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2016年02月22日

未亡人…?新橋「みぼうじんカレー」 脳内スパイスに汗、店名由来は

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新橋にある「みぼうじんカレー」。様々な妄想をかきたてる店の案内板

新橋にある「みぼうじんカレー」。様々な妄想をかきたてる店の案内板

 新橋にある不思議なカレー屋「みぼうじんカレー」。様々な妄想をかきたてるカレーには、未亡人のやさしさが詰まっていた。

「オヤジのディズニーランド」

 その女性(ひと)との出会いは偶然だった。

 オヤジの街、東京・新橋。無数の飲み屋、風俗、カプセルホテルまでそろうこの街を、私はひそかに「オヤジのディズニーランド」と呼んでいる。とすると、新橋駅前、SL広場の横にある白亜の殿堂「ニュー新橋ビル」はシンデレラ城と言ったところか。

 このオヤジの城がまた、濃いのだ。居酒屋、バー、マッサージ、精力剤の店、男性服店、ゲームセンター、雀荘……。朝から晩まで、オヤジの欲求を満たす店がそこここに並ぶ。

 このお城に私も時より通う。お目当ては2階にある釣具店だ。昼間っから、会社を抜け出したのか、営業の途中なのか、いつも釣りオヤジが群れている。

JR新橋駅前に立つ「ニュー新橋ビル」

JR新橋駅前に立つ「ニュー新橋ビル」

出典: 朝日新聞

黒い看板に「みぼうじんカレー」

 あるとき、なんのきなしにふだんは行かない3階に上がってみた。1階や2階と比べると営業中の店舗も少なく、ひっそりしている。

 そこで出会ったのがあの女性(ひと)なのだ。通路にある1メートルほどの黒い看板。「みぼ……カレー」。うん? みぼ……。目をこらしてよくみると、「みぼうじんカレー」とあるではないか。脳内で「みぼうじん」は瞬く間に「未亡人」に変換された。

 おいおい、なんだこの店は。「みぼうじん」って何だよ。時は午後3時すぎ。窓ガラス越しに店内をのぞくと、カウンターと少人数がけのテーブルが並ぶ。ちょっとした喫茶店風だ。キッチンでは店員らしき女性が洗い物をしていた。昼飯は済ませたということもあるが、「みぼうじん」があまりにもショックで、店に入るのがためらわれた。あまりのショックで、2階の釣具店に寄るのを忘れるところだった。

みぼうじんカレーの看板

みぼうじんカレーの看板

女性店員が2人「いらっしゃいませ」

 みぼうじん、ミボウジン、未亡人……。淫靡な響きがしばらく脳内を駆け巡った。普通に考えれば、「未亡人が作ったカレー」だ。とすれば、カレーもそうだが、作った未亡人に興味を持つではないか。

 10日ほどしてからだろうか。午後8時ごろ、未亡人を訪ねてみた。客はカウンターに一人。キッチンには黒いエプロンの女性店員が2人。「いらっしゃいませ」と迎えられる。

 テーブル席に座ると、卓上にメニューが……。野菜炒めカレー、ビーフ野菜炒めカレー、チキン野菜炒めカレー……。基本は野菜炒めカレーで、好みで肉などをトッピングするらしい。写真をみると、黄色いライス、黒っぽいカレーの間にタマネギやエノキをカレー粉で炒めたと思われる野菜炒めが盛られている。

野菜が盛られたカレー

野菜が盛られたカレー

後から辛み、味にメリハリ

ここは基本に忠実に普通の野菜炒めカレーを頼む。5分ほど待っただろうか。野菜炒めカレーが眼前に。カレーの香ばしいかおりが鼻をくすぐる。

 炒めた野菜を混ぜ込んで、カレーをたっぷりスプーンにのせて口に運ぶ。ルーはコクがあり、味も濃い。スパイシーなカレーを食べると、じーんと辛みが体にまとわってくる感じだ。後から辛みがくる。メリハリのある味で、スプーンが止まらない。

 ふと、テーブルのすみをみると、「みぼうじんカレー お持ち帰り頂けます」というプレートがあった。「未亡人 お持ち帰り頂けます」と読んでしまい、わけもなく興奮してしまう。スパイスで脳内革命が起きているのだろうか。

 自然と汗が流れる。すると、店員さんが寄ってきて、さっとコップに水を注いでくれる。

「お持ち帰り頂けます」の案内

「お持ち帰り頂けます」の案内

店員に「あなたも未亡人?」

 カウンターの客が店員と話を始めた。聞くともなく聞いていた。

すなわち、「未亡人」の由来は、この店の女性オーナーのお母さんが未亡人だから。

 野菜やスパイスを多用しているカレールーはお客の健康への気遣いでもあり、「未亡」ならぬ「未病」への願いであること。

 客のほとんどが男性。

 男性客の多くが店員に「あなたも未亡人?」と聞いてくるとのこと。しかも、若きアルバイト店員にまで……。

 そうか、オヤジの城にはぴったりのネーミングだな。「やられた」という感じだ。

「みぼうじんカレー」の店内

「みぼうじんカレー」の店内

癒やされて店を出る

 合間に食べるつけ合わせの自家製のタマネギピクルスが、血液をさらさらにしてくれるようで、なんだか未亡人の心づかいを感じるではないか。トッピングの野菜炒めも、ふだん酒やなんやらで傷めている体への癒やしという感じ。

 ふと、壁の黒板にめをやると、「健康長寿の知識」 クルクルミンの力(無敵のスパイス) 野菜を食べる(炒めて無理なく)などと白いチョークで書かれてあった。そして、赤いチョークで、「ひとりの体じゃないのよ」と走り書きも。「ひとりの体じゃない……」。えっ、えっ。えーっ。またもや、脳内革命が起きてしまった。「未亡人」に刺激され、十分癒やされた思いで店を出た。

メニューの黒板には、さりげなく「ひとりの体じゃないのよ」との言葉

メニューの黒板には、さりげなく「ひとりの体じゃないのよ」との言葉

 後日、職場に戻って吹聴すると、「オレも行きたい」という同僚が現れた。お店は午後10時まで営業しているので、地下の居酒屋で軽く飲んでから未亡人に会いに行った。酒を飲んだ後なので、ミニサイズがあるのがありがたい。地下で一杯、締めにカレーというのもいいかもね。

 会計のとき、少し酔っていた同僚が女性店員に「あなたも未亡人なんですか」と何十人、何百人目かの客と同じ質問をしていた。

 もっとも、職場で「みぼうじんは最高」「きのうのみぼうじんはよかった」などと話すきとは、小さい声にすることにしている。誤解した、鋭いまなざしが飛んでくるかもしれないので。

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出典:三才ブックス提供
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