グルメ
塩を使わずしょっぱい? 舌をビリビリ、電気味覚フォークの実力
塩を全く使っていない料理なのに、塩味を感じることができる魔法のフォークが開発された―。そんな情報を聞き、試食会に参加してきました。
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塩を全く使っていない料理なのに、塩味を感じることができる魔法のフォークが開発された―。そんな情報を聞き、試食会に参加してきました。
塩を全く使っていない料理なのに、塩味を感じることができる魔法のフォークが開発された――。同僚記者からそんな話を聞き、メディア向けに開かれた試食会に参加しました。気になるフォークの正体は?使ってみると、新感覚の体験が待っていました。
都内の和食レストランで開かれた試食会。テーブルに置かれたのは一見何の変哲もないフォークです。しかしよく見ると、柄の部分に小さなボタンが。手に持つ部分もシルバーに加工されています。「これが『電気味覚』フォークです。舌に電気刺激を与えることで、塩味が感じられるようになります」。紹介をしてくれたのは、開発者である東京大の中村裕美研究員です。
電気味覚?舌に刺激?ちょっと怖そうな感じもしますが、とにかく実際に食べてみることに。用意された無塩のトンカツを、まずは何もせずフォークに刺して舌の上にのせます。当たり前ですが、トンカツの衣の味しかなく、塩っ気も感じられません。「そこで、ボタンを押してみてください」。中村さんからの合図で、おそるおそるボタンを押してみると……。
「おお!」。思わず声が出てしまうほどの、舌先にピリッとする感覚が。味もさっきまでのトンカツとは全く違います。ただ、塩っ気というよりは、金属っぽい感じが……。「冷たいスプーンを舌に押し当てたように感じる人もいるようです」。企画を監修している石井貴士医師(川崎市のいしい医院院長)の言葉に納得しました。
石井医師や中村さんによると、人が味を認識する舌の表面にある味蕾(みらい)という器官は個人差があるため、開発段階のテストでも「しょっぱい」「酸っぱい」「鉄っぽい」など様々な反応があったそうです。一緒に試食をした同僚記者は「苦みを含んだ塩味を確かに感じることができた」。石井医師は「刺激に慣れてくると、感じ方も変わってきます」と話します。
電気刺激を味覚として感じる「電気味覚」のメカニズムはいくつかの説があるそうですが、中村さんによると、電気によって舌の細胞や神経にアプローチし、塩味、酸味、苦みを感じさせているということです。舌の機能に関する研究をしていた中村さんが、「電気味覚が新たな調味料になるのでは」と思いつき、持って食べると回路が形成されるフォークを開発しました。流れる電気は微弱なため、人体への悪影響もないということです。
「無塩・減塩での食生活をしている高血圧の人でも、電気味覚ならば塩分を取らずに濃い味の食事を楽しめる。このフォークを使って、しっかりと味わえる食事を楽しめるようになってほしい」と話す中村さん。この日の試食会では、トンカツのほかにも、ガーリックライスやハンバーグ、ケーキなど、無塩料理のフルコースが紹介されました。「NO SALT RESTAURANT」と題したこのプロジェクトは、4月10日に一般向けの体験会を予定しています。
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