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近大こんどはブリ ウナギ・ナマズでもなく…なぜ? 丼市場に参戦

近大ウナギ味のナマズで一躍話題になった近畿大学の有路昌彦准教授が、こんどはブリで夏のこってり丼市場を狙います。「代替魚を食べてもらい、絶滅危機にあるウナギを守る」目標は全く同じだといいます。イチオシ商品というブリ焼き肉丼とブリカツサンドを試食させていただき、狙いを聞きました。

マグロ、ナマズと来て、今度はブリに取り組む近大。勝算はあるのか?
マグロ、ナマズと来て、今度はブリに取り組む近大。勝算はあるのか?

目次

 昨年、話題になった近畿大学発の「ウナギ味のナマズ」。あの研究を主導してきた近大農学部の有路昌彦准教授が、こんどはブリで夏の「こってり丼」市場を狙っています。ブリは冬が旬で、特有の青魚臭さが苦手な人が多いといわれますが、最新の冷凍加工技術や味付けの工夫で、そうしたデメリットを克服したそうです。なぜブリなのか。狙いを聞きました。

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「ナマズ、面白い展開になったが…」

 近大発の「ウナギ味のナマズ」はそのネーミングの面白さや意外感もあってか、各種メディアにとりあげられ大ブレーク。昨年11月にはナマズ養殖や生産管理を担う新会社が設立されたほか、近畿大学も1月に「近大発のパチもんでんねん」と銘打ち、新聞の全面広告に「主役」として使ったほどの人気ぶりです。

 ただ、そんな世間の期待とは裏腹に、高まる需要をカバーするほど生産が追いついているとはいえません。有路さんは「ナマズは面白い展開になってくれましたが、実際に普及させるにはまだまだ数が足りません。完全養殖ができて、早くから安定的に量が確保できるブリで、夏のスタミナ丼市場を狙おうと考えました」と話します。

「この夏はブリ焼き肉丼をぜひ食べてほしい」と話す有路准教授=大阪市中央区
「この夏はブリ焼き肉丼をぜひ食べてほしい」と話す有路准教授=大阪市中央区

 かば焼きに代表される、いわゆる夏場の「こってり、スタミナ系」の魚丼市場は今のところウナギのほぼ独占状態ですが、そこに養殖ブリで参戦しようというのです。有路さんは「絶滅危機にあるウナギを代替魚で守ろうという狙いは、ナマズの時と全く同じ」といいます。

 有路さんによると、ここ15年ほどでウナギ類の資源減少したことによる潜在市場は、およそ12万トンもあるそうです。

ウナギ類の総供給量の推移
ウナギ類の総供給量の推移 出典: 近畿大学

「におわないブリ」開発

 有路さんは准教授のかたわら、養殖ブリを世界に輸出する企業の社長も務めています。和歌山県新宮市に設立した近大発の株式会社「食縁」では、近大が養殖したブリの種苗(稚魚)を全国の提携業者に育ててもらい、冷凍フィレ(切り身)に加工した上で世界に売り出すなどの取り組みをしています。

 ブリは冬場の1~2月に最も大きくなって脂がのる魚で、夏場には生魚の供給が滞ります。夏に消費してもらうには、鮮度の高い状態で冷凍保存することが必要でした。

 また、消費者にアンケートをとった結果、特有の青魚臭さが苦手という声が多かったことから、有路さんらは魚のエサをつくる飼料メーカーと共同で専用餌を開発。においの原因となっていた魚粉はなるべく減らして植物性油脂を使ったほか、ポリフェノール豊富な日本茶の粉を混ぜるなどして養殖することにしました。

 切り身として加工する際にも、表面にぬめりが出たり、酸化したりしないように特殊なフィルムで真空パックも施したそうです。こうして誕生した養殖ブリを「におわないブリ」と名付け、今年1月から全国出荷しています。

「におわない」をキャッチフレーズに初出荷されたブリ=1月25日、和歌山県新宮市佐野
「におわない」をキャッチフレーズに初出荷されたブリ=1月25日、和歌山県新宮市佐野 出典: 朝日新聞デジタル

試食してみた

 この「におわないブリ」で作った料理、記者も実際に試食させてもらいました。いただいたのは、大阪市中央区の割烹「艮(ごん)」でこの春から提供されることになった「ブリ焼き肉丼」と「ブリカツサンド」です。

 ブリ焼き肉丼は、焼き肉のタレに似た甘辛いタレでブリの切り身を焼いた丼で、こうばしい香りもカルビ焼き肉そっくり。口に運ぶと、ふわっとした食感で魚臭さを全く感じません。こってりしたタレの風味がますます食欲をそそります。

 有路さんによると、「見た目はガッツリ系でも、肉に比べて中性脂肪が少なくヘルシー。スタミナをつけたい夏場にはもってこい」だとか。そもそもこの味付けを思いついたのも、展示会で生のブリ切り身の試食を出しているうちに、有路さんが「焼き肉のタレで焼いたら、うまいんちゃう?」と試しに調理してみたことが発端だったそうです。

においはまるでカルビ丼。目をつぶって食べたら、ブリとは気づかないかも=大阪市中央区
においはまるでカルビ丼。目をつぶって食べたら、ブリとは気づかないかも=大阪市中央区
ブリカツサンド。ソースとマスタードの味付けで、見た目も味も魚っぽさがない=大阪市中央区
ブリカツサンド。ソースとマスタードの味付けで、見た目も味も魚っぽさがない=大阪市中央区

コンビニ・スーパーから、すでに打診

 ブリカツサンドの方はソースとマスタードがよく絡んでいて、これは何かの肉では?と錯覚してしまうほどのおいしさ。食感はササミっぽいというか、いわゆる魚っぽさがほとんどありません。

 かんだときに衣がはがれ、身のほぐれる感じはまさにブリなのですが、ふわっと柔らかい歯触り・舌触りがトンカツよりもイケるかも?と感じました。バーガーにしても合いそうな味で、欧米人にも受けそうです。

 有路さんは「出来ればワンコイン(500円)で食べられるようにして、この夏のうな丼に代わるスタミナ定番メニューにしたい」と話しています。

 すでに大手コンビニやスーパーなど数社が5月の連休明け以降の商品化に向け、動いているそうです。実現すれば今年の夏はうな丼ではなく、ブリ焼き肉丼をかきこんで乗り切れるかもしれません。

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