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2016年04月11日

神出鬼没でお騒がせ、バンクシーとは何者? 覆面芸術家の正体に迫る

  • 高久潤
  • 朝日新聞文化くらし報道部記者
  • 37347

2013年ニューヨークの街中で「発表」されたバンクシーの作品

2013年ニューヨークの街中で「発表」されたバンクシーの作品

出典: アップリンク提供

 メッセージ性の強い作風のグラフィティ(落書き)アートで、世界的に人気の高い覆面芸術家バンクシーの活動を追ったドキュメンタリー「バンクシー・ダズ・ニューヨーク」が全国の映画館で公開されています。最近では仏の難民キャンプで「シリアからの難民の子」と題した米アップルの創業者スティーブ・ジョブズの絵を描いたり、ロンドンの仏大使館近くの壁に仏政府の難民政策を批判するため、催眠ガスに苦しむ「レ・ミゼラブル」の登場人物の絵を描いたりする「お騒がせ」なアーティスト・バンクシー。一体何者なのでしょうか?

バンクシーとは

 ロンドンを拠点として活動するアーティストとして知られるバンクシーですが、本名や顔など素性は明かされていません。1990年代に英国西部の港町ブリストルで、グラフィティ(落書き)作品を発表していましたが、今では世界各地の路上に現れ、人知れず、制作した作品を自ら写真撮影して、公式サイトで公開します。

 ポップな絵柄と強い政治性を持つ作品は強い存在感を放ち、熱狂的なファンが世界中にいます。その作品はオークションで1億円以上で落札されたこともあります。

ドキュメンタリー映画も

約20分間の「上映会」の後、映画などを題材にしたおしゃべりは続いた=東京・渋谷区の代々木公園、高久潤撮影

約20分間の「上映会」の後、映画などを題材にしたおしゃべりは続いた=東京・渋谷区の代々木公園、高久潤撮影

 3月下旬に公開されたドキュメンタリー映画の舞台はニューヨーク。バンクシーは、2013年秋に1日1点のペースで、1カ月にわたり、路上で作品を制作することを発表。ただ、その場所は明かさないため、多くのファンがネット上でバンクシー自身が発表した画像をもとに、宝物探しさながら「現場」探しに奔走しました。

 ある人はその芸術的な価値ゆえに、またある人はその金銭的な価値を求めて。宝探しに奔走する人たちが自撮りしたユーチューブ上の映像も盛り込みながら、ネットと路上を巻き込んだ騒動の顚末を追った映画です。

 欧米での知名度に比べれば、日本でのバンクシーの知名度はそこまで高くありません。ですが、今回、映画公開前に配給会社「アップリンク」(東京)が、ネット上で「10人以上が鑑賞できる公共の場所」などの条件を満たせば、冒頭約20分を無料提供すると発表すると、全国から応募が殺到しました。

 3月中旬、東京都渋谷区の代々木公園で開かれた上映会。夜8時すぎ、芝生の上のブルーシートに立てられた小さなスクリーンの前に20~30代を中心とした30人ほどが集まっていました。ネット上の告知などで上映会を知り、会社や学校帰りに立ち寄ったそうです。上映後は、持ち寄ったビールを片手に感想などを自由に話し合いました。

 この会を企画した青木直介さん(28)は自身も路上パフォーマンスをするアーティスト。応募の理由を「映画は映画館、美術は美術館じゃなくて、アートを楽しむ新しい方法として面白いなと思った」と言います。

 北は北海道、南は九州まで全国100カ所で、こんなゲリラ上映会が開かれました。アップリンク代表の浅井隆さんは、バンクシーが注目を集める理由を「街の中でアートを解放する、政治的なことをポップに表現する。言うのは簡単だが、実践が難しいことをやってのける。それが人をひきつけている」と説明します。

神出鬼没、会った人に聞く

バンクシーの「シリア移民の息子」と、モハメドさん=仏北部カレー、高久潤撮影

バンクシーの「シリア移民の息子」と、モハメドさん=仏北部カレー、高久潤撮影

 実際のバンクシーはどんな人物なのか。そこが気になるところ。本人への直接取材は非常に難しいのですが、昨年12月仏北部カレーの難民キャンプを取材で訪れたとき、バンクシー本人と思われる人物に会い、長い時間話したというモハメドさん(23)に話を聞きました。当時、バンクシーは難民キャンプで、米アップルの創業者スティーブ・ジョブズの絵などを描いて話題になっていました。

 トレードマークのタートルネックのセーターとジーンズ姿、そして旧式のマッキントッシュのコンピュターを手にしたジョブズ氏の絵のタイトルは「シリア移民の息子」。欧州に広がっていた反難民の機運に対して、ジョブズ氏のような巨額の富を生み出した人物が移民系であったことをあらためて指摘し、バンクシーが難民・移民=経済的な負担という見方を批判しました。

 「警官は何時までいるんだ?」
 12月中旬のある日の夕方、モハメドさんが、いつものようにテントの中で友人たちとたき火に当たっていると、見たことのない白人の男性から声をかけられたそうです。だいたい午後6時過ぎて辺りが完全に暗くなると、警官の姿はあまり見えなくなることを伝えると、それまでテントに隠れさせてほしいと頼まれました。

 モハメドさんは、スーダンから英国を目指してこのキャンプにやってきました。フランスにたどり着くまでに妻子とはぐれてしまい連絡がとれないこと、仮に英国にたどり着いたとしても生活をしていけるかが不安であることなどを語りました。

 「ちょっとシリアスな話をした後は雑談していた。時に冗談交じりのね。でも彼はまじめだった。『力になりたいと思ってここに来た。ヨーロッパの人たちはもっとあなたたちのような人を大事にするべきなんだ』と、本当に熱っぽく語っていた。『政治はやれることをやってない』とも言っていたな。ピュアで情熱的だった。ボランティアの新入りだと思ったんだよ」

 辺りが暗くなり、警官がいなくなるのを確認した後、見張ってくれと言われた。その後、壁に絵を描き始めた。完成するまで30、40分ほどだったそうです。「『力になりたい』っていうから食べ物でもくれるかと思ってたのにね」と、モハメドさんは振り返ります。

 でも 「ここには変わったやつがいっぱいくるから何とも思わなかった」。その後、バンクシーがジョブズなどの絵の画像をネット上に公開すると、この絵を見に来る人たちがキャンプに殺到しました。「そんな有名人だったらセルフィーでも一緒に撮れば良かったよ」

神出鬼没でお騒がせ、覆面芸術家バンクシーとは?
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ディズマランドのシンデレラの馬車の展示はバンクシーの作品。事故死したシンデレラをパパラッチが取り囲む=英南西部ウェストンスーパーメア、渡辺志帆撮影
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出典:朝日新聞
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