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グルメ

ウナギ味のナマズ、近大が研究「言われなければウナギ」商社も注目

美味しそうなウナギのかば焼き……。実はこれナマズです。近畿大学の研究者が養殖業者が、ナマズのエサを工夫したら、味も見た目もウナギそっくりに。

炭火で焼くナマズ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影
炭火で焼くナマズ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影 出典: 朝日新聞デジタル

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 脂こってりで肉厚、見るからに美味しそうなウナギのかば焼き……。いえ、実はこれナマズです。近畿大学の研究者が養殖業者と協力し、ナマズのエサを工夫したら、ウナギそっくりの味になりました。今月から鰻屋で試験販売が始まり、お客さんの評判は意外にも上々だそうです。すでに、国内の大手水産商社も「商品として扱いたい」と強い関心を示しているとか。絶滅が心配されているウナギに代わり、夏の主役になれるでしょうか!?

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かば焼きのウナギ(上)とナマズ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影
かば焼きのウナギ(上)とナマズ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影 出典:朝日新聞デジタル



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【動画】養殖ナマズのかば焼きは、匂いも見た目もウナギそっくりだった=西村悠輔撮影 出典: 朝日新聞デジタル

「言われなければウナギ」

 「言われなければウナギだと思うかもしれない」「あっさり目の味だけど、これはこれで美味しい」。ナマズを調理、販売する奈良県の料理店「うなぎの川はら」には、そんな感想が寄せられているそうです。1匹から2枚のかば焼きができ、値段はウナギの2970円にくらべて、半値近い1780円(ナマズ重は2千円)。県内2店舗で1日20食の限定販売をしています。同店社長の山岡章さん(66)は「身が大きく、皮が厚いのでさばくのは大変だが、薄く切って濃い目のタレにしたらうまくいった。お客さんにはおおむね好評です」と手応えを語ります。

昨年11月、研究室に届いたナマズを調理してみる有路昌彦准教授(左)と和田好平さん=奈良市中町の近大水産経済学研究室、西村悠輔撮影
昨年11月、研究室に届いたナマズを調理してみる有路昌彦准教授(左)と和田好平さん=奈良市中町の近大水産経済学研究室、西村悠輔撮影 出典: 朝日新聞

話題の近大「マグロの次はナマズか」

 「ウナギ味のナマズ」作りに挑んだのは、近畿大学水産経済学研究室(奈良市)准教授の有路昌彦さん(40)と、大学院1年の和田好平さん(22)です。試食のアンケートを集めている和田さんは「また食べたいという人が意外に多く、反応はめっちゃいいです」とびっくり。有路さんも「ナマズは泥臭いイメージで消費者の抵抗があると思いきや、そもそも食べたことがなく、先入観のない人がほとんど。予想以上に受け入れてもらえました」と喜んでいます。
 近大は水産資源の保護や活用に力を入れ、最近では絶滅のおそれがあるクロマグロの完全養殖に成功したことで有名です。その知名度もあってか、このニュース、ネット上でも大きな反響がありました。






ナマズ重を持つ近大大学院生の和田好平さん=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影
ナマズ重を持つ近大大学院生の和田好平さん=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影 出典: 朝日新聞
大隅半島から届いた養殖ナマズ=和田好平さん提供
大隅半島から届いた養殖ナマズ=和田好平さん提供 出典: 朝日新聞

 有路さんら研究チームは昨年から鹿児島県・大隅半島の業者「牧原養鰻」とタッグを組み、エサの配合などを試行錯誤してきました。数年前からナマズとウナギの両方を育てていた同社には、養殖のノウハウと整った設備がありました。協力した牧原博文社長(47)は「重さが1キロ近くなると脂乗りがよくなり、切り身の光沢が全然違う」と、変身ぶりに驚きます。

