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「死ぬときぐらい好きにさせてよ」 樹木希林さん起用広告の背景は?
ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフにした宝島社の企業広告について聞きました。
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ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフにした宝島社の企業広告について聞きました。
「死ぬときぐらい好きにさせてよ」。そんな衝撃的なキャッチコピーの横には、仰向けになって水面に浮かんでいる樹木希林さん。何かといえば、ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフにした宝島社の企業広告の話です。今年1月に新聞掲載され、話題になりました。宝島社といえば、過去には「おじいちゃんにも、セックスを。」といった広告で世間を驚かせてきました。例年発表される企業広告や、今年の樹木さんの広告には、どんな思いが込められているのか? 担当者に聞きました。
シェークスピアの悲劇「ハムレット」に構想を得た「オフィーリア」。恋人ハムレットに父を殺されて、気がふれたオフィーリアが、川に落ち沈んでいく場面を描いたとされています。
「死について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけになれば」というメッセージが込められた今回の広告に対し、樹木さんはこうコメントしています。
企業広告で伝えたいメッセージとは? 宝島社の担当者に話を聞きました。
――今年の広告について教えて下さい
「日本の平均寿命は年々更新され、今や世界一。いかに長く生きるかばかり考え、いかに死ぬかという視点が抜け落ちていると感じ、今回のテーマとしました。いかに死ぬかは、いかに生きるかと同じこと。それなら個人の考え方や死生観がもっと尊重されていいのではないか、という視点から問いかけています」
――苦労した点や工夫した点は
「ビジュアル面では、絵画的な世界観を表現するため撮影のしかたを工夫しました。スタジオに、オフィーリアの絵画と同じ景色を作り、8×10(エイトバイテン)という大判のフィルムカメラを使って撮影しています」
「もともと『人は死ねば宇宙の塵芥(ちりあくた)。せめて美しく輝く“星”になりたい。』だったフレーズも、樹木さん自身と話し合いを重ね、最終的に『“塵”になりたい』に決まりました」(ここでいうフレーズとは『死ぬときぐらい好きにさせてよ』というキャッチコピーの下にある文面)
――構図は原画に忠実なように見えますが、違いは
「ミレイの絵の花にはすべて意味があるといわれています。今回の広告でも同じものを用意していますが、一部に現代的・日本的エッセンスを加えています。胸元の赤い花は、日本の象徴的な花・椿(つばき)です。1月の季節の花でもあり、花言葉の『気取らない美しさ』『慎み深い』。また、左上の青い鳥は、日本の水辺でもよく見る日本、三鳴鳥のひとつのオオルリになっています」
――今回の広告への反響を教えて下さい
「掲載当日から、1カ月以上たった今も、老若男女、多くの方々から反響が届いています。特に50~70代からの反響が大きく、『とても共感できた。もっと掘り下げた特集が見たい』『自分の生き方や終活について考えるきっかけとなった』と好意的な意見が寄せられています。SNSでは若い世代の間でインパクトあるビジュアルが話題となり、テレビや雑誌でも今回の広告をきっかけに、現代人の死生観を問う特集がいくつも組まれています」
――過去にもインパクトのある広告を発表されていますね
「宝島社の企業広告は、商品では伝えきれない“企業として社会に伝えたいメッセージ”を伝えたいという想いで毎回打ち出しています。テーマは毎回異なり、“世の中に一石を投じるようなテーマ”を掲げ続けてきました。見た人が少し足を止めて考えてみるきっかけや、人と意見交換をするきっかけになればと思います」
――今後については
「企業広告は1989年から行っていますが、田村隆一さんの『おじいちゃんにも、セックスを。』(1998年)、『国会議事堂は、解体。』(2002年)、『団塊は、資源です。』(2006年)、マッカーサー元帥の『いい国作ろう、何度でも。』(2011年)など、毎回みなさまに話題にしていただいています。今後も『人と社会を楽しく元気に』という企業理念のもと、宝島社が今、企業として伝えるべきことを企業広告を通してお伝えしていきたいと思います」
「全身にがんがあることを公表している樹木さんを起用した意味」や「オフィーリアをモチーフにした理由」といった点も質問しましたが、「宝島社の企業広告は読者にテーマを投げかけるという思いのもと企画・制作しているので、意図やテーマについては読者自身に考えてみてほしい」とのことでした。
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