パーツがあれば、どれも1時間ぐらいで完成します」と小沢さんは話します。
コレクションの数は700点を超えます。その一部が、東京都中央区の警察博物館(改修のため休館中)で2、3月に開かれた特別展で披露されました。
展示された警察車両のミニカー約330台のうち約200台は小沢さんの私物。二十数台は展示用として新たに改造しました。
作品はミニカー愛好家のツイッターで話題になり、会場にはミニカー目当てのリピーターもいたといいます。「来場した子どもたちがかぶりつくように見てくれたし、会場に一日中いる人もいた。すごくやりがいがありましたね」と小沢さん。
その腕前は、仕事にも生かされました。昨年7月に東京都調布市で起きた小型機墜落事故の状況説明で、小沢さんに白羽の矢が立ったのです。
事故の状況を把握するため、当時の鑑識課長から墜落した小型機の模型作りを頼まれた小沢さん。都内の中古模型店で30年以上前に発売されていたプラモデルを買い、パーツを付け替え、プラスチック板を使って尾翼を装着。機体の色を塗り替え、実物機そっくりの模型を4時間ほどで完成させました。
この模型を使って墜落状況などを説明した幹部は「墜落の様子や機体の状態を把握するのに非常に役立った。模型だと状況がイメージしやすく、理解の助けになる」と話しています。
小沢さんは「好きで続けていたことが、広報活動や捜査に役立ったのであれば本当に良かった」と話します。
日頃は事件現場で指紋の採取などに携わっている小沢さん。小さな頃からミニカーが大好きだったそうで、「そば屋を営んでいた両親からは『ミニカーを持たせておけば世話ない』と言われました」。
特にパトカーが好きで、刑事ドラマの影響から小学校高学年で警察官を志すように。転機は中学生の頃でした。
近所のミニカー専門店で「コレクションの世界」を知り、本格的に集めるようになりました。買ってきたミニカーに赤色灯をつけ、タイヤのホイールに色を塗って改造する楽しみに目覚めたと言います。
1988年に警視庁に入庁後は、休日に東京都内などのミニカー販売店を回るのが息抜きになりました。
中古のミニカーを買ってきては、実際のパトカーや捜査車両をまねて、アンテナを付けたり、ナンバープレートのシールを貼ったり。転勤する同僚に、仕事で使った捜査車両をモデルにしたミニカーを贈ることもあります。
車内の無線機など、精巧な造りが喜ばれるそうです。出来栄えは職場で話題になり、上司からも製作依頼が舞い込むようになりました。「ミニカーから人との交流が生まれた。人の喜ぶ顔が見られるのもやりがいです」(小沢さん)
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