 ナマズは川や湖にすむ淡水魚で、生物学的にウナギとは異なります。ただ、ぬるっとした表皮や生息地、食べるものがよく似ていて、有路さんは以前から「ウナギの代替食になるのでは」と注目してきました。有路さんは6年前、琵琶湖北岸で捕れたナマズを食べて、思いをいっそう強くしました。「水のきれいな所で育ったナマズは、臭みが全くなくておいしい。泥臭いと言われるのは、生育環境の影響をうけやすいから。エサと水を管理して養殖すれば、ウナギ並みになるはず」。そんな仮説を立て、4年前の夏に本格的な研究を始めました。
 色々なナマズを全国から取り寄せ、脂の乗り具合など調理して調べた結果、「マナマズ」という品種が最もかば焼きに適していることがわかりました。皮を焼いた時に出る特有の香りが、ウナギと共通していると証明した先行論文も見つけました。

エサを海水魚用に変えたら、こってり味に

和田さんによるナマズの調理実験で脂がしみ込んだ「秘伝のタレ」
和田さんによるナマズの調理実験で脂がしみ込んだ「秘伝のタレ」

 味の決め手として、着目したのはエサです。有路さんによると、国内にはペレットと呼ばれる海水魚用の固形エサが数百種類と豊富にあり、それを転用することを思いつきました。通常、ナマズは淡水魚のエサで育てるため、淡白な味になるのが普通です。しかし油分を多く含む海水魚のエサに切り替えたところ、脂身がぐっと増えて、ウナギに近いこってり味に。昨年10月、初めてのサンプルをかば焼きに調理し、食べた有路さんらは顔を見合わせました。思わず出た感想は「ウナギや!」。いまはタンパク質の多いエサも混ぜ、ウナギに似た弾力が出るよう工夫を重ねています。

養殖ナマズは生食できる。あぶり、皮の湯引き、刺し身(上から順)と料理法も多彩だ。刺し身はプリプリしたタイのような食感。臭みはなく、まったりしたくちどけだった
養殖ナマズは生食できる。あぶり、皮の湯引き、刺し身(上から順)と料理法も多彩だ。刺し身はプリプリしたタイのような食感。臭みはなく、まったりしたくちどけだった 出典:朝日新聞デジタル

 「ウナギ味のナマズ」が普及した場合のメリットは多い、と有路さんは強調します。(1)ウナギでは実用化していない、卵から成魚という完全養殖に成功済み(2)養鰻業者の設備がそのまま使える。成長が早く、種苗単価が安いナマズだと養殖コストはウナギに比べ3分の1、市場価格は半額以下に(3)養殖ナマズは刺し身、湯引き、天ぷらと多彩に調理でき、ウナギには真似できないコース料理も可能……など。もしも将来、日本人が7割を消費しているとされるニホンウナギの稚魚が禁漁になったとしても、街の鰻屋や養鰻業者が救えるというわけです。

(今さら聞けない+)ウナギなぜ激減?乱獲や生息環境悪化が響く(2014年の記事)
(今さら聞けない+)ウナギなぜ激減?乱獲や生息環境悪化が響く(2014年の記事) 出典:朝日新聞デジタル

ウナギ危機の救世主!?大手水産商社も注目

 有路さんによれば、江戸時代に平賀源内が「土用の丑」の日を広めるまで、日本人はナマズをよく食べていたといいます。「これほどウナギが主流になったのは、まさに彼のマーケティング力ですが、いま絶滅危機に瀕している原因ともいえます。今後は稚魚を乱獲せず、ハレの日のみウナギを食べることにして、ふだんは養殖しやすいナマズを消費するのが一番いいのでは」と有路さんは訴えています。
 すでに研究室には、大手水産商社や料理店から「商品として扱ってみたい」という声が届いていて、養殖拡大への融資に関心を寄せている銀行も数社あるとか。鰻屋で食べるかば焼きにナマズが仲間入りする日は、そう遠くないかもしれません。

脂が乗った「ナマ重」。お値段はウナギの半値近くだ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影
脂が乗った「ナマ重」。お値段はウナギの半値近くだ=奈良県大和郡山市の「うなぎの川はら」、竹花徹朗撮影 出典: 朝日新聞

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