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「誰か来いや!」 熊本地震、カメラマンが伝えたかった「日常」
熊本地震の発生直後、現地に入った朝日新聞のカメラマンは13人。連日、現地の状況を伝える写真が紙面に掲載されました。そして、膨大な数の「使われなかった写真」にも、被災地の人々の姿が記録されています。避難所で急きょ開かれた夜の上映会。めちゃくちゃになった自宅から見つけたボールを見つめる高校球児。弔いの花を供える女性。「アナザーカット」から見える熊本地震をお伝えします。
敷地に入った大きな亀裂の横で赤ちゃんを抱いて上空を見上げる女性。地面にあらわになった亀裂は、地震の爪痕を生々しく物語っています。
地震は部活動に汗を流す球児の日常も壊しました。散乱した自分の部屋で、中学校の野球部コーチからメッセージが入った卒業記念ボールを見つけた高3生の後藤海斗くん(17)。高校は休校中で練習も出来ていません。「最後の夏。大会には出たい」
各地からボランティアが駆けつけました。ガス復旧のために被災地を走行していた軽自動車が、アスファルトの割れ目にタイヤを落としてしまい動けない状態に。近くにいた男性が「誰か来いや!」と叫ぶと、ボランティアで民家の片付けのため鹿児島から来ていた若者らが集まり、車を押し上げました。
厳しい避難生活の中で笑顔を見せた子どもたち。夜、寝る前にアニメ映画の上映会が始まりました。余震への恐怖を少しでも和らげたいと企画されました。
花を供えたのは、水が入った石。地震で倒壊し、住んでいる人が亡くなった家の前で尾方勝子さん(71・右端)は「今日は暑いから」と言い、花が好きだったという故人を悼みました。
永田裕昭さん(43)は、家具などに挟まれた妻の両親を助けそうと、救助隊が来るまでの間、畳などをのこぎりで切ったりして救助を手伝いました。「命があって何よりです」
熊本県阿蘇市では、放置された田んぼが目立ちます。黒川地区の佐藤邦博さん(41)の田んぼも水路が壊れ、4月30日にようやく水を入れることができました。「ようやくひと安心。でも周りのことや、これからのことを考えると、もっと早く復旧してほしい。まだまだ頑張っていかんと」。
発生時、別件取材で熊本市内にはカメラマンが1人いました。福岡市にいたカメラマン3人が直後に福岡・北九州から熊本へ移動。14日夜に、別のカメラマンが空撮。15日朝からは別のカメラマンが空撮をしました。
東京からは3人が羽田→北九州の最終便に乗り、北九州からは車で熊本に。東京にいたもう1人は朝日新聞の社有機で北九州に午前2時ごろ到着、翌15日朝、空撮し、福岡に移動、社有ヘリで熊本市内に入ります。
広島駐在のカメラマン1人は発生直後、車で広島から熊本へ。大阪の2人は15日朝、社有ヘリで伊丹→福岡。1人はそのまま空撮、1人は福岡から熊本へ向かいました。
地上班は15日朝までに現地入りし、取材。その後、それぞれ、宿泊先で16日未明の「本震」を経験しました。
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